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6.最弱ウサギさん、防具を新調する

「奴隷とは、下僕とは一体…うごごごご」


「はい、動かないで下さいねー」


ようじょはこうそくされてしまってうごけない!


いつも適当だらだらのエリスも今は慣れない作業でガチガチである。


「アンタよく動くんだから、ちゃんと採寸してもらいなさいよね」


晴れて首輪つき飼いウェアウルフとなったエリスは、カルシャに連れられて防具鍛冶の店に来ていたのだ。


ギフト持ちの鍛冶士に商人、革職人が合同経営するこの店はセンテの街では一番腕が良く、この店の防具はここいらでの最強装備と言える。


「カル…ルシャ姉、なんで僕に防具を?」


言い間違えそうになるのをなんとか我慢して、エリスはカルシャに問う。


「はぁ?アンタが私を守るための盾だからよ?説明したでしょ?」


下僕改め奴隷と化したエリスには、主の言葉を否定するなとの命が与えられている。


「ぅ、言われました(言われてない)」


「いい?アンタはモンスター“とか”から私を守るために買われたの」


なんと言うか、奴隷証を渡されたあたりから、カルシャがいつも以上に厳しい。


なんかイライラしている。


アレか?


アレの日か?


いや、ウサギは万年なんとやらのはず。


エリスが採寸されながら失礼な事を考えていると、作業していた鍛冶屋が奥から出てきてカルシャに声をかける。


「ルシャさん、そろそろ仕上がるので、試着して貰えます?」


「はいはい」


カルシャが鎧を身に着けていく。


革鎧をベースにして、各所にプレートをあしらったものだ。


「ルシャ姉、どうしたんすか、そんな豪華な鎧!」


そして、エリスが言うとおり豪華で、プレートの素材はミスリル銀だ。


「どうしたも何も、新調したに決まってるじゃない」


「いや、それにしても奮発し過ぎじゃないっすか?」


ミスリル銀は軽くて丈夫で熱や腐食にも強い。その代わり、鉄の何倍も高価だ。


大枚をはたいてまで買う意味は、これに尽きる。


「命より大切なものなんて、ある?」





「で、鎧の真意は何なんすか?」


武器鍛冶への移動の道すがら、エリスは実際のところを聞いてみた。


「人間でいる時も防御力上げときたいじゃない?」


本当に生存率を上げるのが主目的らしい。


「それだけ?相変わらず慎重っすねぇ、カルシャ姉は」


この悪夢さんはどれだけ強くなろうと、きっと最弱ウサギのままなのだろう。


強くてビビリとか、ちょっと可愛い。


「何時でも変身出来るとは限らないし、不意打ちされたらどうすんのよ」


カルシャのこういう部分は、エリスは嫌いではなかった。


「まぁ確かに見た目はか弱くて儚げな美少女コンビっすからね」


そもそも恩義の他に気に入る部分がなければ、いくら強くてもついていけない。


そんな事を考えていると。


「自分で言う?アンタはせいぜい顔だけはまぁまぁ可愛いガキ程度だと思うけど?」


カルシャはそう言って、エリスの胸を指差して嘲った。


「どうせつるぺた幼女ですよーだ!」


前言撤回。


悪夢の狩人は意地悪だった。


閑話休題。


「そいえば、ルシャ姉は変身する姿がいつも違いますよね?」


「あぁ、この姿?いつもはギフトを奪った相手の中から気に入った姿に化けてるのよ」


カルシャの人間姿は、変身する毎に違う。


大概が美少女である。


その辺の趣味は良い方だろう。


だが、この街では時折顔見知りらしき人に声をかけられている。


「この街ではいつもソレなんです?」


白い肌に紅い瞳、シルバーブロンドのボブ。


背が高くなくて、弓を引くには邪魔になる程度の胸。


控えめに言って可愛い新米傭兵といった風情。


「此処は初めて人間に化けて歩いた街だからね」


オリジナルは本当に新米だったのかも知れない。


「思い入れがあるんすね」


「単に多少顔が効くだけよ。ここの通行証もあるしね」


珍しく写真付き通行証だから、変身も合わせる必要があるのか。


いかにも事も無げに言うので、オリジナルにはこれっぽっちも興味は残っていないらしい。


ウサギにはまだまだ沢山の謎が隠されているようだった。


そんな事を喋っていると、唐突にカルシャの顔が苦くなる。


「…あと、顔を知られてる衛兵もいるわね」


どうやら厄介事らしい。


エリスがカルシャの目線を追うと、街の護衛として雇われているであろう傭兵がこちらに向かって手を振っていた。





「また会ったね」


「こっちは会いたくなかったけど」


レイジである。


今日は休暇なのだろう。


買い物した後らしき袋を持っていた。


パンの匂いがする。


「その子が連れ?」


「私の奴隷よ」


奴隷という言葉に少し驚いたようだ。


「奴隷…ウェアウルフか」


レイジはエリスの耳を見て呟く。


「美味しそうって?」


性的な意味で。


カルシャが意地悪くニヤっとすると、レイジは即座に否定した。


「幼女趣味はないよ。それに僕には、君の方が魅力的に見える」


カウンターパンチは、カルシャには効かなかった。


「歯が浮きそうなセリフね」


「割と本気だけど」


いつでも口説きモードなのには困ったものだ。


それまでの流れをばっさり切って捨て、カルシャはこんな事を言った。


「それより、遺跡に潜るのに腕の立つ傭兵探してるんだけど」



後書きウサギ小話

二人は・・・編



この悪夢さんはどれだけ強くなろうと、きっと最弱ウサギのままなのだろう。


強くてビビリとか、ちょっと可愛い。


「何時でも変身出来るとは限らないし、不意打ちされたらどうすんのよ」


カルシャのこういう部分は、エリスは嫌いではなかった。


「まぁ確かに見た目はか弱くて儚げな美少女コンビっすからね」


「見つけたぞ!プ○キュア!」


「エリス!変身よ!」


「ルシャ姉!行くっすよ!」


「二人は!」


「プリ○ュア!」


日曜朝八時のノリ!


完!

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