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19.最弱ウサギさん、そして上位者へ

「傍若無人だわ、ヴィヴィアン」

「厚顔無恥ね、モルガナ」


風の鎖から解放されても、妖精の双子は文句たらたらだった。


だが、カルシャにとっては魔王のギフトを得られるかどうかが問題だ。


「煩いわね。出来るの?出来ないの?」


双子の妖精はツンとした顔のままではあるが、その質問に肯定を返した。


「可能よね、ヴィヴィアン?」

「条件は満たしてるわ、モルガナ」


「条件?」


カルシャが聞き返すと、双子は即答する。


「双子を見つけること」

「下地があること」


「双子を見つけるのは解るけど、下地ってなんすか?」


「下地とは、上位に進む資質がある事よ」

「資質とは、魔王や真の勇者になるための種子の事よ」


どうやらカルシャの説は正しかった。


「上位者の種子、か」


なんらかの手段でギフトを手に入れても、資質がなければ駄目なのか。


カルシャにとっては無用の心配だった。


「ウサギさんにはいくつか該当するのがあるわね、ヴィヴィアン?」

「聖女、異形、厄災、混沌、魔王に上位者、果ては革命まで色々あるわよ、モルガナ」


7つも適性があるらしい。


しかし、言葉だけではよく解らない。


「それぞれ説明しなさいよ。何が違ってくるの?」


カルシャに問われ、モルガナが答える。


「そうねぇ。ウサギさんはモンスターだから、聖女になるととても面倒だわ」

「なる訳ないでしょ。次」


あのライナと同じ呼び方なんて、まっぴらごめんだ。


次はヴィヴィアンが口を開く。


「異形はウサギさんじゃなくなる。厄災は強いけど、王様には向かないわ」


ウサギである事は気に入っているし、根本的に別のものになるのは忌避感がある。


王様になる気はないが、強さは特に求めていない。


「どっちも無いわね。次」


「混沌は正気が亡くなる。魔王はオールラウンダーね」


正気が保てないのは論外、魔王はこの中ではまともそうな感じだ。


「残りは?」


「上位者は姿そのまま強くなる。革命は格上相手に滅法強くなるけど、普段はウサギさんのままね」


上位者も中身の変質が伴うようだ。


革命は切り札チックだな。


さて、選択肢はなんとなく解った。


どれを選ぶべき?


個数は?


