2−23.悪夢の魔王さま、異形の種を喰らう
竜魔王ゲッコウ。
かつて妖精から異形の種を受け取り、様々な臣下を用いて世界を恐怖に陥れたその魔王は、元々転生者だった。
今も世界に跋扈するモンスターには、その名残も多数存在する。
例えば革命ギフトの取得条件にもある“紅蓮に霞む魔犬”の一種、地獄の番犬ケルベロス。
あれもかつてはこの世界に存在しなかったモンスターで、魔王が作り出したものが野生化した種族らしい。
なんせ古い記録。
正確なところは不明だ。
恐らくは、カルシャが手に入れようとしているギフトを使ったのだろう。
それまで動物とモンスターの境目は曖昧だったが、ゲッコウの功績により動物よりも遥かに強いモンスターたちが生まれた。
その事からも判る通り、ゲッコウが凄まじい魔王である事は間違いない。
少なくとも世界が人のモノではないと証明したのだから。
殺した人間は当時の人口の半分。
滅ぼした街は数知れず。
凶悪なモンスターを数多く世に放った。
そんな凶悪な魔王が強くない訳がなく、彼自身もまた、自らのギフトで異形の姿となっていた。
八俣大蛇という竜がモチーフらしい。
八つの頭と尾を持ち、雨を司り、生贄を喰らう悪竜。
異形化のデメリットである亡心を、転生者らしく奇抜な発想で回避し、強さだけを教授したのだ。
だが、人間というものは恐ろしいモノで、そんな状態からも勇者を生み出し、魔王を倒さんとした。
一神教が後押しし、民衆に鼓舞され、時の勇者はついにゲッコウを封印するに至った。
これが魔王ゲッコウに関するお話。
鎖薙剣皇、ゲッコウ・レプリカから聞いた身の上話である。
なんだ、ただの壮大な自慢話か。
*
御所に上位者の歌が響く。
「我が力、我が知識、我が加護をこの者へ与えよ。これは祝福である。さぁ讃えよ、夢魔王の隆盛を」
神剣は詠う。
高揚と万能感、わずかに虚無感。
力に酔い、力に溺れそうな、まるでセイレーンの呼び声。
神剣は識魔王ウォロクと同じ様に詠唱し、もてる力と知識をカルシャに移植する。
かつては魔王同士、死に際して力を託すのが一般的だったのかもしれない。
「汝、悪夢の魔王の名、夢魔王を以て世界を侵食するが良い」
祝辞の言葉で締めくくる。
異形の力が流れ込む。
それに伴ってゲッコウの知識も部分的に共有され、お目当てのギフトも獲得できた。
《異形》の欠片と、異形系列第6位《改造の王笏》だ。
このギフトを使えば、自身の身体や同意を得た上位者を肉体改造する事ができる。上位者でない者に至っては同意すら必要ない。
使い方によっては拷問にも使えるようなエグいギフトだ。
なんせ、四肢をもいでも死なないし、醜悪な見た目にも出来る。
なんなら仇の姿にしてやったり、その者が嫌悪する姿に変えても良いのだ。
基本的な使い方も高性能なのに、副次的にも使えるなんて。
やはり上位者ギフトは破格…。
ましてや死者にも使えるんだから、文句など欠片もない。
「ーーー《改造の王笏》」
試しに自分の腕に鱗を生やしてみる。
お試しなのでほんの少しだ。
すぐさま効果は発揮され、カルシャの腕に数枚、白い鱗が生えてくる。
指で弾くと金属のようだが、一体何で出来てるんだ、これ?
「見たところ竜鱗ぽいけど…」
「儂の鱗そっくりやから、多分それで合ってるやろうな」
どうやら本当に竜の鱗らしい。
だとすれば、これだけでミスリル鎧と同じくらいの防御力があると言う事になる。
大枚叩いて用意した一式はなんだったんだ、コノヤロー。
「…なんだかお手軽すぎやしない?」
これで本当にタダなの?
怪しくない?
