30.最弱ウサギさん、掘り出し物を見つける
ようやく熱気がおさまり、カルシャの元に三人が寄ってくる。
「ジャバウォック討伐お疲れ様」
「まさかあんな風に反撃されるとは思わなかったけど、狩れて良かったわ」
魔王と革命、両方あったおかげだ。
「流石に肝が冷えたっすよー」
エリスの言う通り、かなり危なかった。
魔王の炎でも焼き尽くせないものはあるのだ。
実際に革命の力の使い方が解ったのは収穫だが、こういう綱渡りは極力したくないものだ。
「革命の力を上手く使ったでござるな」
コイツ、絶対こうなる事を解っててここに連れてきたな。
飄々としていて読みにくいが、コイツには気をつけなければ。
「発動は無自覚だったけど、感覚は掴めたわね」
とはいえ敵対する必要までは感じない。
そっちがその気なら、こっちも絞れるだけ情報を絞ってやる。
内心そんな事を考えていると、ツワブキは狩りの成果について問いかけてくる。
「ギフトの解放の方はどうでござるか?」
そいえばメイン目的はそっちだった。
「確認してみる。《時計修理の妖精》」
幻想の粘土盤を呼び出す。
《革命の徒》から辿る先。
獲得条件は、夢幻鏡の守護者の魂を捧げよ、の一文。
派生条件のギフトは揃っていると思われるので、派生しているはずだが。
目標としていたギフトは、果たして。
「…あった」
《夢幻鏡の刃》
革命を支える、奪い写す刃。
その効果は位階5の《鏡写しの呪い》の上位互換だ。
粘土盤の記述はこうだ。
『
【発動制限】継続直接接触
対象の所持ギフト一つを選択して自身に複写する。複写対象ギフトは“このギフトが発動した時、そのベクトルを反転する。その後このギフトを消去する”の追加効果を得る。接触時間に比例して選択時間が増え、時間切れした場合にはランダムピックとなる。獲得ギフトは一定確率で変質する。獲得ギフトに解放権利が無い場合は使用出来ない。
』
相手に触れながら発動することで、相手のギフトを消去し、同位階同属性のギフトを授かる《鏡写しの呪い》だが、上位ギフトは奪う事が出来なかった。
今回、反射ギフト奪取を試みなかったのも、そういう制約があったからだ。
だが、同位階以下という但し書きのない《夢幻鏡の刃》ならば、例えそれが上位ギフトであろうと奪う事ができる。
何より凶悪な効果なのが、一度反射してから消えるようになっている点だろう。
攻撃系ギフトならそのまま跳ね返り、特殊や補助、回復ギフトなら不発。
最高の騙し討ちだ。
選択に制限時間があるのは気になるが、有能なギフトに違いはない。
一神教が勇者に覚えさせたがるのも頷ける性能だ。
粘土盤を閉じる。
「成功よ。これがあれば、結構色々できるかも」
思わず口元が緩む。
上位もオッケーで、選んでも良い。
これで他のギフトが盗りやすくなった。
「ぐふふ」
そのせいで、美少女らしからぬ表情になってしまったようだ。
「カルシャ姉、顔が大変っすよ?!」
「ふっふっふ」
エリスが若干ひいている。
カルシャは垂れそうなヨダレを手の甲で拭った。
「単なる上位互換どころか、他の上位者への切り札になるゆえ、相当嬉しいと見た」
「よく解ってるじゃない」
ツワブキの言う通りである。
ニヤケが止まらない締まらない狩人さんだった。
「ギフトコレクターとしては、これ程嬉しいギフトは無いわ」
カルシャは三人に《夢幻鏡の刃》の効果を詳細に教えてやる。
「それは捗りそうなギフトだね」
「なんていうかもう、やりたい放題なギフトっすね」
「接触時間に比例、が肝がでござるな」
三者三様だが、カルシャと相性が良いギフトである事は理解してくれたようだ。
そんな事を話していると、背後で物音がした。
「?」
カルシャが振り向くと、元々玉座があった部分に、天井の鉱石が落ちた音だったらしい。
冷え固まった溶岩に、鏡面を保った結晶が散らばっている。
きっと戦いの余波でひび割れていたのだろう。
気付けば玉座自体も大きく崩れ、石の山となっていた。
違和感。
何度か瞬きをする。
なんだ?
その中に、何か異なるモノが混じっていた。
鉱石の様な直線に、滑らかな曲線が混じっている。
決して溶岩などではない。
無言で近付くと、その正体が解った。
「これは…槍、ね」
瓦礫の中から取り上げる。
カルシャの身長をゆうに超える長物。
軽すぎず重すぎず、これが上位者のために創り出されたものだと、本能で理解する。
込められた力、象徴を示すその銘は、持ち手の辺りに刻まれていた。
「“凍りつく炎の円舞槍”」
カルシャが銘を読み上げると、その槍は吹雪を纏った。
持ち主に相応しいと、主を定めたかのように。
「…え、なんか吹雪いてるんですけど」
しかしながら、カルシャの方は全然受け入れ体勢ではなかった。
後書きウサギ小話
不完全ヘンシン?編
「成功よ。これがあれば、結構色々できるかも」
思わず口元が緩む。
これで他のギフトが盗りやすくなった。
「ぐふふ」
そのせいで、美少女らしからぬ表情になってしまったようだ。
「カルシャ姉、顔が大変っすよ?!」
「ふっふっふ」
「変身が解けて、グロ画像になってるっす?!」
「早く人間になりたーい!」
妖怪ニーンーゲン!
完!