「これって2つ選べるのかしら?」


そう問いかけると、妖精たちは顔を見合わせた。


「前列は無いわね、ヴィヴィアン?」

「今まで複数該当が居なかったわ、モルガナ」


「で、出来るの?」


結論は。



「「出来るわ。妖精の魂にかけて」」



妖精たちの力強い頷きだった。


ならば選んだものを伝えるだけだ。


「じゃあ魔王と革命を頂戴」


妖精たちの行動は早かった。


「解ったわ。やるわよ、ヴィヴィアン」

「さっさと済ませましょう、モルガナ」


双子の妖精は手を合わせて祈る。



「「最古の魔術よ、我等の友に加護を授けよ、《妖精女王の神託(グランギニョル)》」」



それはギフトを呪い堕とした時とは違って、明確な高揚があった。


身体の芯から熱くなる感覚。


徐々に冷えて治まる頃に、妖精たちは寿く。


「私からの贈り物は《魔王種(インフェルノ)》」


純然たる魔物の長。


支配者の象徴。


「私からの贈り物は《革命の徒(リベリオン)》」


権力、暴力、知力、その極致を殺す極致。


あらゆる上位者の中で最弱にして最強。


究極の逆転の体現。


この時点を持って、本当の意味でカルシャ・グリムは悪夢となった。


魔王でありながら、他のあらゆる上位者への切り札を持ちうる。


本来弱者にのみ与えられる革命の力が、弱者から成り上がった狩人に与えられ、最凶の魔王の種が生まれたのだ。


だが、カルシャにとってそれはあくまでも結果だ。


「これで上位ギフトが手に入るのね」


カルシャの興味はギフトの秘密にしかない。


「それは副次的な効果だわ。ね、ヴィヴィアン?」

「本質的には導き手になるためのギフトよ。ね、モルガナ?」


「導き手ねえ…。興味ないわね」


モンスターにしろ人間にしろ、先頭に立って率いるなんて柄じゃない。


魔王などもっての外だ。


「え?魔王になるんじゃないの?」

「妖精は魔王に従うものなのよ?」


妖精たちは呆気にとられて、口が塞がらないようだ。


あまりにも予想外だったらしい。


仕方ないな。


ちょっとだけよ。


「話だけなら聞いてあげるけど」


妖精たちは話し始める。


「かつて妖精は人間に滅ぼされたわ」

「だから当時の妖精王は魔王と盟約を交わした」


それは歴史にも刻まれている。


妖精はギフトを与えなくなり、魔王に汲みしたのだ。


「人間にはギフトを与えない」

「資質あるモンスターにはギフトを与える」


それも盟約故に、と言う。


「魔王は種が発芽し、育った存在」

「私達妖精は種を見つけ、発芽を促す存在」


魔王が討たれようと存続するための盟約。


それが古からのしきたりだと、双子は告げる。


「オオカミさんもウサギさんも選ばれた」

「魔王にはこの世界を統べる義務と権利がある」


カルシャもエリスも魔王候補。


「妖精の願いは一つだけ」

「妖精は人間を滅ぼしたい」


古来からの因縁を、恨みを晴らせるのは魔王だけ。


「そういう盟約」

「そういう因果」


力には責任が付いて回る。


「小癪な人間たちによって勇者は生産される」

「魔王の種は刈り取られてきた」


「我等、盟約に従い、種を育てし者」

「盟約に従い、種子持つものは人間を滅ぼす」


もしかしたら、カルシャがライナに目をつけられたのも、そういう定めがあるからなのかも知れない。


しかし。


「アンタたちの意志は解った。考えとくわ」


カルシャにはやはり興味が無かった。


むしろ勇者になど二度と会いたくない。


一生懸命話した双子も唖然、である。


「え?聞いてあげないんすか?」


「いい?私は死にたくない。魔王になんかなったら、毎日危険だらけじゃない」


「そりゃそうっすけど…ギフトだけ貰っておいて不義理じゃないっすか?」


エリスは人情にほだされているようだが、カルシャはあくまでも自分ファーストである。


「じゃ、アンタが魔王になりなさいよ」


「え゛」


「アンタも持ってるじゃない、種」


エリスにそう言ってやると、散々唸って悩んだ末にカルシャを取ったらしい。


「…まぁ、カルシャ姉が望むなら考えるっすけど」


渋々だが、相変わらずカルシャには容赦がなかった。


「決まりね」


「即答!」


「あとはよろしく」


「丸投げなんてしどい!」


王に向いてなさそうな奴に、王に向いてない王の資格があり、それを丸投げする。


なんて丁度いい厄介払い。


ま、妹分に対してまで流石にそこまで不義理ではない。


冗談である。


「冗談はさておき、本当に魔王になるのだとしても、実力が不足してると思わない?私は今のままじゃ勇者に勝てるとは思えないわよ?」


ギフトは増えただろうが、それまでだ。


戦闘が上手い訳ではない。


「どう思う、ヴィヴィアン?」

「確かにまだ早いかもだわ、モルガナ」


それは妖精たちから見ても明らかだった。


「でしょ?」


その事実を盾に、カルシャはさっさとこの場を離れる事にする。


「強くなったらまたここに来るわ。盟約とやらはその時でいいかしら?」


それに気付いているのかどうなのか、妖精たちは妖しい笑みを浮かべる。


「「必ず貴女は戻ってくるわ、ウサギさん。その時を楽しみにしてる」」


その言葉に気を取られ、カルシャとエリスの脚に白い糸が纏わりついたのに、この場の誰も気付かなかった。



後書きウサギ小話

魔物の、王・・・?編



「え?聞いてあげないんすか?」


「いい?私は死にたくない。魔王になんかなったら、毎日危険だらけじゃない」


「そりゃそうっすけど…ギフトだけ貰っておいて不義理じゃないっすか?」


「じゃ、アンタが魔王になりなさいよ」


「え゛」


「アンタも持ってるじゃない、種」


エリスにそう言ってやると、散々唸って悩んだ末にカルシャを取ったらしい。


「…解ったっす!魔物の王に、僕がなるっす!」


熱血展開!


完!


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