2−30.悪夢の魔王さま、臣下を増やす
「さて、要らない奴は死んだわ」
捕獲した転生者のうち3人は鍛えようがある奴らで、残り1人は性根から使えない奴だった。
端的に言うと、カルシャの結論はそういう事だった。
「私はこの尖鉄都市グリム・ソルガの主にして、悪夢と征服の魔王アーデカルシャ・グリムレクス。覚えにくければカルシャ・グリムでも良いわ」
力と恐怖。
転生者相手ならばこれで良い。
従うなら教育し、そうでなければ奪う。
「アンタたちは心も力も合格よ。この私に忠誠を誓うか、あの男のように奪われて死ぬか、特別に選ばせてあげる」
ハズレの男を放り出し、ギフトの暴発音を聞き終えてから、カルシャは跪く3人に対して、そう選択肢を提示した。
ここで頷かないなら敵にもなろう。
雑草は摘み取り、作物は育てる。
そういうものでしょう?
「先ずはアンタ。名乗りを上げて、答えを聞かせなさい?」
先ずは肉厚な眼鏡君から。
「僕の名前は相楽リョウ。カルシャ様に忠誠を誓います」
コイツは端から拒否されるとは思っていない。
脅かされない限り牙を向かないタイプだと感じており、戦って確信を得ている。
コイツは庇護を与えてやれば問題無い。
「次はアンタよ」
図体がでかい割に小回りの聞く大男。
「俺は薬師寺リンドウと言う。……忠誠は誓わないが、アンタには仕えよう」
コイツは少し面倒だ。
恐怖には屈しない。
多分、心が強いから。
「度胸あるのね。死にたいの?」
「アンタが俺にとっての悪なら反逆するさ。殺すなら殺しておけ」
自分の信念が一番、というタイプらしい。
近いうちに反逆するかも知れない。
「殺すには惜しい力がある。お互い上手くやりましょう?」
が、力でねじ伏せられるので、どっちでも同じだ。
ならば従って貰っていた方が駒が増えて良い。
「好きにしろ」
レイジなら上手く使うだろ。
ダメならその時切ればいい。
「最後はアンタよ」
今回の大当たり。
「剣崎エイリ。ウチは魔王様の剣になるわ」
「……本心は?」
「暴れたい」
根っからの戦狂いだ。
戦った時の眼を見て、直感的に理解した。
コイツ、ホントに異世界人なの?!と驚いたくらい。
「叶えてあげるわ、その望み」
「お姉様、愛してる♡」
…戦闘民族かよ!
コイツはある意味、聖女ライナよりも面倒臭い。
なんせ全くコントロールが効かないだろうから。
だから極力餌を与えて飼いならす。
属性的には、ちょっとエリスに似てるかも。
まぁ、あっちが駄犬なのに対して、こっちは狂犬だが。
何はともあれ、無事に臣下になってくれた。
「聞いたわね、グレイン、レイジ」
「もちろん」
「然と」
私は直接この駒を使わない。
転生者は転生者に付ける。
「新人3人はレイジの配下とする。教育しなさい」
生活面と装備はグレインに任せる。
「グレインはニーフェと協力して、新人の住居と装備を整えるように」
これで問題ない。
あとは、アレの処遇だ。
エイリに渡したあの剣。
戦いの最中煩かったなー。
業物、神剣、しゃべくる妖刀。
「それと、鎖薙剣ゲッコウ・レプリカは今後エイリが使えるように訓練してちょうだい」
えーい、エイリに預けちゃえ♡
「良いのかい?」
「ホコリ被らせるよりマシよ」
働かざる者食うべからず、とは異世界の言葉。
アイツは食わないが、錆びさせておくのは勿体無い。
使える奴がいるなら使わせる方が良いに決まってる。
さて、これで転生者の処遇は解決。
「これでアンタたちは魔王の下僕。しっかり働いてもらうから、そのつもりでいなさい?」
魔王様の魔王業が段々板についてきた今日この頃。
その成長ぶりに気付いていないのは、当のカルシャ本人だけであった。
*
で、今度は改造だ。
「じゃ、今から改造するわね」
ウェアウルフ3人がめいめいに頷く。
ツワブキの人選によって、復讐心めらめらの3人が選ばれており、気合は十分だった。
「一応先に伝えておくけど、アンタたちに混ぜるのは主に水竜と鉄。二度と元の身体には戻れなくなるからね」
解ってはいたが、今更尻込みする者など居なかった。
そのまま改造は執り行われ、丸一日かかって無事に完了。
出来上がったのは凄まじい獣であった。
ウェアウルフのシルエットは二倍に膨れ上がり、頭には二本角、背中には毒棘。
体表は青黒い竜鱗と硬化した毛皮に覆われ、手足の爪は堅く鋭く、鰓と肺を併せ持ち、遠吠えは振撃で吐息は高圧水流。
尻尾は竜尾で剣の如き大棘が備わっていた。
多分、コイツ1人でウェアウルフ10人は軽く相手取る事ができる。
自分でやっておいてビビるレベルだ。
うむ。
レイジの助言により、コイツらは混沌獣、ケイオスビーストと名付けよう。
後書きウサギ小話
ウサギさんだけが知っている・・・編
「えっJK?!マジで?!」
「あ、待って、この娘ちょっとヤバない?」
「あぁん、そないな振り方されたら、儂ダメになるぅ」
「うぇっぷ、ちょっと吐きそう」
「あばばばばば」
誰にも聞こえないやつ!
完!




