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40.最弱ウサギさん、小さな侵略を始める

晴天。


カルシャが目覚めた時、眩しい陽の光が周囲を照らしていた。


「カルシャ姉!?目覚めたっすか!?」


煩いな。


起きたよ。


死の淵から舞い戻って来たよ。


だから私の上で泣くんじゃない。


「おはよう、みんな」


身体を起こす。


変身が解けていないと言う事は、そんなに時間は経っていない筈だな。


肋骨は…痛い。


砕けたままだ。


よく肺に刺さらなかったな。


我ながら生きぎたない。


明るい場所で見ると、ミスリル防具はボロボロのボコボコだった。


聖女怖え!


寧ろ肋骨だけで済んで良かったわ!


内心ライナの恐怖を思い出していると、ウェアウルフの群れをかき分けてツワブキがやってきた。


「聖女討伐、お見事でございました」


最後はお前に助けられたけどな。


そんな事より、今の状況だ。


「そういうの良いから、とりあえず今の状況教えてよ」


カルシャは辺りを見回す。


祭壇に祀られた御神体の如く、カルシャは勢揃いの臣下に囲まれていた。


「カルシャ殿が聖女と戦ったのは昨晩の事でござる」


意外と早く起きたな。


割と重症だったはずだけど。


「いやぁ、聖女のギフトが位階6だったから助かったでござるよ」


ツワブキはそう言うが、治っている訳ではなさそうだ。


「アンタが治してくれたの?その割には肋骨砕けたままなんだけど」


「小生は治癒を阻むギフトの効果を取り除いただけでござる」


「治ってないじゃないのよ」


どうやら革命系列にはギフトの効果を打ち消すものがあるらしい。


そんなのあったか?


覚えがない。


まぁ、後で確認してみよう。


「その状態なら、ご自身で治せるであろう?」


「《活力の泉(リジェネレイト)》」


とりあえず身体は直に治るだろう。


次に被害状況だ。


「で、ウェアウルフの被害は?」


そちらはレイジが答えてくれる。


「カルシャさんのおかげで死者は無し。怪我人が数名だね」


「了解」


オーガ戦での負傷者くらいだろう。


被害が及ばなくてよかった。


これで身体張った意味もあるというものだ。


「ヴィヴィアン、モルガナ」


妖精を呼びつける。 


「何かしら、ボロボロ魔王さん?」


「しょうもないお願いかしら、ドロドロ魔王さん?」


「煩いわね。毟るわよ。種の候補者はいる?」


「どうかしらねぇ…どう、ヴィヴィアン?」


「ふむふむ…該当者はいないわ、モルガナ」


種の保有者が居ればラッキーだったけど、そうそう居る訳無いわよね。


エリスがたまたまそうだっただけ。


「ま、しょうがないわね。じゃ、代表者…グレインだっけ?こっちに来て」


ウェアウルフの族長…になるのだろうか?


一番体格がよく、恐らく一番強い。


ギフトも武器も抜きで戦ったら普通に負けそう。


そんな奴らが仕えてくれるのか、改めて確認だ。


「改めて、この私…魔王アーデカルシャに仕える事に異存は無いわね?」


「勿論ですとも。我らソルガ一族は、既に魔王アーデカルシャ様の臣下。何なりとお申し付け下さい」


全幅の信頼をひしひしと感じる。


プレッシャーだわ。


そんな内心は顔には出さず、カルシャはグレインを下がらせる。


「じゃ、これからよろしくね」


そして最後に。


「エリス」


膝のあたりにしがみつく黒髪。


耳はへたれていた。


「うぅー…カルシャ姉ー」


顔をあげればぐしゃぐしゃだった。


鼻水。


汚いわね、もう。


「いつまでも泣いてんじゃないわよ、このおバカ。アンタは魔王の影武者なのよ?しっかりしてよね」


これからしっかり働いてもらうんだから。


「だって…カルシャ姉が、死んじゃうかと思ったっすよぅ…」


「ホントにバカねぇ。私が本気で死ぬ訳ないでしょ?」


そのぐしゃぐしゃの頬を両手でつねる。引っ張る。離す。


「ホントに心配してたのにしどいっすよぅ!」


泣きながら怒りながら笑うって、アンタ器用ねぇ。


「それだけ元気なら大丈夫ね」


カルシャは立ち上がる。


ちょうどベッドがお立ち台代わりだ。


エリス、レイジ、妖精たちにツワブキ、それからウェアウルフたち。


「皆聞いて」


総勢50名に満たない臣下たちだ。


「私は魔王よ。でも、おおっぴらに侵略はしないわ」


魔王になるつもりなんてさらさら無かったが、こうして見ると壮観。


でも、危なくないようにやるなら、これはこれで面白いかも知れない。


「転生者を狩る。ギフトを奪う。人間は危ないから、少しずつ弱らせる」


転生者を狩っていけば、人間たちの魔物に対する力は弱くなる。


埋まっていないギフトも集められる。


まだまだ集めたい上位者ギフトもあるし、一石二鳥。


ついでに一神教も潰してやろうかしら。


「これが悪夢の魔王の侵略よ。静かに、夢のように蝕む」

少しずつ、着実に。


臣下ももう少し増やそうか。


それから少し鍛錬しよう。


また聖女みたいなのが来ても困るしね。


「貴方たちはその臣下。これから存分に働いて貰うわよ?」


臣下が声をあげる。


喝采は人気の無い森を震わせた。


私はウサギ。


ただのウサギ。


ちょっと特殊なギフトを持つだけ。


長生きしたくて、知りたがり。


面倒も危険も嫌いな一匹のモンスター。


ギフトの秘密を知りたいだけの、か弱いウサギ。


だけど、力を少し手に入れた。


それなら少しは手を伸ばしてみても良いかも知れない。


適当に魔王しながら、手に入れてやるわ。


あくまで危なくない範囲、でね




挿絵(By みてみん)





ーーーーー第1節“ケモミミノマオウ誕生編”完ーーーーー







後書きウサギ小話

何度でも蘇るさ!編



「ところで聖女は死んだのかしらね?」


「さて、どうでござろうか」


「鉄砲水に流されたのよね?」


「あの鉄砲水で生きてるとは思えないでござるが…」


「んー、それって生存フラグな気が…」


「聖女は滅びないっす!何度でも蘇るっす!」


「不吉な事言うんじゃないわよ、このおバカ」


あからさまなフラグ!


続く!



ーーーーーーーーーー



ケモミミノマオウ誕生編、完結です。

ここまで読んで下さった読者の方はありがとうございます。

この話だけ読んだ方は、是非最初から読んでいただけると、私が喜びます。


このお話は転生ものではありません。

が、転生者はたくさん出てきます。

主に搾取される側として。

転生者だけが優遇されるのに飽きた方は、それなりに楽しんでいただけたのではないでしょうか?


さて。

このお話の続きですが、実は全くプランがありません。

少し間を開けての更新になると思いますので、その時はまた読んでいただければ嬉しいです。


2019.10.16

烏夜 満月(改名:烏月ハネ)


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