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3−6.最弱ウサギさん、魔術について考察する

儀式と一通りのおふざけが終わって、後ろから恨み節が聞こえてくる。


「良いっすねぇ、力が貰えて」


不死種化してちょっと闇属性っぽくなったエリスである。


「ふふん、これがお姉様からの期待度うなぎのぼりのウチの評価よ?」


火に油、かまどにふいご。


コイツ等はとことん燃え上がる相性らしい。


「はっ!ちょっと上位者化したくらいで調子乗ってんじゃねーっす」


「嫉妬心がだだ漏れだぞ、駄犬」


「そっちこそ褒めてもらいたい欲が丸見えっすよ、狂犬」


まったく、すぐにヒートアップするんだから。


「そこまでにしなさいよね」


「お姉様ぁ…」


「カルシャ姉ぇ…」


批難の声をあげてもダメなものはダメよ。


「アンタたち、根本的には似た者同士なんだから、仲良くとまでは行かないにせよ、いがみ合いはやめなさいよ」


私の臣下である以上、仲間割れは許さないわよ?


「ちぇ、わかったっすよーだ」


「お姉様がそういうのなら…仕方ない」


さて、一応丸く収まったところで、二人には親睦を深めてもらおうかしらね。


「ということで、アンタたちは今から広場で組手してきなさい。怪我しないよう素手でやるのよ?」


体のいい厄介払い、人払いである。


「あ。エイリちゃんはゲッコウを置いていくように」


ゲッコウにも確認したい事があるしね。


後ろに控えていたグレインを呼びつける。


「グレイン。ツワブキとレイジを此処へ」


騒がしかっただろうし、もう近くにはいるだろ。


「御意」


「連れてきたらその後はバカ犬どもを見張ってて」


グレインは真面目なのでとても頼りになる。


さて、あとはこの場に残るコイツだが。


「ジラム。アンタは…そうね、もう少し此処にいてちょうだい」


「了解」


ここの説明も何もしていない以上、放置する訳にもいかない。


とりあえず魔術の話は理解できないだろうが、この場に居てもらうか。


「後で誰かにこの都市内を案内させるわ」


グレインかニーフェあたりに案内させてから、じっくりギフトについて聞かせて貰うことにしよう。


そこへ、ちょうどよくグレインが戻ってきた。


「カルシャ殿、ツワブキ殿とレイジ殿をお連れしました」


「ありがとう。それじゃ広場はお願いね」


グレインが踵を返す。


そうしてこの場に残るのはカルシャ、ツワブキ、レイジ、妖精姉妹、ゲッコウ、それからジラム。


今回に関しては、意見を聞くのはコイツらだけで良い。


「御前会議の前に、アンタたちに少し聞いておきたい事がある」


魔術とやらの事だ。


「今回、一神教の司祭はギフトじゃない力を使ってきたわ」


思い出すケラスの街での戦い。


巨大な石像を意のままに動かす特別司祭エスト。


「ギフトも大層な力ではあるけど、アレはそれ以上」


死んだはずの司祭は生き返っており、石像は強く、司祭との合体すらして見せた。


その力はギフトよりも上に見えるほど絶大だった。


「端的に言うけど、魔術について、知ってる事を話してくれる?」


まずは情報収集と整理が必要だ。


「まずはアンタたちからよ」


カルシャがまず指名するのは、妖精たち。


妖精女王ヴィヴィアンとモルガナである。


「魔術といっても、妖精が知っているのは一つだけよ、ウサギさん」

「さっきも見せた神託だけが、妖精に与えられた魔術よ、ウサギさん」


双子の答えは細切れで足りない。


カルシャは問いかけを重ねる。


「それは誰から、何の為に与えられたの?」


「前にも少し話したけれど、妖精女王は魔術師アデルカの使い魔だったのよ」

「アデルカは初代コルナ・ラケシスに種を蒔く事しか教えていないのよ」


具体的な事は、結局種を蒔く事しか解らないという事か。


「例えば、種を与える魔術はどうやって伝えて来たのよ?」


ならば切り口を変えてみよう。


どういう原理で魔術が成り立つのか解るなら、その応用と解析ができるはずだからだ。


妖精たちが世代交代の際にそのやり方を教えているのであれば、それがヒントになる。


「残念だけど、ウサギさんが考えているような伝達方法ではないわ」

「女王が死んだ瞬間、世界の決まり事が次の女王を選んで、直接魂に刻み込むの」


ダメか。


となると、妖精たちから知識を得るには、神託をつぶさに観察するしかないという事。


つまるところ、今の段階では、妖精たちから得られる情報はなさそうだ。


では次だ。


「じゃ、次はツワブキね」


次に何か知っているとすれば、一神教を探ってきたツワブキだ。


「小生も何か語りたい所ではござるが、あいにくと魔術に関しては妖精よりも疎いのが現実でござるよ」


こっちもだめか。


「ただ、話は逸れるが、不死種についてはそれなりに知識があるでござる」


あー、それはそれで聞きたいわね。


「じゃ、それを話してちょうだい」


「では、少しばかり。不死種は3種類居る、というのはご存知ですな?」


動く死体アンデッド、物思う死者イモータル、死を越えし者ヴァンパイア、ね。


エリスの改造の時に調べたから、よく知ってるわよ。


「カルシャ殿の知りたいのは、主にヴァンパイアの事でござろうから、そのあたりを話させてもらうでござる」


ツワブキの語るヴァンパイアは、次のような内容だった。


「かつて魔王が多く存命していた頃、不死種…とくにヴァンパイアもまた多く存在していた」


魔王となった者たちのいくらかは、定められた命の長さを覆すべく、または自己改造の結果として、不死種ヴァンパイアと化した。


方法はそれぞれで、恐らく魔術を会得していた者もいただろう。


そしてその多くは、一神教によって滅ぼされ今はなき者となった。


今となっては真相は闇の中だが、不死種の効率的な滅ぼし方は、今でも一神教に伝わっている。


「その方法とは、脳と心臓を聖別した物質で破壊する事、でござる」


一神教の秘匿資料によれば、魔力で動く不死種にも弱点があり、より魔力の溜まる部位である頭や心臓を破壊されると、全体の魔力量が不足し、再生できなくなるのだとか。


これはヴァンパイアに限った話ではないが、魔力循環の強度が高いヴァンパイアを滅ぼすには必須の方法らしい。


あくまでも聖別した物質ということだが、聖別とはなんなのか、どうすれば良いのかまでは資料にはなかった。


しかし、ツワブキの知る限り、不死種討伐に際して一神教の討伐隊は必ず聖別武器を使用しており、不死種はほとんど完全に討伐されてきた。


「まぁ、つまるところ、不死種でも死ぬ事はある、という事でござるな」


ふぅん。


覚えておこう。


最後にゲッコウに話を聞くか。


まぁ、望み薄だけどね。


「ゲッコウ。アンタは何か知ってる?」


魔王時代に何か見聞きしているといいのだけど。


「…儂の本体おったやろ?アレ、魔術による封印やで」


…望み薄どころか、大本命みたいな話が出てきた。




後書きウサギ小話

聖別されし・・・編



「今回、一神教の司祭はギフトじゃない力を使ってきたわ」


「ギフトも大層な力ではあるけど、アレはそれ以上」


「革袋に入った聖都貨幣の山・・・」


「あれは不死種特効のついたお金ハンマーだったのよ・・・」


「思い出すだけでも恐ろしい金の亡者だらけだったわ!」


成金オブザデッド!


完!


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