2−10.最弱ウサギさん、ひと狩り行く事にする
「ひと狩り行こーぜ!」
いきなりコマーシャルくさかった。
狩友とG級へ!
樹海に踊る赤き残光!
極光に佇む崩壊の白き巨影!
古城に飛来する黒き災禍の翼!
「…それなんて狩りゲ?」
他の面々が疑問符を浮かべる中、レイジだけが何かを理解できたらしい。
しかし言い出したカルシャも何を言っているのかさっぱりだ。
異世界の誰かからちょっとした侵食を受けたのかもしれない可能性も否定できなくはない。
「狩りゲって何?」
「いや、気にしないで良いよ。異世界の話だから」
うん、知らない。
平気で数百時間が消える中毒性のあるゲームとか、ウサギさんはちっとも知らない。
壊れるピッケル、亜空間タックル、羽虫の女王さま…、うっ、頭が…。
けど。
「今なら天鱗が出る!気がする!」
狙いは聖女の天鱗!
こうやって考えとくだけでソイツは出てこないんでしょ?
「何故か知ってる?!」
物欲センサーとやらは有能よね。
異世界のお祈り(?)も済ませたところで、気を取り直して。
「じゃ、狩猟に行くわよ!」
アルカイックスマイル全開である。
「まさかの黙殺!」
レイジの言葉も聞かないくらい今は身体を動かしたい。
「無性に!血が!滾っているんだ!」
ムフー!
「ウサギさんの台詞じゃないっすね」
「この所頭脳労働ばかりでしたからなぁ、流石に心労も溜まるでござるよ」
御前会議とか堅苦しいでござる!
本来自由気ままな獣なんだから、これくらい許せ!
「ってことで、誰か一緒に行かない?」
カルシャの言葉にグレインが参加を表明する。
「では私がお供致します」
ランスに双剣。
あとはガンナーがほしいところね(違
そんな事を考えていると、珍しく妖精たちが手を上げる。
「たまには外に出たいわね、モルガナ」
「妖精さんの力の見せ場だわ、ヴィヴィアン」
いつもは暇そうに置き物になっているのが一転、今日はとてもアグレッシブだ。
「アンタたちが外に出たがるなんて珍しいわね?」
シャドーなんかしちゃって変なものでも食べたのかしら?
「たまには飛ばないとね、モルガナ?」
「作業見てるのも退屈よね、ヴィヴィアン?」
「よーするに飽きたんすね…」
エリスが言うように、単に立ちんぼに飽きたらしい。
まぁ彼女らの戦いを見られるのは貴重な機会ではある。
せっかくなら見せてもらおうじゃない。
「じゃあ何いく?キークエ?それとも緊急?大連続でも良いわよ?」
「そのネタまだひきずるの!?」
*
御所を出て中央広場を突っ切り大門へ。
その途中、奴隷とオオカミの子供たちが戯れているのに遭遇した。
子供たちはカルシャに気付くと駆け寄ってくる。
「あ、魔王さま!お出かけ?」
「そうよ。ちょっと森に狩りにいくのよ」
どうやら見送りしてくれるらしい。
カルシャを囲むようにわらわら。
アイコンタクトで静止しますか?と聞いてくるグレインに対して、首を横に振り、カルシャは近くにいた子供の頭をクシャクシャと撫でた。
「ウサギさんなのに狩りするんだ!」
エリスの性格と広報のおかげか、カルシャの評判はとても良い。
子供たちなどはこうして気さくに話しかけてくる程だ。
「魔王はなんでも食べるのよ」
カルシャも邪険にしないで答えるからか、子供たちに囲まれるのは慣れてきた。
「好き嫌いすると大っきくなれないから?」
好感度は積み重ねが大事だ。
臣下である以上、信頼されるに越したことはない。
「戦いでもなんでも、身体が丈夫な方が生き残る可能性が高いのよ」
だからカルシャはいつも真面目に受け答えをしていた。
「魔王さまなのに死ぬの怖いの?」
「魔王でなくても死にたくなんて無いでしょ?」
基本方針は相変わらずだ。
死なない事。
生き残る事。
それでいて楽しければなお良し。
そんな話をしていたら、人間の子供がこんな事を言う。
「魔王さまってもっと怖いと思ってた」
人間からすれば、魔王は悪の最たるものか。
それは怖がるのが当然だろう。
一神教の植え付けたイメージもあるだろうしね。
それにここの人間はレイジとツワブキ以外は奴隷なのだ。
カルシャが死ねと命じれば死ななければならない。
そんな状況では怖いものにも映ろう。
だけど、カルシャの態度は変わらない。
「私はウサギさんよ?これでも怖がりなんだから」
誰にでも自然体。
臣下ならば身内、過度に飾る必要などなく、ありのままを見せればいい。
「強い人でも怖いんだ?」
「当たり前じゃない」
怖くないとすれば、ソイツは既に敵がいないほど強いか、狂っているかどちらかだ。
カルシャはニヤッとした。
「我儘言ってると、こわーい聖女が悪い子を食べに来るのよ?」
ガオー!
冗談で脅かすと、子供たちはキャッキャと喜んで飛び跳ねる。
「聖女こわーい!」
「食べられちゃうー!」
今は冗談。
いずれは現実。
だから準備が必要なのだ。
「でも魔王がここにいる以上、アンタたちはいずれ聖女とか勇者に襲われるのよ?」
「えー!ヤダー!」
ブーブー言ってられるうちに準備しなさいよね?
「私は死にたくないから頑張るの。アンタたちも死にたくないなら頑張りなさい?」
子供たちは解っていないだろうが、カルシャは準備を進める。
死なないため、臣下を失わないため、対策する。
そのための都市、そのための臣下だ。
後悔先に立たず。
大事なのは事前の段取り、準備なのである。
後書きウサギ小話
いつから錯覚していた?編
「そいえばモンスター由来の武器とか防具って見かけないわよね」
「加工が難しいんじゃない?」
「ウサギさんは知らないのね、モルガナ」
「日常系ギフトにも種はあるのよね、ヴィヴィアン?」
「なん…です、って?」
「いつから戦闘系ギフトにだけ種があると思っていたのかしらね、モルガナ?」
「笑止!笑止だわ、ヴィヴィアン!」
唐突な悪役ムーブ!
完!




