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2−25.最弱ウサギさん、話し合う

「…ってことで、異形の継承とエリスの改造は無事に終わったわ」


御前会議にて、カルシャは現在のエリスの状態について皆に話した。


「少なくともエリスの不死種化は成功。但し、不死種として安定するまであの子が目覚める事はないわ」


改造は滞りなく完了。


不死種としての魔力循環が始まり、組織の再生が始まった。


血液代わりの魔力が定着し、組織の再生が終わった頃にようやく目覚める。


本来、不死種は棺の奥底で長年かけて発生するため、こんな風に短期間で生まれる方がイレギュラーなのだ。


「まだ心が戻るって決まった訳じゃないし、そこまで成功していたとしても覚醒した時に暴走する事もある」


イレギュラーだから、いつ覚醒するかは解らない。


起こすこともできずに、ただ待つしか出来ない。


「だからエリスは妖精糸で拘束して、棺は御所に置いておく。私が居ない時に暴走したら、妖精たちが対応して捕縛する」


それでも戻ってくると信じて、カルシャは準備した。


「異論はある?」


それに異論を唱える者は居ない。


しばしの沈黙を経て報告は受け入れられ、話題を変えるためにレイジが口を開く。


「さておき、カルシャさんはこれでさらに強くなった訳だね」


「種の素質が活きたのは幸運でござるな」


異形は自己を失う事になると言われて避けた種だが、結果を見るに強力だった事は間違いない。


「デメリットが無い代わりに、ギフト一つだけだけどね」


「しかしギフト自体は破格。良いことではありませんか」


「ま、戦力強化を考えるならそうね」


逆に一つだけとは言え、やはり上位者ギフトは強力。


異形は他者を強化できる時点で、かなり有利だ。


強さがギフトや種族という変化し辛いもので決するこの世界で、努力や装備で覆せない部分の個の力を後から弄くれるのは、正直度を超えていると言える。


エネルギーと素材、姿形というコストを差し引いても、効果が大きすぎる。


「魔王ゲッコウに倣って臣下の強化をすれば、一気に少数精鋭の軍になる」


やりようによっては、ゲッコウのように人の世の壊滅も夢では無い。


とはいえ、ゲッコウのようにやるのも簡単ではないのも確か。


「言うほど簡単じゃないわよ?材料は自前なんだから」


当然強くなる改造には、強くなるための素材が必要だ。


強いモンスター、硬い金属、希少な鉱石。


それを準備するのにどれ程時間と労力が必要か。


それにエネルギーというコストがある以上、頑張り過ぎては餓死してしまうため、改造自体にも時間が必要なのだ。


「そうは言っても考えはあるのでござろう?」


もちろん、考えていない訳ではない。


言ってはなんだが、試作するための目星はある。


「レソルカルト湖の水竜あたりが手頃かなとは思ってる」


そう。


カルシャが釣り上げて、ツワブキがナマスにしたアイツだ。


適度に強力だが、それなりに数もいて、捕えるのもそこまで苦労しない奴。


試しにやるならちょうど良い塩梅だと思う。


「あの水竜なら素材としては申し分ないかと」


グレインも冷静に賛同してくれる。


あとは被験体だけど。


……。


ふと、思う。


「…グレイン。率直に聞くけど、改造されたい臣下、いると思う?」


問題は被験体だ。


カルシャも忌避した自己改造。


素直に受け入れてくれる奴がどれほど居るのか。


いくら主君のためでも、普通イヤじゃない?

