20.最弱ウサギさん、魔王の力を知る
「さて、魔王の種も手に入れた事だし、ちょっと確認してみますか」
遺跡居住区まで戻ってきたカルシャは、二人に見張りを任せ、さっそく手に入れたギフトを確認することにした。
「《時計修理の妖精》」
毎度おなじみ、ギフトの一覧が開かれる。
暗くなっていた粘土板のいくつかが下位のものと同じ様に明るくなっており、その中に魔王の種は刻まれている。
「《魔王種》に《革命の徒》…あった」
魔王の方は能力を底上げしてくれるギフトのようだ。
粘土板には、体力・力・俊敏・思考力の向上、カリスマ性の向上がギフトの効果として記載されている。
そこから上にあるギフトは主に火属性や陰属性が多いようだった。
一方、革命の方は、完全に上位者殺しだった。
いずれかの能力値が相対的に低く一定以上の差がある場合、一時的にその差分の補正を受ける。
上位者系ギフトを持つ者に対して、幸運に補正を受ける。
完全に、相手の得意分野を殺して逆転勝ちするためのものだ。
革命から得られるギフトは数える程しかない。
それぞれが一発逆転の可能性を秘めたギフトなのだろうが、これら単体では心許ないので、魔王と併せて授かったのは正解だったと思う。
「全部は手に入らないのか…」
そして、相変わらずその他の上位者派生ギフトは閲覧しか出来ないらしい。
聖女や災厄、混沌などの上に位置する粘土板は暗いままだった。
再び明るい方の粘土板に目線を戻す。
「お、既に昇華してるのあるわね…」
上位ギフトでもキチンと昇華するようだ。
《尖焔の射手》の上位版のようだ。
「《業火の射手》か。…今度試してみよう」
他のギフトを見てみると、条件になりそうなギフトが揃っているのに昇華していないギフトもいくつかある。
大概何かしら一文が添えられている。
とりあえず読み取れる情報はここまでだった。
「ギフトの確認は終わった?」
「残念ながら、全てのギフトを集める事は難しそうね」
レイジに肩をすくめて見せる。
「魔王の種ごとに手に入るギフトが違った?」
「そんな感じ。昇華する条件も厳しそうだわ」
添えられた一文がヒントなのだろう。
「どういう事っすか?」
エリスにも改めて説明してやる。
「今までは条件に合う複数のギフトを持ったら、自動的に位階が高いギフトを貰えてたのよ」
効果に併せて必要なギフトが決まっていたみたいだった。
だが、上位はそれだけではないらしい。
「上位ギフトはそうじゃないっすか?」
「持ってる事に加えて、何か他にも条件があるみたいなのよ」
例えば、こんな一文。
“戦いに明け暮れし獅子の魂を喰らえ”
なんの事なのかさっぱりだ。
「具体的には?」
「解らない。けど、条件のギフトがありそうなのに貰えてないギフトがいくつかあるの」
何かを倒すのか、それとも暗喩なのか。
革命派生のギフトなんて、もっと解らないヒントばかりだ。
「色々試してみる必要がありそうだね」
そういう意味では、一つだけでも手に入ったのは幸運かもしれない。
「とりあえず一つは手に入ったのよ。何処かで試してみようと思うんだけど」
そうカルシャが言うと、エリスがハイハイ!と手を上げた。
「カルシャ姉、それならちょうど良い相手がいるっすよ!」
*
「アンタを信じた私がバカだったわ」
「流石にアレはちょっと大変じゃない?」
「え?そうっすかね?今のカルシャ姉なら楽勝だと思うんすけど」
3人がやってきたのは、遺跡から少し離れた平原。
古い戦場であり、今は大きめのモンスターたちの住処である。
街道からも離れており、人間にとっては死のエリアと言えよう。
そんな平原の岩陰から見ていたのは、ずばり大型モンスターの中でも有名どころの奴だった。
「だって、アレ、マンティコアでしょ?」
マンティコア。
赤い身体の怒れる獅子。
獰猛で俊敏で力強く、恐ろしいモンスターの代表格である。
「前にキマイラ倒してたじゃないっすか。似たようなモノっすよ、きっと」
キマイラもかなり厄介だが、マンティコアには劣る。
「全く別物じゃない、このおバカ」
エリスのおバカ加減をすっかり失念していた。
だが、エリスは強くなっていた。
「大丈夫っすよ、前に影狼で追い払えたっすから」
新しいギフトによって、大幅戦力アップしているらしい。
「じゃあ、なんかあったらキッチリ倒しなさいよ?」
「任せて下さいっす!」
全く、どこからその自信がくるのか。
軽く小一時間問い詰めたい。
毒気を抜かれてしまったカルシャは、一度ため息。
それからこう言った。
「じゃ、ちょっと試し撃ちするから、殺せなかったら頼むわよ?」
そう言ったらエリスが仕方ないなぁと苦笑する。
「心配症っすねぇ、カルシャ姉は」
「煩い。私は本質的にウサギなの!弱者なの!」
魔王の種まで得た身でいい加減苦しい言い訳っぽいが、根本的にそういう生き物なので仕方ない。
ギフトがなければそもそも軽く淘汰される側なのだから。
「はいはい」
そういうの良いから、的な態度はやめろ。
しめるぞ、コノヤロー。
「あぁもう!いいわよ、やるわよ!《業火の射手》!」
自棄で遠距離からぶっ放す。
カルシャが位階5の延長だと想定して撃った炎のギフトは果たして。
ゴオオオォォォォ!!!
ものすごいほのおがうなりをあげる!
マンティコアはけしずみになった!
カルシャたちはせんとうにしょうりした!
けいけんち150をてにいれた!
「は?」
「え?」
「ナニコレ?」
平原に巨大な焦げ跡を残し、マンティコアの影も形も無い。
「マンティコアは?」
「…燃え尽きたっすね」
エリスもおくちあんぐりだった。
「マンティコアってかなり強いモンスターだったわよね?」
「…その筈だね」
レイジも言葉を探した挙げ句に、そんな返ししか出来なかった。
「あー、アレだ。これはヤバイわ。気軽に使っちゃ駄目なやつだわ」
魔王とは。
勇者とは。
かつての歴史上の奴等は、こんなギフトでドンパチしてたというのか。
なんて冗談だ!
絶対に魔王とかならないわよ!
心の中で叫ぶ。
「とりあえず、森を火事にしなくて良かったっすね」
「…そうね、その点はマンティコア狙いで助かったわね」
センテ遺跡で試さなくて良かった。
カルシャは心からそう思った。
後書きウサギ小話
試し撃ちのお相手は?編
「アンタを信じた私がバカだったわ」
「流石にアレはちょっと大変じゃない?」
「え?そうっすかね?今のカルシャ姉なら楽勝だと思うんすけど」
3人がやってきたのは、大魔王のお城。
「死にゆく者こそ 美しい。
さあ 我が腕の中で 息絶えるがよい!」
「マジモンの大魔王じゃない!光の玉なんてないわよ!」
「こごえるふぶき!」
そして伝説へ!
完!




