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3−3.悪夢の魔王さま、下僕に教育的指導を与える

一進一退の攻防。


その終わりは、一つのギフトから。


「《獄炎牙(ブレイズファング)》」


燃え上がる黒い炎。


魔王系列にはない上位者ギフトだ。


厄災系列に違いない。


エリスの拳を包み込むそれは、まるで犬の頭のようだった。


「やっぱギフト使うかぁ…。しかも新しいギフトじゃないの」


不死種化の段階で言えば、アンデッドの可能性は消えた。


これで少なくとも自然消滅することは無い訳だ。


あとは生前とは別人格のイモータルなのか、生前と連続した自我をもつヴァンパイアなのか。


前者であればこれはエリスではなく、後者ならば暴走していると言える。


…願わくば、後者であってほしい。


カルシャがそんな事を考えている間にもギフトの炎は燃え上がる。


両手に災厄の炎を湛え、その姿はまるでケルベロスのよう。


たじろぐエイリちゃんに追随するようにゲッコウが焦りを零す。


「あれはヤバいでぇ…上位者の炎はエイリちゃんじゃ受けられへん…!」


!?


そりゃそうだけど、アンタ、今それ呟いたら!


その瞬間、上位者エリスの身体は正しくゲッコウの言葉を理解して、両手の炎を放つ。


放物線を描く対の厄火に、エイリちゃんの顔が強張る。


ゲッコウ!このポンコツが!


ゴメンやで、お嬢ちゃん!


豪、と掠める神威の炎。


すんでのところでその牙を躱す。


だが、魔犬を模した炎は一度躱したくらいで獲物を見逃すほど甘くは無かった。


即座に反転、再追尾。


「ホンマモンのケルベロスよりたち悪いでぇ?!」


クソが!


容赦ないなぁ、もう!


一手で状況は悪転。


状況は火輪くぐりが最も近い。


2頭の魔犬に追われ、エイリちゃんはすでに回避しかできていない。


「熱っ!アチチっ!いやん、制服焼けちゃうぅー!」


泣き言だらけのエイリちゃんだが、エイリちゃんだからこそ回避出来ているだけで、雑兵じゃこうは行かなかった。


グリムソルガで同じ事ができるのはツワブキ、レイジ、グレインくらいだろう。


もう少し。


もう少しで魔眼の視界阻害が消えそうなのだが。


そこまで耐えてくれれば、私がなんとかするのに。


だが、カルシャの希望的観測は即座に打ち破られる。


「《獄炎牙(ブレイズファング)》」


二度目の獄炎が灯される。


ギフトの炎を操る事に慣れ、ついにエリス本体とともに動き始めたのだ。


鉤爪に炎を纏ったまま、エリスが構える。


こうなると、エイリちゃんはもう崩れる他無い。


完全回復じゃないが、ここが潮時か…!?


旗持ちから御旗のみを受け取る。


「エイリ、退きなさい!」


叫ぶと同時に炎を切り裂く。


飛び込むと、槍の穂先が炎の熱を奪いながら無効化、魔犬の頭の一つがあっさりとかき消えた。


「ごめんなさい、お姉様…止められなかった」


「アンタはよくやってくれたわ、エイリ。…下がりなさい」


視界の端は暗い。


だが、戦うほかない。


…手間、かけさせてんじゃ無いわよ。


「一気に片付けてやるから覚悟しなさいよね」


もう一つ飛来する魔犬をかき消すと、カルシャは一気に距離を詰める。


漆黒が相手取るは炎纏う影。


槍と鉤爪が交錯し、火花が散る。


骨由来の筈なのに妙に金属音に近い音なのは、骨格強化による骨の金属化のせいだろう。


そのくせ、骨の構成は高強度で軽量化されている。


速い。


凄まじく速い。


なるほど、これではエイリちゃんが負ける筈だ。


なんせ事前に改造内容を把握しているカルシャですら圧される。


だが、死を感じる程の脅威ではない。


聖女の方が強かったぞ、この駄犬!


薙ぎ払う。


一瞬の隙と、エリスの魔眼の煌めき。


「いい加減、目を覚ませ!」


再び視界が闇に包まれる最中、カルシャの拳骨がエリスの脳天を強かに打ちつける。


「この駄犬がぁっ!」


振り抜いた拳。


叩きつけられるエリスの身体。


その光景はカルシャの瞳には映らず、しかし、カルシャはエリスの害意が霧散した事を感じる。


これで暴走が止まると良いのだけれど。


カルシャは暗闇に染まる視界の中で、そんな風に考えていた。




後書きウサギ小話

インテリジェンス、編



「なあ、お嬢ちゃん」


「なによ、ポンコツ」


「儂以外に喋るアイテムって居るんかな?」


「さぁ?どっかにはいるんじゃない?」


「会えるとエエなぁ。苦労話とかしてみたいわぁ」


「アンタと合う奴なら良いわねぇ…」


賢さを消して余る鬱陶しさ!


完!

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