2−26.復讐の聖女さま、目覚める
暗中。
ライナが目を覚ました時、あたりは一面暗闇で、何も知覚出来なかった。
どこだっけ、ここ。
ぼんやりした思考。
まるで疲れの抜けない朝みたいだ。
身じろぎすると、ギギと金属が軋んだ。
?
なんだ、縛られてるのか?
金属音ってことは鎖か何かだろうか。
そもそもなんで、私はこんな所に居るんだっけ。
あぁ、そうだ。
思い出してきた。
ウサギだ。
レソルガ樹海であのウサギ…カルシャ・グリムを見つけて、戦って、負けたんだ。
それから…多分、鉄砲水に流された。
ちょっとあやふやだが、多分そうだ。
記憶の最後に残っているのは、迫る濁流。
ここが天国や地獄や新たな異世界でもないとすれば、生きてる自分の悪運には驚く。
寒い…。
だんだん目が慣れてきた。
水の滲み出る石壁と鉄格子。
土を固めた床。
天井も石造りで、私はどうやら吊るされているらしい。
「ーーー《装備殺し》」
ギフトで鎖を破壊する。
…つもりだったのだが。
「なんで?壊れない…」
感覚的には、ギフトが開かないというより、ギフトが効いてない。
この鎖、ギフトに抵抗するのか?
或いは、上位者ギフトによって作られてる?
……どちらにせよ、今の私が脱出する手段はないという事だ。
こんな聖女もどきを捕まえて何をしようというのか。
陵辱?
いいんじゃない?
敗者にはちょうどいい罰だろ。
どうせなら痛く酷く扱ってくれた方が燃える。
復讐は火種が多いほうが良い。
ま、無事に自由になれたら、の話だけど。
そんな取り留めもない事を考えていると、真っ暗だった牢獄に僅かな光が差す。
?
視線を向けてみると、鉄格子の向こう、階段を降りてくるランタンの光らしい。
ランタンの持ち主は深くフードを被っている。
性別は解らない。
鉄格子を開けて、中に入り、ランタンを台に置くと、自らも椅子に腰掛けた。
「気分はどうだ?」
…ボイスチェンジャーにかけたみたいな声だな。
「最高にくそったれな気分だよ」
死にかけたと思ったら吊るされてんだから、気分良い訳ねーだろ。
「まぁ、それはそうだろうな」
フードの男(?)は頷く。
何がしたいんだ。
仕方ない、こっちから聞くか。
「おい、テメェは誰だ。私をどうする気だ」
吊るしといて何もしない事は無いだろ。
そう問いかけると、ソイツはフードを脱いだ。
「どうもこうもない。私の事を忘れたか?」
銀髪に蒼の瞳をした中性的な顔。
顔に見覚えは無いが、フードを取った後の声には聞き覚えがあった。
「思い出したようだな」
センテの遺跡でウサギに敗れた後、聞こえた幻聴と同じ声だ。
あの時、コイツが何らかの手段で私に語りかけ、上位者の種をくれた訳だ。
だが、コイツの正体はいまだ不明。
行動理由も不明なままだ。
「種をくれたのは感謝してる。けど、名前も理由も聞いてねぇぞ」
少なくとも私を殺したり害したりするためでは無さそうだが。
「理由。そうだな…魔王の駆逐、かな」
言って、銀髪は壁についていたレバーを切り替える。
ジャラジャラと音を立てて鎖が伸び、私の足が地面に触れた。
「はっ!勇者やめた奴に魔王を討てってか!」
鎖が解けて自由になる。
「別に無理強いはしない」
銀髪は肩をすくめた。
「ただ、一神教を害するのは止めて欲しいがね」
復讐者に復讐を止めろとはいい度胸だ。
「あぁ?」
だが、上がりかけた私の手は、次のコイツの言葉で止められた。
「私の名前を教えてやろう」
それは予想もしていなかった名前だった。
「私はアトロポス。一神教で神、と呼ばれる存在だ」
一神教の神。
ただの偶像ではなかったらしい。
後書きウサギ小話
自堕落・・・?編
ライナが目を覚ました時、あたりは一面暗闇で、何も知覚出来なかった。
どこだっけ、ここ。
ぼんやりした思考。
まるで疲れの抜けない朝みたいだ。
身じろぎすると、ギギと金属が軋んだ。
…ま、いっか。
二度寝しよ、二度寝。
どこでも熟睡できるやつ!
完!




