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2−3.最弱ウサギさん、スリにあう

城塞都市ドミナス。


硝子剣山シルカルト霊峰より流れいづる清流の傍らにある都市国家である。


レソルガ樹海の恩恵とレソルカルト河の恩恵を多分に受け、聖都に次ぐ勢いを持つ街。


商人たちが強く、資産が物を言う若干黒い街であり、別名を奴隷都市という。


グレインの先導で城門を抜ける。


勿論それなりの袖の下を渡しての通行だが、額がそれなりだったせいで少し待たされての入国だった。


「さて、ようやく着いたけど、当初の予定通りでいいわね?」


今回の面子は、カルシャにレイジ、ツワブキ、グレイン。


「ルシャさんとグレイン、僕が奴隷市場。ツワブキは傭兵互助会だね」


能天気ようじょと違ってすぐに理解してくれるのはありがたい。


あのおバカは何回も説明がいるからな。


「小生はいつも通りでござるな」


「なんならひと儲けしてきてくれても良いのよ?」


「では少しばかりくすねてから合流するでござる」


懐が重そうな御仁が多くて迷うでござるなぁ。


やはりツワブキは有能である。


あわよくば買える奴隷も増えるだろう。


少々胡散臭い所はあるが、味方にいればこれほど頼もしい奴はいない。


3人で人混みに消えていく黒ずくめの背中を見送ってから、カルシャたちは奴隷市場の方へと足を向けた。


「じゃ、私たちは市場に向かいましょ」


人、人、人。


恰幅の良い商人が多い。


その他には道の脇を歩く農民、安上がりの鎧を着た傭兵、時折亜人。


顔付きを見れば、おおよそ儲かっているかは判別がつく。


人間も獣と同じで、結局は弱肉強食。


弱い奴は搾取され、いずれは死にゆくのだ。


そしてカルシャは弱者になるつもりはなかった。


「道中説明したけど、今回の軍資金はだいたい2000S(シャール)くらい。人間の子供の奴隷200S(シャール)と換算して10人程度だよ」


奴隷の価格は、基準である成人で400S(シャール)程度。男は労働、女は召使いと夜伽が主な使い道だ。子供になると年齢によってもう少し下がる。あとはギフト鑑定されていれば、その分上乗せされて売られる。


「レイジさんの魔眼で判別して、インフラに使えるギフト持ちを狙うんでしたね?」


グレインの言うような奴隷を正規値段で買うと、軽く800S(シャール)は下らないだろう。


狙い目は子供で、ギフト鑑定されていない者だ。


今までの扱いが酷くて、人間不信になっているくらいが丁度いい。


「出来るだけ安くてたくさん買いたい所ね」


多くても7人といった所が限界だろう。


亜人系でも良いのがいれば、そっちでもいいな。


エルフじゃなければ安上がりだし。


「確実に欲しいのは建材生産系と加工系かな」


出来れば石材か金属が良い。


拠点は強固に越したことはない。


金属の方は少々レアらしいので居ればラッキーだ。


後は掘削とか耕地とか組立あたりか。


やりたい事は多いが、全部は揃わないだろう。


よくよく吟味しなければ。


そんな風に考え毎をしていたからだろう。


カルシャの肩とすれ違った男の肩が思い切りぶつかった。


「っ!痛いわね!気を付けなさいよ!」


「おっと、すまないね、お嬢さん」


へらへらした小汚い男だった。


カルシャを見てニヤけたかと思えば、すぐに踵を返して立ち去ろうとする。



カルシャが不審に思うのと、グレインが男の腕を掴んだのは殆ど同時だった。


「…待ちなさい」


「盗みは良くないな」


グレインとレイジは即座に見抜き、二人の言葉にカルシャも気付く。


スリだ。


カルシャの持っていた巾着が無い。


すぐ使うからと腰に下げていたのは間違いだったらしい。


「盗み?なんの事やら…」


「ほう?しらばっくれるか」


グレインが凄むが、それには及ばない。


「…《夢幻鏡の刃(ヴォーパルエッジ)》」


小さく開いたギフトの箱、男に触れると一瞬だけギフトの名前が浮かんで消えた。


「?」


男は何をされたのか気付かない。


カルシャは胸ぐらを掴み、腹にはナイフをあてて敵意を向けた。


「さ、盗ったもの返しなさい?女子供だと思って舐めてたら殺すわよ?」


所詮こそ泥。


男は小物らしくすぐさま白旗をあげた。


「ぐ…わかった、わかったよ。だからナイフを仕舞え」


巾着と引き換えにナイフを引く。


「素直でよろしい」


にっこり笑顔。


男は表情を引き攣らせた。


「これに懲りたら盗みは辞めるんだな」


そしてグレインの言葉を聞き終えるまでもなく逃げていく。


…自身の得物を失った事に気付かないまま。



「《欲望の手(スニークハンドル)》ねぇ。せこいギフトもあったものだわ」



「アイツのギフトを?」


「ええ。一個しかないのに可哀想。ま、自業自得だけど」


欲望の手(スニークハンドル)》は、陰属性第1位の近接ギフトだ。視認した手に取れる物を引き寄せるだけのしょうもないギフト。


転生者たちには発現しない非戦闘ギフトなので、カルシャも初めて見た。


後にギフトを使えば、男の持ち物が散らばったりするのだろう。


ちょっと確認したい気もするが、今は奴隷の方が大事だ。


ちなみにグレインにはまだギフトを奪う事について教えていなかったので、横で驚愕していた。


「我が主にはそんな力もあるのですか?!」


「まあね。後で詳しく教えてあげるわ」



後書きウサギ小話

まだ知らない…編



「非戦闘系ギフトってどれくらいあるのかしらね?」


「さて、小生も数えた事はないでござるが…」


「ギフト一覧にも載ってないんだけど、まさか上位者なんて無いわよね?」


「無い、とは言い切れないのが味噌でござるな」


「だとしたらギフトって奥が深すぎるわね」


「建設系の上位者…?大工の棟梁か何かですか?」


上位を知らないグレインさん、今後の心労が心配!


完!

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