32.最弱ウサギさん、妖精に詰め寄る
ベルグ湖の畔にて。
「流石にこれは酷いわね、ヴィヴィアン」
「いきなり縛り上げるとか鬼畜の所業だわ、モルガナ」
いきなり縛り上げられた双子の妖精たちは、不満たらたらだった。
だが、ここまでの事件の黒幕だと判っているのだ。
容赦は不要である。
「煩いわね。アンタたちが黒幕なのはウラ取れてんのよ」
「へっへっへ。さっさと白状しないとひん剥くっすよ!」
「あらあら凶暴な狼さんね!早く言わないとどうなるか解ったものじゃないわ!」
ちょっとしたチンピラ姉御と下っ端臭が漂うが、これが種持ちと真性魔王。
故ウォロク氏も情けなさでいっぱいであろう。
「三文芝居、ここに極まるでござるな…」
ツワブキも呆れるレベルの大根役者ぶりだった。
しかしながら、カルシャは本気である。
「解った、解った。言うわよ、ヴィヴィアン」
「この際仕方ないわ、モルガナ」
仕方なさそうにため息をつく双子。
「御託はいいから、さっさと言いなさい」
カルシャが急かすと、ようやく本題について語りだす。
「妖精の女王は魔王に仕える。これは古い盟約」
「盟約に従い、私達はウサギさんとオオカミさんに種を植えた」
ここまでは前回聞いた話だ。
前回此処を去る際に、カルシャは経験が不足している事を理由に、魔王になる事を拒んだ。
「ウサギさんは経験が足りなかった」
「だから私達は手駒を使って水やりをした」
それがカルシャたちとツワブキを引き合わせた原因らしい。
「小生は一神教から捨てられた所を彼女等に助けられた故、それ以降は彼女等の手足なのでござる」
一神教だけの情報にしては色々と知っているとは思っていたが、裏で妖精と繋がっていたのであれば納得がいく。
余談ながら、釣り人などに目撃されないのも説明がつく。
見られたりしたら、ツワブキが都度処理でもしていたのだろう。
そのおかげで、コイツら妖精姉妹は今まで悠々暮らせていた訳だ。
「やけに早いお帰りだから逃げて来たのかと思ったわね、ヴィヴィアン?」
「摩耗しきった存在とはいえ、かなりのスピードクリアだわ、モルガナ」
どうやらまだ立場が判っていないようだな。
「進化した高機動ウサギさん舐めんなよ」
槍を握り込み、吹雪を散らす。
そのまま脅そうとする前に、何故かエリスが息巻いた。
「そうっすよ!バーンでドカーンでズバーンだったんすからね!」
「…馬鹿まるだしだからちょっと黙りなさい、この駄犬」
この娘の頭の中を一回よく見てみたいものだわ。
ホントに魔王たる資格があるのかしら。
「…本当は何回かギフト集めが必要だったのよね、ヴィヴィアン?」
「ウォロクのおじさまが素敵な贈り物を遺してくれていたみたいね、モルガナ」
ウォロクとも知り合いだったのか。
「素敵な贈り物?厄介事の押し付けの間違いじゃない」
カルシャは魔王襲名の事について言及したつもりだったが、双子は槍の事だけではなく、魔王の力についても把握しているらしい。
「魔王の引き継ぎなんて珍事で祝福よね、ヴィヴィアン?」
「ギフトも増えたのに図々しいわよね、モルガナ?」
どうやってかは知らないが、ウォロクの力が受け継がれた事が判るようだ。
「有り難さ以上に代償が大き過ぎるっての」
その点に関しては、よくわからない事が多すぎる。
「ねぇ。改めて、魔王ってなんなの?」
まずは知っている情報を教えてもらう。
「世界の覇権を争う者」
「世界の命運を担う者」
感覚的には理解できるが、それでは端的すぎる。
「ウォロク殿も言っていた通り、魔王は運命なのでござるよ」
ツワブキも聞いたであろう話を、妖精たちは語る。
「かつて創世の魔術師は、枯れた世界を整えた」
「魔術師は種を蒔き、世界の繁栄を願った」
一神教が語らない、創世の神話。
世界を切り開いた魔術師の話。
「枯れた世界の命たちは、やがて咲いた花によって栄えた」
「花によって栄えた命は、欲望のままに分裂した」
人から異形化し、魔物は生まれた。
神の恩恵は、元・人間である魔物にも宿る。
妖精は魔術師の使い魔。
数を増やし、ギフトを与える役目を負った。
「それが人と魔物と妖精」
「それが勇者と魔王の始まり」
栄え、驕る人と魔物。
ギフトを与えるための妖精。
魔術師亡き後の世界にもたらされた繁栄と混沌。
「ギフトは世界の魔術を切り取った欠片」
「ギフトはやがて生まれる新しき創世の魔術師のための力」
世界は待ちわびているのだ。
「真の強者たる勇者と魔王は祝福を経て、やがて魔術師となる」
「魔術師はギフトを操り、創り、消去し、与え、全てを決める」
新しき支配者を。
新しき秩序を。
「魔術師は伝説」
「魔術師は世界の王」
そのために、妖精の女王は秘密を語り継ぐ。
「私達妖精は、古き魔術師アデルカ・クロトを仰ぐ者」
「私達妖精は、新しき終末の魔術師を讃える者」
原初の魔術師アデルカ・クロトに創り出された使い魔の末裔。
上位者の種という、最も象徴的なギフトを与える妖精女王。
「「これが世界の秘密。妖精女王コルナ・ラケシスの宿命」」
双子の妖精は、現代まで受け継がれし女王の力の継承者。
妖精女王だった。
後書きウサギ小話
学芸会?編
「煩いわね。アンタたちが黒幕なのはウラ取れてんのよ」
「へっへっへ。さっさと白状しないとひん剥くっすよ!」
「あらあら凶暴な狼さんね!早く言わないとどうなるか解ったものじゃないわ!」
「きゃー、食べられちゃうわ、ヴィヴィアン!」
「モルガナだけには、モルガナだけには手を出さないでー!」
「麗しい姉妹愛じゃない!その言葉に免じて、アンタからよ!やっておしまい、エリス!」
「あいあいさー!」
「あーれー!」
妖精もノリノリ!
完!




