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2−7.最弱ウサギさん、集落開拓を始める

「カルシャ様のご帰還だぞー!整列ー!せいれーつ!」


物凄く出落ち感を醸すからやめろ。


集落の見張りに見つかった瞬間これだ。


簡易門を開けてもらって中に入ると、既に勢揃いの直立不動だった。


オオカミさんがウサギに敬礼なんて、牙が廃るぞ?


「ただいま」


「おかえりなさいっす!」


エリスが中央にいるのは旗が靡いていたから解っていた。


相変わらずなつき度が限界突破している。


「私たちがいない間に何かあった?」


「問題なしっす!順調に組織化が整いつつあるっすよ!」


敬礼っ!


ついでにドヤ顔っ!


「うざっ」


「久々にしどい!?」


いや、アンタは特に何もしてないでしょうが。


「組織化になんか貢献したの?」


「役割分担ごとに親睦会と意見交換会っすね」


ほほう。


真面目な回答するじゃない。


で?


「…その実態は?」


「果物パーティーっす…ハッ!( ゜д゜)」


しまった!じゃないわよ、このおバカ。


心の鍵、緩すぎ問題。


ガバガバかよ。


「そんなことより色々やる事があるのよ」


切り替える。


せっかく奴隷を仕入れたのだ。


遊ばせておくなんて、もったいないわ。





カルシャの考えによって、ソルガの集落はその在り方を大きく変えようとしていた。


具体的に言うと、3点。


一つ、建物と防壁の要塞化。


一つ、農業と畜産の取り入れ。


一つ、カルシャを頂点とした組織化。


集落に帰って、カルシャはまず集落の設計をした。


街で仕入れた本と齧った知識を頼りに、どのような形状であれば強固なのか、どうしたら敵に攻められにくいか、内部の農業や畜産がやりやすいかなど、様々勘案して設計図を書いた。


これには奴隷の製紙と製図のギフトが役に立った。


初めて描く図面にはかなり四苦八苦させられた上に、カルシャの描いたものでは正確さに欠け、製図ギフトで清書が必須だったのだ。


慣れない事はするものじゃないな。


ちなみに、異世界建築を知るレイジ、実戦での攻城経験のあるツワブキもいい助言をしてくれた。


最終的に10日ほどかけて完成した設計図は、満足に足る出来栄えだった。


その間、レイジとグレインには集落全員の名簿を作らせた。


名前、性別、歳、性格、特徴にギフト。


レイジが言うには住民票?とか言うらしい。


ギフト以外にも採取や狩猟が得意な者には、その事を書かせた。


これが出来れば、この集落では何ができるのか、どこまで可能か分析できる。


限られた人的資源なのだ、効率的に割り振るのが大事なのである。


エリスとツワブキ?


あぁ、アイツらは鍛錬兼ねた狩猟よ。


エリスはたっぷりしごかれた筈。


食料庫も潤って良いことだわ。


そんなこんなで計画と人材把握を終えて、改めて組織図を調整、集落の改修に着手したのが昨日の事。


寝床から這い出ると、既に日が高い。


寝過ごしたか。


ちょっと頑張りすぎたらしい。


被捕食者としては気が抜け過ぎだ。


夜用のランタン油も勿体無いし、程々にしないとね。


大きく伸びをしてからエリスの姿に変身すると、カルシャは外に出る。


「お?早速やってるわね」


ウェアウルフたちが至るところで土木工事を始めていた。

「おはようございます、カルシャ様」


すぐにニーフェが気付き、近くに寄る。


この10日ほどでおどおどした感じが抜け、すっかり此処にも馴染んだらしい。


試しにカルシャのお付きをやらせたら気が利いたので、それ以降はこうしてカルシャの付き人をしてもらっている。


「本日の予定はいかが致しましょうか?」


「まずは測量状況を見たいわね。その後は食料の貯蓄がどうなってるか知りたいわ」


何はともあれ、設計図を地面に写し間違えてはいけない。


よく確認すべきだろう。


あとは整地状況の確認もすべきかな?