そんなカルシャの不安は、杞憂だった。


「もちろん。居ますとも。なんなら私が率先して名乗り出たいくらいです」


グレインの確信をもった答えに、カルシャは苦笑いをこぼす。


「…アンタたちの忠誠心は、自分の身体以上なのね」


カルシャよりよっぽど肝が据わっている。


「ウェアウルフとはそういうモノです。それはカルシャ様が一番良くご存知でしょう?」


勇猛果敢、少し自堕落、それから恩義を忘れない。


「…まあね」


少々感傷的になっているみたいだ。


情けない問い掛けだったな。


切り替える。


「希望者を募りますか?」


「…とりあえず戦闘班1班、3人を改造する。選抜はツワブキ担当で」


「御意」


一気にたくさんは無理だ。


まずは出来る範囲を掴まなければ。


それと、改造して身体が大きくなるから家が狭くなるし、素材を捕らえておく場所がいる。


「改造に伴って、素材を捕らえておく牢獄が必要になる。

それと、改造を受けた臣下の家もね」


ちょうど家を作っている途中なので、そこに追加か変更を加えれば良いだろう。


「ニーフェは追加の牢獄と住居の計画をしてちょうだい」


「承知致しました」


ニーフェならそれなりの計画を立ててくれるはずだ。


「で、本題だけど」


「エリス殿を殺めた黒幕、でござるな」


問題は、エリスに関する原因究明。


全て怒りに任せて燃やしてしまったが、どうせ目星は一個しかない。


「どうせ一神教でしょ?」


「恐らくは」


「ツワブキ。アンタは選抜し終えたら証拠を集めなさい」


「御意」


しかしまぁ面倒な奴らに目を付けられたものである。


「思い当たる節はある?」


「節は無いが方法なら。狂信者が洗脳されて放たれたか、異端者が処理を施されて放たれたか。いずれにせよドラゴンに空輸でもされたんでござろう」


ツワブキ曰く、一神教には暗殺者はいないらしい。


いるのは狂信的な者や秘密を知った者、異端者。


つまり不要な者たちだ。


それらに寄生虫のたまご等を産み付け、洗脳処理したうえで、ドラゴン空輸からのフリーフォール。


落とされた者は墜落死するか食い荒らされて死ぬ。


基本的には人の居ない場所に落とすが、刺客代わりに放ったりもするらしい。


「この都市の存在はバレてるのかしら?」


此処がバレてるのであれば、また同じ手段で爆撃されそうだが。


「樹海の樹々に対して此処はまだ小さい。鷹の目のドラゴンライダーでも流石に気付かぬでござるよ」


ツワブキが言うには、処刑配達人(ドラゴンギフター)なる専属のドラゴンライダーがいるそうだが、流石に見つかる規模では無いという。


と言うことはつまり。


「じゃ、此処に辿り着いたのは、たまたまって事?」


「可能性は高いでござるな」


フリーフォールから生還したのがこの近くだったと。


だけど、つまりそれって。

「そんなの、エリスが無駄死にじゃない」


流れ弾に当たったようなもの。


それでは余りにも不憫ではないか。


だが、ツワブキはドライだった。


「物事など大概が偶然の産物でござるよ。それに、聖女を倒したカルシャ殿が狙われているであろう事実は変わらないでござる」 


確かにいずれ狙われて同じ事が起きたかも知れないが。


「…ま、司祭も殺してるしね」


とはいえ言っても仕方ない事ではある。


カルシャの押し殺したような言葉に、ツワブキは同情を見せなかった。


別の事が気になっているらしい。


「カルシャ殿。その殺した司祭の事なのでござるが、エスト・フラメという名前でしたな?」


名前とか覚えてないし。


「え?確かそうだったと思うけど…」


だって死体も残らず消し炭よ?


名前なんて忘れるでしょ。


そんな感じで忘却かましていたカルシャに対して、レイジはその辺よく覚えていた。


「確かにその名前で合ってるよ」


「よく覚えてるわね…」


秒で忘却するわ、あんな陰気司祭。


「割と有名人だからね」


よくよく聞くと、一神教の中では有名人らしい。


「レイジ殿の言うとおり、奴は司祭の中でも高位で、勇者お付きで現場にでる珍しい司祭なのでござる」


ふーん。


「でも焼き尽くした筈よ?」


灰すら吹き飛んでる筈だけど。


それでもツワブキが言及すると言う事は。


「奴はまだ生きている」


…やっぱり生きているらしい。


「一神教の司祭には、小生と同じ様に不老不死の者がいるでござる。奴はその一人」


「…焼き尽くしたのに死なない訳?」


まあ、そういう事なんだろうな。


「昔、復讐心から司祭を殺して回った事がある。奴らの首はすこぶる軽く、死んでも次が控えていたが、何人かだけは入れ替わる事なく、今でも現役で司祭を続けているでござる」


そのエストとやらを含めて、ずっと生き続けている奴らがいる訳だ。


「…不死種?」


「そうかもしれないし、全く別の手段やも知れぬ」


例えば、魔王や妖精に伝わる魔術とやらが、一神教に無いという確証はない。


「めんどくさいわね…」


だが、今は見つかっていない。


それならやる事は変わらない。


「…どちらにせよ、今は準備期間よ。一神教を潰すにしたって、準備はまだまだ足りてない。話はそれからよ」



後書きウサギ小話

物静かな妖精さん 編



「今日も退屈だったわね、ヴィヴィアン」

「ねむねむだわ、モルガナ」


「ところで最近出番が無いわね、ヴィヴィアン…」

「このままだと存在感なくなってしまうわね、モルガナ…」


「ま、いっか。私たち可愛いし」

「そうね、可憐だものね」


着実に進むマスコット化!


完!

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