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2−4.最弱ウサギさん、奴隷を買い叩く

「着いたね」


レイジに続いて建物に入る。


「奴隷市場っていうか、牢獄みたいね」


カルシャが目にしたのは、ランタンが照らす大きな吹き抜け、そこから見える数多の檻。


檻の前には管理者たる奴隷商。


各々が煙草を吹かしたり帳簿をめくったりしつつ、客との交渉をしている。


広めに作られた通路には傭兵たちが巡回しており、騒ぎがないか目を光らせていた。


これがドミナス名物の奴隷市場。


「数十人の奴隷商たちがスペースを借りて展示していますからね。早速見ていきましょう」


街が奴隷の檻を用意し、警備を付け、公正な取引を約束する。


商人たちは管理代を支払う代わりに、粗暴な客から守られ、万が一奴隷が暴走しても鎮圧を約束される。


客たちは競争原理の働く市場で、安定した価格の奴隷を選び、交渉ができる。


奴隷契約も専用スペースが設けられ、手違いなく行う事ができ、三者に得のある上手い商売。


さて、ここから先はレイジが主役だ。


「頼むわよ、レイジ」


「任せてよ。《恩恵透かしの魔眼(ギフトゲイザー)》」


ギフトに対応して、瞳が茶色から金色へ。


相手の持つギフトの種類や数が見えるようになる魔眼は、瞬時の鑑定となる。


片っ端から確認して、欲しいギフトを安い値段で仕入れるのだ。


子供のいる檻を探す。


「まずは此処ね」


4人の子供がいる。


痩せ細っており、肉体労働には向かなそう。


「んー、どの奴隷も欲しいギフトじゃないなぁ」


店主に声を掛けるまでもなく、次の檻へ。


子供に限らず、痩せている奴隷は多い。


質の良い奴隷はさっさと売約済みになるからだろう。


私の奴隷だぞ、質の悪い奴から買えよ。


内心悪態をつく。


グレインも辺りをよく確認しているが、なかなか子供が見つからない。


「あまり子供は多くないので、なかなか見つからないかもしれませんね」


「そのうち見つかるわ、きっと。次行きましょ、次」


安くて良いものを探すには、根気と時間をかけるしかない。


さっさと眺めていこうじゃないの。


「そこの檻は子供が居ますね」


「どれどれ…」


2人。


兄弟だろうか?


怯えた目をしている。


「どう?」


「駄目だね」


レイジのお眼鏡にも叶わなかったので、さっさと見切る。


「次、次」


こうして次々と確認していく。


一階、二階、三階。


建物は四階までなので、そろそろ終わりが見えてくるが果たして。


四階の中程。


檻を2つ借りている商人がいる。


子供の囁く声が聞こえていた。


「おや?あそこはどうです?子供が多いですよ?」


「ホントね。かなり多い…」


ここまで見てきた奴隷たちは恐怖などによって静かになっていたが、ここの子供たちはお互いに心配や不安を声にしているらしい。


子供な上に、奴隷としては従順さに欠けるように見える。


「20人くらいいるな。大人は一人だけか」


場所も悪い。


最上階だからなのか、あまり人が来ないのだろう。


他の商人もほとんどいない。


管理代も安いのだろうが、ここでは売れ行きは良くなさそうだ。


「ギフトは?」


「今見てる。数人は当たりだ。戦闘系も少しいるね」


「じゃ交渉タイムね」


レイジの報告を聞いて、カルシャは改めて耳を澄ます。


(僕たちどうなっちゃうのかな…)


(奴隷って、酷いことされるんだよね…?)


(孤児院に帰りたいよぅ)


(大丈夫、きっと大丈夫だから)


なるほどね。


孤児院が潰れたのか、焼けたのか。


あるいは借金の形にでもされて売られたか。


だから子供だらけで、オマケに大人が一人なのね。


あの女は慕われてるみたいだから、まとめて買えれば言う事は聞かせやすそうだけど。


まずは値段を聞いてみましょうかね。


「どう?儲かってる?」


声を掛けると、苛ついていた様子の店主がにこやかになった。


「それなりですねぇ。お嬢さん、奴隷がご入用で?」


嘘つきめ。


おおかた管理代も払い渋るくらい余裕がないんでしょ?