「では、最初に第一班の所を見て、各所を見ながら戻り、最後に食料庫を確認しましょうか?」


「それで良いわ。さっそく行きましょ?」


魔王様、巡回である。





ニーフェと共に新集落予定地の中心へ。


予定地は現在の集落の脇。


範囲をかぶせるように建てる。


そうすれば周囲の森の伐採が少なくて済むし、整地する範囲も少なくなる。


と言う事で、現集落の端の方へ。


「お疲れ様。調子はどう?」


カルシャが声をかけると、測量のために杭を打ち、紐を持つ手が止まる。


「「「おはようございます、カルシャ様」」」


一同、直立不動でご挨拶。


暑苦しいし、堅苦しいぞ、お前ら。


「この辺は整地済みなので、今の所順調に進んでいます」


第一班の測量チームリーダーの報告では問題なしとの事。


地面に打たれた木杭を見る限り、図面との相違もなさそうだ。


まだ中心部のひと区画だけだが、自分の思い描いた建物が作られ始めていると思うと、ちょっと感動する。


モノ作り、楽しい。


本の知識である杭と紐を用いた拡大法もきちんと理解できているようだし、この班は問題無さそうだ。


「じゃ、次行くわよ、ニーフェ」


「次は第二班、伐採チームですね」


少し森の方に進むと、ちょうど豪快に木が倒れた所だった。


第二班も前に同じで直立不動。


なんだ、流行ってるのか?


あ、エリスの奴か?


変な知識教えやがって。


あとでお仕置きしてやる。


「こっちも順調に進んでる?」


内心はさておき、第二班に声をかける。


鋸に斧が脇に置いてあり、切り倒した木材は別班が建材として使えるように加工する。木材が山になりつつあるあたり、順調なように見えるが。


「概ね予定通りですが、木材の置き場が狭くて困っています」


予定通り過ぎて場所が狭くなってきたらしい。


それなら何処かに移動させるか?


ただ、木材は建物の床板に使うつもりだから、しばらく出番がない。


板に加工して集落内に置いておくか?


「ニーフェ、今木材加工できる班ってあったっけ?」


「そうですねぇ…第六班の整地を止めれば回せると思います」


第六班は現集落の仮門付近一帯が担当だったな。


今は整地より敷地だ。


木材の移動と加工をお願いしよう。


「じゃ、第六班に移動と加工をお願いしておくわね」


「ありがとうございます!」


次。


今度は第四班。


掘削ギフトの子供を含む水路建設チームだ。


この班だけは子供と引率係を含めて15人程割り当ててあるので、ちょっと騒がしい。


近付くにつれて水音と子供の高い声が聞こえる。


「やってるわね。進捗は?」


鉄茨(てっし)工法はうまく進んでますよ、カルシャ様。この調子なら、水路が繋がるのも遠くない筈です」


カルシャの視界には、掘削された水路。


まだ水は通されておらず、一部には石材が敷き詰められつつある。


班長が言う鉄茨工法とは、安価な部材を敷き詰めて、それをギフトによって隙間に鉄を流し込み、返しのついた棘を生やすことで強固に一体化させる工法の事だ。


表面は鉄そのものだが、中身が石などなのでオール鉄製よりも遥かに安く済む。


ギフトで製鉄するにも負担が軽くて済むので、試験的に水路作成で試しているが、どうやらうまく行っているらしい。


掘削担当の子供に製鉄担当、鉄加工担当、製石担当の子供と、石を敷き詰めるウェアウルフ、子供たちを盛り上げて働かせるウェアウルフ。


子供がいるので速度は決して早くないが、上手いこと役割分担していて、10日もあれば予定地まで伸ばせそうだ。


「ニーフェ。第四班には子供たち用の果物を用意してあげて」


やる気をだして頑張ってもらうとするか。


「アンタも一声かけてやんなさいよ」


子供たちは嬉しそうにニーフェにじゃれつく。


働かせるが、過ぎてはいけない。


せっかくのギフトも、本人が疲れていては非効率的だ。


目下攻めてくる敵はなし。


急ぐことも無い。


着実にやろうじゃないの。



後書きウサギ小話

キズナの力・・・?編



ゾワァ!


「ヒェッ?!Σ(゜Д゜)」


「エリス殿?どうしたでござるか?」


「今何か凄まじい悪寒が・・・」


「そんな事で拙者の指導は緩まないでござるよ?」


「鬼ー!悪魔ー!ウサギー!」


「・・・カルシャ殿をディスってるでござるか?」


「愛のあるイジリっすよ、やだなぁ」


その頃


「アイツ、なんか失礼な事言ってる気がする!!」


以下冒頭に戻る


以心伝心、無限ループ!


完!


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