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2−37.悪夢の魔王さま、陰気司祭と戦う

「ーーー嗚呼、嘆かわしい」


陰気な司祭は、その冷めた瞳でカルシャを見やる。


「神の作り給うたこの世界で、このような魔王の種が発芽するとは」


かつてライナ共々焼き尽くし、コイツは死んだはずだった。


しかし、ツワブキがその死を疑うだけあって、どうやら簡単には死なない奴らしい。


「…アンタも只者じゃなさそうね」


ここで少しでもそのカラクリが判るといいのだけれど。


そんな思いで呟くと、陰気な司祭は口元だけを歪めた。


「この身は神の与えた奇跡の産物なれば」


それで笑ったつもり?


コッチの事をなんとも思っていないのが丸わかりだぞ。


「なるほど、どうでも良い訳ね」


会話じゃ埒が明かない。


これなら仕掛けた方が有益そうだ。


そうとなれば、即決即断。


おニューの武装、沸騰の魔眼を開く。


意志とともに視たものを沸騰させるこの魔眼は、人間のように水分の多いものには効果てきめんである。


距離と範囲で減衰するが、この位置関係なら局所的に沸騰させるのに時間はほとんどいらない。


視線を浴びる毎に定量の熱を与えて、沸騰するまで約5秒。


「ボゴガ」


一瞬の沈黙を経て、エストの首から上が沸騰する。


気化した血液、体液が肉を膨らませ、逃げ場を求めて爆発する。


「うぉっ…えぐ……」


「お姉様、やるぅ♪」


飛び散る肉片、沸騰した血液、流れる赤い涙。


ジラムは顔をしかめ、エイリはテンションをあげる。


だが、やはりと言うか何というか、一筋縄ではいかないようだ。


「ーーーよく見なさい。死んでないわよ」


爆発した肉が蠢く。


沸騰によって脳髄も変質したはずだが、エストの手が動き、己の喉を押さえる。


しばし空気が抜けるような音がしていたが、それも数秒、すぐに人語をカタコトながら取り戻して嘲う。


「ショウシ!コノテイドデ、カミノキセキヲ、コワセルモノカ!」


未だ寝たままのエリスよりも余程不死者のよう。


急速な再生によって、今もまさに復元を続けている。


沸騰の魔眼が連続使用できたら良かったのだが、再使用するまでには少し時間がいる。


「ソウヘイ!」


それに伏兵もわらわら居たらしい。


給仕用の扉を勢いよく開けて、武装した僧兵たちが雪崩込んでくる。


「おいでなすったわね」


予想通りではあるが、数が多い。


「そうこなくっちゃ♡」


まぁ、エイリとビーストたちの敵にはならなさそうではあるが。


「全員、露払いしろ」


当初の予定とは違うが、この特別司祭を狩るのもまた一案。


どちらにせよ、簡単には逃してもくれないだろうし。


露払いを命じるや否や、カルシャはテーブルを跳び超える。


「了解っ♪」


エイリたちの動く気配を背中に感じながら、カルシャは槍の穂先をエストに向けた。


だが、伏兵は雑兵だけではなかった。

「お前の相手は私ではない」


僧兵の後ろの方から飛び出した何者かが、カルシャの跳び突きを打ち払ったのだ。


バランスを崩したが、床を転がり、後ろに飛び退く。


周囲の僧兵に追撃されぬように槍を一回転、槍の切っ先に肉の感触を感じながら、カルシャは乱入者を見やる。


直感としては、新しい聖女か勇者。


また面倒くさそうな奴が来たな。


出し惜しみせずにギフトを開けば良かったかも。


「新しいお人形様ね?…アンタ、名前は?」


軽く問いかけると、ソイツは嫌そうな顔をした。


「魔物に名乗る名前なんて無い」



何を吹き込まれて、どこまで知らされているのか。


少なくとも、ライナやツワブキのように、支配のためのギフトを仕込まれているのは間違いないだろう。


「ふぅん?生意気ね!」


傀儡勇者のくせに。


良いわ、どうせ消し炭になるんだもの。


「ーーーー我が名は悪夢と征服の魔王、アーデカルシャ・グリムレクス!新米勇者になど狩られるものかよ!」


名乗りをあげるとともに、槍を両手に持ち直す。


テーブルに飛び乗って少し距離を取ると、ギフト開放とともに槍を突き出した。


「《煌氷牙(プリズムライナー)》!」


斬撃を氷結、射出する魔王の力。


突き出した槍の一撃を顕すは、巨大な氷晶。


人程もある塊は、音もなく急発進した。


本来、鋭い欠片を多数ばらまくのを一つに纏めたので、普通は避けられて終わりだ。


しかし、カルシャには他のギフトがある。


「《業火の射手(ブラストアーチ)》!」


一点突破。


氷晶に向けられた焔が、氷を一気に気化させる。


熱波の爆発が、勇者たちを襲った。


御旗で熱波を防いだカルシャが次に捉えた景色は、凄まじい威力を物語るものだった。


「ーーー《女神の御手(ウォール・アイギス)》」


が、勇者と司祭を殺すには不足していたらしい。


家具を、壁を破壊し、外壁を一部食い破った爆発。


多数の僧兵の茹で上がったばらばら死体。


その中心で、ギフトによる防御を今まさに解きはらう勇者の姿。


あれはライナも使っていたギフトのはずだが、どうやら防ぎきったらしい。


「へぇ?下位ギフトで防げるんだ?」


そのカラクリは、ゲッコウが遠目で見て見破っていた。


「嬢ちゃん!ソイツやない!インチキ神父や!」


目線をやれば、エストが手を勇者に向けていた。


「仕込みはソッチな訳ね」


ギフトか魔術かは知らないが、上位者ギフトを遮れるだけの力があるという事か。


なら、狙うべきはやはり司祭の方だ。


そう思った時、勇者がエストを守るように立ちふさがる。


「お前の相手は私だ!」


構わず槍を横薙ぎに振るうと、剣身を縦に受け止めてくる。


ガッツがあるのは良いことだが、こういう時にはただただ邪魔だ。


「邪魔くさいわね!《砕ける神剣(ブレイドブレイク)》!」


接触した瞬間にギフトを開ける。


カルシャが倒した悪魔によって獲得したギフトは、相手の装備を壊すギフトである。


「!?」


槍を受けた剣が砕ける。


それだけでなく、ギフトの効果によって、勇者の腕の皮膚が盛大に裂けた。


「あぁっ!」


壊したモノの存在の重さに比例したダメージを与えたのだ。


今回壊したのは大量生産の鉄製。


大したダメージではないが、防御を崩してぶっ飛ばすには十分だった。


「失せろ!」


ぶん回した槍をそのまま叩きつけ、勇者を吹き飛ばす。


死体の中に突っ込んで血塗れになった。


いいザマだ。


エストを見やると、この状況でも感情は見えない。


不気味なやつめ。


ちょうど僧兵も狩り終わった。


カルシャの背後にエイリとビースト、ビクつくジラムが並ぶ。


「あとはアンタだけよ?どうする?降参する?」


後書きウサギ小話

クラスに一人はいるよね、編



「新しいお人形様ね?…アンタ、名前は?」


軽く問いかけると、ソイツは嫌そうな顔をした。


「魔物に名乗る名前なんて無い、……と言いたいところですが、ここで問題です!」


「は?」


「私の名前は次のうちどれでしょう?1ヒヨリ、2ライナ、3エスト。制限時間は5秒です!どうぞ!」


面倒くさい絡み方の奴!


完!

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