表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/143

2−2.悪夢の魔王さま、オオカミさんから慕われる

御前会議が終わり、そろそろ昼の時間になりつつある。


「もう昼か。ドミナスの街まではどれくらいかかるの?」


「ウェアウルフの足で片道3日半くらいです」


「結構遠いのね」


街道もなく、ウェアウルフたちもあまり森をでないため、基本的に獣道だそうだ。


「道中森の中ですので、どうしてもそれくらいはかかりますね」


一応いくつかは休憩所があるらしいが、それもそんなに数がある訳ではない。


「今日出ると樹海で寝る事になる故、出立は明日にした方が良いでござるよ」


ツワブキの言うとおり、今日一日しっかりと準備してから出かけるべきだろう。


「そうね。まずは食事にしましょうか」


そうと決まれば、まずは腹ごしらえだ。


カルシャの決定に、ぐでーんとしていた原本ようじょが飛び起きる。


「わーい!お昼っす!お肉っすぅ!」


一同は仮の御所を出て、集落中心の焚き火付近へと移動する。


「…単純すぎだわ、ヴィヴィアン」


「毒の嗅ぎ分けも出来なそうね、モルガナ」


妖精たちの悪口も何のその、エリスはご機嫌だった。


「食事に不満がなくて羨ましい限りだよ」


それを見て、レイジも思わず苦笑を零す。


「ここのお肉は新鮮で味も良いっすからねぇ。僕には天国っすよ」


「レソルガの森は獣が豊富ですからね」


メインは肉。あとは野草と果物、根菜や芋。


これらを蒸したり焼いたり煮たりして、シルカルト霊峰の麓近くで採れる希少な岩塩を少しまぶす。


ウェアウルフたちは元々薄味でも平気らしく、また岩塩自体貴重なので、集落にはあまりストックが無い。街ならば塩ギフト職人がいるので大概は間に合うのだが、ここではそうもいかない。


料理が運ばれてくる。


巨大な皿代わりの植物の葉、その上には丸焼きの獣。


小さめの獣と植物類も幾らか乗っている。


見た目はワイルドだが、人間や人間の料理に慣れた者にとっては、やはり味気ないモノではある。


カルシャ一同にのみ配られている僅かな岩塩も微々たるものだ。


しかし、この小さめのヤツ。


ちょっと気になるな。


「…まさかウサギ狩りしてないでしょうね?」


「勿論していませんよ。主に鹿や猪ですから安心して下さい」


小さめの奴は、大きな齧歯類らしい。


ならば良し。


他のは大きさからして、ただの獣ではなくモンスターの方だろう。


これだけの数、これだけの大きさのモノを狩るとなると一苦労だ。


流石に戦闘…いや、狩猟に長けている。


ウェアウルフたちにギフトを与える事ができれば、一気に戦力アップできそうなのだが。


後で妖精たちに聞いてみるか。


カルシャがそんな事を考えていると、エリスよりも小さな女の子が両手で何かを差し出してきた。


食事は運ばれてきているが、なんだろうか?


「まおうさまー、これあげる!」


「ありがとう。なんの果物かしら?」


受け取ると、それは手のひらより少し大きい黄色の果実だ。


センテでは見た事が無かったが、良い香りが漂う。


「ソイルの実だよ!甘くて美味しいの!」


そう言うと、女の子は恥ずかしそうにしてすぐに離れていく。


食事は別の者が運んで来てくれたし、私だけ特別?


カルシャの疑問を察して、グレインが補足する。


「あの子の親はこの間怪我を負ったうちの一人なんです。あの子も感謝しているみたいですね」


傭兵オーガにやられたのか。


「感謝だけじゃ駄目よ。これからちゃんと借りは返してもらうんだからね?」


あれは自作自演なのだが、バレていない。


適当な姿に変身して、カルシャ自身がここを襲うように依頼したのだ。


当然、彼らの忠誠心を手に入れるため。


死人を出さないタイミングは難しかった。


「勿論です。受けた恩義は忘れませんよ、ウェアウルフは」


騙した事に罪悪感はない。


そもそも、ウェアウルフたちは手駒でしかない。


極論を言えば、一番懐いているエリスでさえ、必要なら捨てる。


「期待してるわ」


私はそういう生き物。


そういうモンスター。


知識欲と生存欲が一番の自分勝手なやつ。


人の運命とかどうでも良くて、影響したくないし、されたくもない。


矜持はないし、死にたくないし。


だけど、魔王になると決めた以上、必要な事はやる。


やった事に対して出来るだけの責任は負う。


これは私が少しだけ変わったから出来た決断。


例えば手駒や拠点を整える事。


その生死、生活に責任を持つ事。


面倒くさいけど、不思議と悪くない。


私も少しずつ変わっているらしい。


多分、生きる事以外にも余裕が出てきたからだと思う。


生存欲と知識欲に、他の何かが混じっていく。


真なる魔王と最弱ウサギの間。


この頃のカルシャはそんな過渡期真っ最中だった。


後書きウサギ小話

食は盲目 編



「お肉うまーい!」


「まだまだあるでござるよ」


「いくらでも食べられそうっす!」


「これを身体につけると、美味しく感じるらしいよ」

レイ)つ塩


「ムフー!うまうま!むしゃー!」


「これも振りかけるでござる」

ツワ)つ胡椒


「がつがつ!ばりばり!」


「寒くないように火を炊くね!」

レイ)つ火


「ついでに蓋もするでござる!」

ツワ)つ蓋


「いつの間にか僕が炙られてるぅ?!」


注文の多い料理店!


完!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