「ええ。子供が良いんだけど、なかなか良いのが居なくてね」


にこやかに答える。


営業スマイルがふてぶてしい感じで、ちょっとイラッとする。


「でしたらウチのはまだ奴隷なりたてで活きが良いですよ?いかがです?」


活きが良いんじゃなくて、単に仕入れたばかりだろうが。


「そうねぇ。レイジ、どの子が良い?」


苛つきを表にせず、レイジに必要な子供をピックさせる。


「あの子とあの子、それとそちらの子ですね」


可愛らしい男の子3人だ。


それを見て、商人は下衆な笑いを零した。


「おや、男色で?」


「いえいえ、家事や畑仕事ですよ」


苛つかせるやつだな。


商人向いてないんじゃない?


「余計な詮索は不要よ」


「これはこれは失礼致しました」


慇懃無礼とはこの事だ。


さておき、交渉タイム。


「で、幾らなの?」


この値段によって出方を考える。


想定は200S(シャール)くらいだが、いくらを提示してくるか。


「鑑定しておりませんが、3人でしたら1200S(シャール)でいかがですかな?」


「高いわね」


思わず口に出る。


相場の倍とは舐めてくれる。


田舎の傭兵かなにかだと思って上から見やがって。


ぶっとばすぞ、このヤロウ。


「しかし、活きが良い子供は他におりませんよ?よろしいので?」


足元見てやがる。


決めた。


ケツの毛まで毟り取ってやる。


「…《幻惑の魔眼(イマジンゲイズ)》」


静かにギフトを開けた。


対象の不安や焦燥などを火種として、幻覚や幻聴を引き起こし、増幅させる。

カルシャの瞳が商人を捕えた。


効果は抑えめ。


じわじわ行くわよ。


「その活きが良い子供、仕入れたてよね?」


「ええ、まあ…」


怪訝な顔になる。


耳で拾った情報を元に鎌をかける。


孤児院、帰りたい、院長、死、仕入れたて、憔悴した若い女。


そこから類推する。


「借金の形にでもなってたのかしらね?孤児院全員なんて、すごい額だったんでしょうね?」


子供20人程を抱える大きな孤児院。


どの街でも、これ以上の規模の孤児院はそうそうない。


服装や雰囲気から考えて、孤児院全員が奴隷として揚げられたのだろう。


カルシャの勝手な想像だが、当たらずとも遠からじ。


やましい奴は、ギフトの効果も相まって自白する。


「…あの孤児院の関係者の方でしたか。では、取引は止めにーーーー」


掛かった。


「止めないわよ?ただ、奴隷になった理由をちゃんと知りたいだけ」


畳み掛ける。


自滅に向かって転がりだす。


「私は孤児院に出資していた。院長が死んで経営が傾いたから資金代わりに回収しただけだ!何もやましい事はない!」


ギフトが何者かの影を見せる。


ランタンに揺れる影が、人の形をとるような気がする。


「そういう事を言うと、やましい事があるように聞こえるわよ?」


そして、視線を檻の中の女へ。


「…まさか、貴方が父を?」


言葉に合わせて女の影に男が現れる。


「?!…黙れ、奴隷が!」


勝利の確信。


「あらあら、化けの革が剥がれちゃった?」


嘲ってやると、商人は焦りと苛立ちをカルシャにぶつける。


「うるさい!取引は中止だ!失せろ!」


カルシャを手で押し返す商人。


だが、カルシャはニヤニヤをやめない。


「あら、いいのかしら?」


「何がだ?!」


気付いていない。


いや、気付きたくないのかも。


まあそうよね。


「ほら、貴方の肩、見てみて?」


「?」


「貴方が死に追いやった院長が、怨めしそうに見てるわよ?」


自分が死に追いやった相手がそこにいるのを、見たい人間なんて居ないでしょうから。


そして、商人の絶叫が奴隷市場に響き渡る。





その後、巡回の傭兵が来たりしたものの、カルシャと商人は無事に取引を完了した。


カルシャが支払った額、予算ぴったり2000S(シャール)


商人が売った奴隷、若い女一人を含む23人。


市場価格で半値以下どころか大赤字。


それでも手放したくなる程の酷い幻想をみたらしい。


あー、くわばら、くわばら。


お腹よじれちゃいそうだわ。


後書きウサギ小話

地獄耳?編



(僕たちどうなっちゃうのかな…)


(奴隷って、酷いことされるんだよね…?)


(孤児院に帰りたいよぅ)


(大丈夫、きっと大丈夫だから)


(あのお姉さん、意地悪そう…)


(あんな人の奴隷なんて嫌だな…)


(男の趣味わるーい)


「聞 こ え て る わ よ !」


魔王様の耳は地獄耳!


完!


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