3−4.防腐済みようじょさん、正式に復活する
頬が冷たい。
目を覚ますと、僕は地面で寝ていた。
?
なんでこんなとこで寝てたんだっけ…。
あ、そうか。
僕は地虫に殺されたんだっけ。
じゃあ、ここは地獄かな。
そう思って目を開ける。
あれ、違うっぽい?
普通の土の地面だ。
霞んでいた視界が段々とクリアになる。
周囲の人だかり。
ウェアウルフたち。
目の前には、よく知った匂い。
!!
カルシャ、姉…!
その瞬間、意識が切り替わる。
顔を上げる。
そこには、求めて止まない主の姿。
カルシャ姉…!
知らず、口元が緩む。
ニヤケそうになる顔を引き締めて、上半身を起こす。
「カルーーーー」
「ーーーーアンタ、名前は?」
だから、その言葉はものすごく鋭い。
見知らぬ敵を見定める目つきで、カルシャ姉は僕を見ていた。
なんで。
息が止まりそう。
心臓が縮こまる。
なんで、そんな事言うっすか。
何も言えずにいると、カルシャ姉は詰問を繰り返す。
「ーーー良いから、名前を言いなさい」
あぁ、なんて冷たい声色。
視線を地面に落とす。
僕は一体何を見ているんすかね。
僕は死んで、やっぱり地獄にいるのかも。
期待して損したっす。
僕の名前は。
「ーーーエリス・レッサカルシャ」
想いに囚われたまま死んだ者。
だから、こんな地獄を見せられているのかも。
夢でもそんな目で見られるなんて、嫌っすよ、カルシャ姉。
あぁ、顔を上げられないっす。
もう一度。
もう一度、あんな冷たい目をされたら、僕は立ち直れない。
だから。
「…無事に、戻ってきたみたいね」
だから、そんな優しい声を出さないで下さいっす。
心は怖がっているのに、身体が勝手に動いちゃう。
あぁ、顔を、顔を上げないで。
冷たい目が、見えちゃう。
心が砕けちゃう。
ダメ、ダメっすよ。
これは地獄。
期待したら裏切られるっす。
あぁ。
でも。
抗えない。
ついに僕の目線は再び上がり、カルシャ姉の顔をしかと見た。
その、表情は。
*
「カルシャ姉ー!」
叫びと跳躍は同時だった。
問いかけに、名前を答えたエリスは、間違いなく本人。
なによりこの表情が本物でなければ、何が本物だというのか。
飛びついてくるエリスに対して、カルシャは両手を広げて応えた。
ひしっ!ゾワッ!
「ひゃっ!冷たっ!」
ぶべらっ!
そして一瞬でハグ終了。
冷血死体であるという事を忘れ、本能のままについつい投げ捨ててしまった。
痛くない筈なのに痛そうに頭をさすり起き上がるエリス。
「何するんすかもー!」
「ふっ、アンタが冷たいから悪いのよ?」
「当たり前のような責任転嫁?!」
売り言葉に買い言葉、縦板に水のようなやり取り。
「ちゃんと適温で抱きつきなさいよね」
「無茶言わないでっすー!」
お互いに自然と目が合い、心の声がまろびでる。
「「こ、このやり取り、超絶しっくりくる…!」」
あぁ、これよ、これ!
久々だけど、エリスとのこのバカらしいやり取り!
癪だけど、めちゃくちゃしっくりくるわ!
思わず目頭を押さえる。
その一瞬で、エイリちゃんがすっとカルシャの前に立った。
「起き抜けで随分やりたい放題だねぇ、…この駄犬」
「あぁん?カルシャ姉一番の下僕に向けてなぁに文句つけてんだぁ…新入りか?」
インテリヤクザ風狂犬vsチンピラヤンキー風駄犬の開幕である。
目線にバチバチ火花。
人が感動してる余韻を乱すなよ、バカ犬どもめ。
そんなカルシャの気持ちを他所に、新旧犬対決はヒートアップしていく。
「お姉様の一番の臣下と言いつつ、さっきまでおっ死んでたの、どこのどいつかなぁ?」
「新入りが舐めた口聞いてんじゃねぇぞ」
エリスが詰め寄りメンチを切る。
「…このクサレ死体が」
エイリの目がゴミを見る目だった。
「あぁ?殺るか?」
鉤爪シャキーン。
「そっちこそ、もう一回死体になる?」
釣られて抜刀シャキーン。
一触即発の雰囲気の睨み合いは、しかし一瞬だった。
「黙りなさい、騒がしい」
カルシャの高速打撃が両者の脳天を叩いたからである。
「ふぎゃっ」
「あべし」
それぞれ文句を言うが、カルシャには関係ない。
「か、カルシャ姉ー、何するんすかぁ…」
「痛いです、お姉様ぁ」
安定の魔王ムーヴで否応なく命令する。
「煩い、黙れ、跪け、頭を垂れろ、この駄犬狂犬が!」
結果的に、仁王立ちするカルシャの前に、エリスもエイリも正座する事となった。
ショボーン。
カルシャに怒られて本気ヘコミの二人だが、カルシャは気にせず話を進める。
「エリス。アンタは不死種ヴァンパイアとして覚醒した。身体の改造はこの通りよ。把握しなさい」
「わ、わかったっす…」
エリスには改造内容を纏めた書面。
身体の詳細くらいは自分で把握しなさいよね。
「で、身体の状態について、後から報告すること。良いわね?」
不死種については、それを以て情報把握する。
その点については正直判らない。
エリスの情報伝達には不安しかないけど、まぁ仕方ない。
閑話休題。
「アンタたち二人にはもっと強くなって貰わなきゃならないのよ」
この二人は、今後の主戦力になってもらわないといけない。
「私だけが強ければ良い時間は終わったの。アンタたちはその先駆けになって貰う」
一神教の司祭どもに対抗するには、私だけじゃダメだ。
魔王としても、魔王軍としても強くなければ、淘汰されてしまう。
「だからエイリ。アンタには新しい力をあげるわ」
そのための改造と妖精。
「新しい、力…」
エイリちゃんには種を与える。
「そう。上位者の力よ」
こういう真面目な話をしてるってのに。
「あ、足がビリビリするっすぅ」
コイツは…まったく。
正座で足が痺れたエリスがコテンと倒れる。
ったく…死体のくせに、足痺れさせてんじゃないわよ、もう!
後書きウサギ小話
初心者向け?編
「だからエイリ。アンタには新しい力をあげるわ」
「新しい、力…」
「そうよ。新しい力を得るには、この妖精さんのギフトガチャを回すの。今回は特別に私が対価を払っておいたわ!」
「ソシャゲのチュートリアルガチャ!?」
ガチャガチャ・・・
キラーン!
デデン!
SR《上位者》
「やっぱり才能あるわね、エイリちゃん!いきなりSRとかチートだわ!」
「チュートにありがちなプレイヤーに才能ある設定!」
初期の高レアほどゴミクズ説!
完!




