2−13.頭弱い系ようじょさん、あー!ってなる
「と言うことで、鎖薙剣皇を狩りに行くわ!」
しばらく経ったとある朝の幹部会における、魔王さまの布告である。
「また唐突だね」
レイジを含めた幹部たちには唐突な話だったっすね。
なんせこの時点ではツワブキしか経緯を知らないんすから。
けど、些細な事は無視するくらいにカルシャ姉の心炎は煌々と燃えていたっぽくて。
「魔王たるもの、常に強さと軍拡を進めるべし!」
「急に熱血魔王?!」
拳を握って軍拡を力説するカルシャ姉。
あ、暑苦しいだとぅ?!
「い、いつものカルシャ姉じゃない?!」
僕が思わず動揺する程に、普段クールぶっているカルシャ姉がキャラ崩壊していた。
「もっとだ!もっと熱くなれよ!まだ強くなれるだろ?」
「修造的温暖化現象!」
レイジのツッコミもほろろ、カルシャ姉は思い切り立ち上がると深呼吸。
ウサギ体操、第1ー。
槍を大ーきく掲げて熱血、熱い魂の運動!
「ウィーキャンフライ!もっともっと!」
「修造じゃなくてヒロノブの方だった!!」
熱血違い。
最高にジャムっていたっす。
まるで周囲の温度がぐっと上がったみたいな熱気がカルシャ姉から発せられる。
プシュー!
まるで蒸気機関みたいな排気音、もとい鼻息。
熱気冷めやらず、鼻息荒々しいまま着席するカルシャ姉に対して、レイジが改めて問いかけ。
「異世界ジョークはさておき、どうしてまた?」
「いや、そもそもギフト集めは趣味だし」
ネタは終わりっぽい。
通常運転に戻ったカルシャ姉は平然とそう答えた。
「趣味っすかぁ…。それにしては命張りすぎじゃないっすか?」
「まぁ、相手が強いのは間違いないわね」
趣味にしては、危険を冒しすぎなんじゃないっすかねぇ?
聖女はともかくとして、ジャバウォックの時もかなりやばかった。
あ、ひょっとして聖女のせいでバトルジャンキー化が進んだんすかね?
僕と同じ結論なのかは知らないけど、レイジも同じような事を思ったらしい。
「いのちをだいじに、がモットーなカルシャさんにしては珍しいね」
暗にカルシャ姉の行動理由を問いかけるレイジ。
それに対して、カルシャ姉は指を4本立てた。
「魔王が3つ、革命が1つ」
炎射に氷斬、風杭に夢幻。
どれもが必殺級の威力や効果をもたらす大いなる力。
「上位者ギフトの数だね」
カルシャ姉が持つ切り札である。
持たざるものからすれば最凶のカードであり、上位者からしても危険な刃だ。
同じく種を持つ僕は、まだ一つも持っていない。
それに比べれば、既に4つも持っていると言える。
うん、贅沢。
ちょっと欲張り過ぎじゃないっすかねぇ?
でも、カルシャ姉はそれじゃ満足していなかったっぽい。
「少なくない?」
端的に、少ない。
そう感じているらしい。
「まぁ、下位ギフトに比べたら少ないけど」
そもそもギフトが2桁持てて勇者になれるご時世で、軽く100を超えるギフトを持つカルシャ姉はイレギュラーっす。
上位者ギフトにしたって、種を手に入れてからの期間を考えればかなりのハイスピード取得。
はっきり速度制限超過っすよ、カルシャ姉。
我等がウサギの魔王さまはそれを踏まえた上で、さらに欲しいと言っているみたい。
「圧倒的に少ないのよ!」
机ドン!
おめめキリリッ!
瞳の奥には炎がメラメラしている…気がするっす。
カルシャ姉はこれで説得のつもりなんだろうか。
「まぁ、数ある方が良いには良いんだろうけど…」
レイジも言葉を濁すほど微妙な感じだった。
敢えて言おう、我儘である、と。
いや、実際には口にしないっすけど。
ボコされるのはやだし。
一同、簡単に言わないでよ、といった雰囲気になり、カルシャ姉は机においた手をそっと引っ込める。
「必要だから増やす。それだけよ」
あ、ちょっとしょぼんとした。
仕方ないなぁ、フォローするっすよ。
「心配しなくても、こないだの聖女みたいなのなんてポンポン現れないっすよぅ」
そう思って安易に口を開いたのが悪かった。
「本当にそう思う?」
「え」
ズズイと距離を詰められる。
「じゃ、例えばアンタの前で私が死にそうになったとして、アンタはギフトの少なさを嘆かない?上位者ギフト取っとけば良かったー!って後悔しない?」
早口にまくしたてるカルシャ姉。
「う…そ、それは後悔するっす」
た、確かに困る状況…。
ギフトは、必要?
「そういう事よ」
言い切るカルシャ姉。
見つめる瞳の炎が僕の瞳にも反射する。
同じ姿でまるで鏡合わせみたいだった。
おめめぐるぐる。
「僕も上位者ギフト、取りたくなってきたっす…」
僕も、カルシャ姉を助けるためのギフト取らなきゃ?いけないかも?
あれ、なんだっけ、この会話の流れ。
混乱してきたぞ?
「でしょう?」
くっ、憐れむ視線をやめるっす!
「丸め込まれたでござるな」
「丸め込まれたね」
「丸め込まれましたね」
あー!
頭弱い子って言わないでっすー!
「ってことで、ツワブキ調べによる鎖薙剣皇の居場所なんだけどね?」
あー!ってなる僕をほっぽって、カルシャ姉は皆と獲物の話をし始めた。
なんてしどい魔王さまなの!
後書きウサギ小話
ウサギ体操の歌 編
新しい朝が来た
開拓の朝だ
喜びを胸に抱き、ウサギ讃えろ
御旗の元に栄光捧げよう
この場所が始まりの地だ
それイチ、ニ、サン
グレイン)←熱唱
レイジ)作ったは良いけど違和感しかない(;・∀・)
替え歌、ダメ、ゼッタイ!
完!




