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2−8.魔王の都市さん、産声をあげる

午後。


観客の集まる集落の中央広場にて、カルシャは槍を構えて立つ。


「いつでもかかって来なさいよ」


「強くなった僕を見せてやるっす!」


対峙するはエリス。


カルシャがエリスの姿を模倣しているため、傍目には同じ姿のウェアウルフが同じ武器をもっているように見える。


ツワブキ直伝の棒術派生。


ミスリルの槍と結晶の槍。


先手。


一足飛びに距離を詰めるのはエリスだった。


材質、性質は違えど同じ師を持つ二人の穂先は、即座に交錯する。


突き、払い、弾き、流し、叩きつけに体術。


ツワブキという基本形を持ちながらも、カルシャとエリスの体捌きは殆ど別物だ。


エリスの動きは全体的に大きく、カルシャは細かい。


扱うギフトの違いだ。


エリスは獣化する事で能力を上げて戦うのに対して、カルシャは純粋に人型。力ずくでは限界があるため、端から技量重視でカウンター型なのだ。


薙ぎ払いを主軸に突きを織り交ぜるエリスに対して、カルシャは最小限の動きで躱し、または跳ね上げて反らす。


隙が生まれるまで粘って突きをだし、旗を拡げて視界を奪うカルシャ。


エリスが野生の勘で飛び退くと、そこを目掛けて蹴りが飛ぶ。


下手な連撃には行かない。


結果、カルシャにはエリスが付け入る隙が無い。


力量差は歴然だった。


数合を経て、エリスは呆気なく追い詰められ、試合が終わる。


「確かに強くなったわ。でも、まだ足りないわね」


「これでも足元にも及ばないとか、正直凹むっす」


尻もちついたエリスに手を伸ばすと、エリスは手を取って立ち上がる。


「ギフト併用したらかなり良いとこまで来てると思うわ」


「そうっすかねぇ?これだけ完敗すると自信ないっす」


そこにツワブキが近付いてくる。


「いやはや、二人共強くなってるでござるなぁ。師として誇らしいでござるよ」


手放しの称賛だった。


だったのだが。


「「胡散臭」」


まずそのニヘラ笑いを止めろ。


もうなんか全てがモヤモヤだぞ、そこの隠密。


「酷いでござるなぁ、褒めてるのに」


「全く傷付いてない風なのが胡散臭いって言ってんのよ」


まぁいいわ。


エリスの鍛錬具合も確認できたし。


私もサボってないで鍛錬しとかなきゃな。


で、戦闘部隊の方の報告を聞かせてもらおうか。


「ツワブキ、戦闘部隊について報告してくれる?」


「御意」


今の戦闘部隊は3人1組が5つ。


ウェアウルフ3体のチームならば、強大なモンスター相手でもなんとか戦える。少なくとも瞬殺は無い。


それくらいのポテンシャルで組んで、ツワブキが主に狩猟と訓練で鍛えている所だ。


「同じ部族と言う事で、連携は問題ないでござるな」


そこまでは想定内。


問題はどれくらい強いかという点だ。


「連携していない人間10人、転生者で5人くらいなら対応出来そうな強さでござる。身近な例で言うとレイジ殿2人、もしくは小生半分、エリス殿1人半程度でござるな」


エリス、意外と強いじゃない。


「ちなみに私だと?」


「ギフト抜きなら1人、有りで小生と同じくらいでござる」


あくまでも焼き尽くすとかの力技を使わない場合でござるが、とツワブキ。


確かに全体攻撃的なギフトは戦闘技術とは呼べないだろう。


それをやるなら50体のウェアウルフだって瞬殺なのだから。


何はともあれ、強くなるのはこれからだ。


「しっかり鍛えてやって」


「御意」


「それから、私も時々鍛錬に参加するからよろしく」


「殊勝な心掛けですな」


「またイカレ聖女みたいなのが来ても困るでしょ?」


護身よ、護身。


「グレイン」


観戦していた中からグレインを呼ぶ。


「お呼びでしょうか、主」


「畑の方はどんな感じ?」


グレインにはウェアウルフと奴隷の子供たちを使って、集落内での農業を考えさせている。とりあえず新集落内になる場所を決めて渡した形なので、実際に作業が始まるのはもう少し先になる。


好きなものを作れと言ったら、子供たちが意外とノリノリで考え始めたので、そのままグレインに任せたのだ。


「子供たちは種族関係なく協力していますよ。傍から聞いている限りちゃんと作物が出来そうです」


奴隷組が孤児院で家庭菜園的な事をしていたらしい。


それを伝えたら、子オオカミたちが興味をもって、そこからどんどん計画が進んでいるそうだ。


グレインの他にニーフェやツワブキも助言を与えているらしく、収穫までの時間が短い作物を作るつもりらしい。


肥料や作業の手間、収穫量など、大人がやり方や考え方を教えたら、妙にやる気をだした。


なかなか現実的じゃない。


そのままやらせてみる方が良さそうだわ。


「じゃ、そのまま進めてちょうだい。収穫楽しみにしてると伝えておいて」





こうしてソルガ集落は、徐々に発展していく。


樹海の中で隠された魔王の拠点は、人知れずゆっくりと成長し始めたのだ。


強固な城壁、整えられた建築。


河から引かれた用水路に、畑と畜産。


統率された獣の兵隊たち。


まさしく魔王らしい都市国家、その発芽。


アーデカルシャ・グリムレクスの居城となるその集落は、確実にその歩みを進める。


尖鉄都市グリム・ソルガ。


いずれそう呼ばれる都市は、魔王の名の元、確かな産声をあげたのである。



後書きウサギ小話

都市のお名前は?編



カル「改めて集落の名前決めるわよ。者共候補をだしなさい」


ツワ「隠密都市カクレクマノミ」


カル「アンタの私物じゃないのよ!あとアンタは可愛くない!却下!」


エリ「恩寵都市ダイスキカルシャ」


カル「好感度高過ぎかよ!せめてもう少し隠せ!却下!」


レイ「滅殺都市テンセイシャコロスマン」


カル「アンタ、過去の闇深すぎ!却下!」


ニー「約束都市ネバーランド」


カル「不穏な香り!却下!」


エリ「却下するならカルシャ姉も提案するっすよー(・3・)」


カル「え、じゃ、じゃあ…不可侵都市ノア」


一同「世界規模の引きこもりかよ!」


そして結局グレインの案が採用される!


完!


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