案の定、タダじゃなかった。
「軽い変化ならな」
ゲッコウが笑う。
「どういう事よ?」
「余りにも大きな変化を与えると、副作用で戻りにくぅなる」
聞いてみると、お高いどころか、場合によっては代償だらけだった。
「詳しく教えなさいよ」
「改造は基本的に不可逆なんやけど、生物構造が変わらない程度の改造なら変身能力として改造する事ができるんや」
例えばその鱗なら、変身の範疇やな。
鱗やら棘、羽毛、毛皮などの変化でシルエットが変わらないなら変身範囲内、骨格が変わるもののウェアウルフのような獣化レベルもギリギリ範囲内で、人からの竜に改造するような場合が範囲外なのだそう。
また、変身範囲内でも変身後の特徴が残ったりするし、変身範囲外でも改造竜が獣くらいまで戻る事も可能だったりする。
その辺は個人差もあり、一概には言えない。
ゲッコウがかつて臣下ともども試行錯誤した結果、わかった事らしい。
そんな話を聞いていると、ゲッコウから受け取った知識が浮かび上がり、なんとなく理解した。
……。
まだ人だったゲッコウが強くなれるやん!とテンション上げて一気に自己改造した結果、リザードマン状から戻れなくなった事もついでに理解した。
魔王になった経緯は、まさかのギフト自爆でモンスター化してしまったからだったようだ。
うん。
…バカなの?
「バカちゃいまんねん、アホでんねん!」
「…どっちでも良いわよ、そんな事」
アンタ、ホントに最強の魔王なの?
物凄く疑問なんだけど。
「と、ともかくこれで儂の力がアンタに移った。儂はただの喋る刀になった訳やな」
じぃー(ジト目)
言えないっ!ケモミミっ娘大量生産してハーレムしたかっただけやなんて言えないっ!
……。
はっ!
心の声がダダ漏れてるぅ!
「よし!廃棄!」
この変態魔王めっ!
即刻スクラップだコノヤロー、寒気がするわ!
あぁん、いけずぅ!
心が繋がる仲やん、わ・し・ら♡
「心に直接語りかけるんじゃないわよ!気持ち悪い!」
なんちゅうジジイだ!
「ゲッコウ」
名前聞いてる訳じゃねえ!
そういうボケは要らないっての!
ったく…。
「…不本意だけど、ちゃんと床の間に飾ってあげるわ。床の間ないけど」
とりあえず妖精たちの住居に飾るか。
構わず喋られても困るし。
「…ま、喋る相手がいるだけ封印時よりはマシやな」
「アンタと喋れるの私かツワブキだけだけどね」
上位者しか届かないみたいだからね、アンタの言葉。
「多分妖精たちも喋れるはずやけどな」
「そうなの?」
「どの種も妖精由来やからな」
確かに、言われてみれば妖精から種もらうものね。
試してみるか。
「ニーフェ、双子を呼んできて」
控えていたニーフェに命じる。
「承知致しました」
あれ?
そいえば、ニーフェには聞こえてないから、私が一人騒いで頭おかしくなったように見えてたんじゃね?
傍から見たら魔王さまご乱心案件じゃない、これ?
自分、頭おかしくないと思ってたん?
「うっさいわね!おかしくなんてないっつーの!」
あぁ、また見た目独り言を言ってしまった!
あぁっ!?
ニーフェの奴、目をそむけやがった!
なんかハメられてる気がする!
後書きウサギ小話
お手軽?お得?誰得?編
「見たところ竜鱗ぽいけど…」
「儂の鱗そっくりやから、多分それで合ってるやろうな」
「…なんだかお手軽すぎやしない?」
「今ならなんと!角と尻尾もセットでお付けしちゃいます!」
「えぇ!お得ゥ!でもお高いんでしょう?」
「いえいえ、そんな事はないんです!本体価格1000Sのところ、今ならなんと!800S!」
※メーカー小売希望価格です
「まぁお安い!」
「さらに今ご注文なら、鱗のお手入れセットがついちゃうんです!」
深夜の魔王ショッピング!
完!




