17.ようじょさん、とんでもない事をしでかす
「先ずはエリス、アンタの報告から聞かせなさいよ」
カルシャはエリスの近況から先に促した。
「手紙でも伝えたっすけど、僕はひたすらモンスター狩りしてたっす」
定期的に町の互助会まで手紙が届いていたので、なんとなくは状況が解っていたが、本人から詳しく聞いたほうが間違いない。
「ギフトはどう?使いこなせるようになった?」
「バッチリっすよ!今なら2つギフトくらい余裕で倒せそうっす」
「熟練具合は良さそうだね」
レイジの言葉にも満面の笑みだった。
そして、軽い感じで爆弾発言をする。
「そうそう、なんかギフト増えたっす」
「え」
「は?」
ギフトは普通は増えない。
カルシャや勇者ライナが例外であり、本来は生まれた時のギフトは変わらないし増えないのだ。
とんでもない事をサラリと言うエリスに、カルシャもレイジも開いた口が塞がらない。
相変わらずエリスは最強に能天気だった。
「いやぁ、こんな事もあるんすねぇ」
「いやいや」
「あり得ないでしょ!」
全力ツッコミだった。
だが、エリスはケロリとしている。
「でも、増えたっすよ?」
埒が明かない。
「レイジ」
「見透かせ、《恩恵透かしの魔眼》」
カルシャの命に、レイジが魔眼を使う。
レイジの表情が驚きに染まった。
「…確かに、増えてる。しかも3個だ」
驚くのも無理は無い。
ただのウェアウルフがギフトを3個さらっと所持しているのだから。
「はぁ?!なんで2つも増えてんのよ?!」
声を留めるのが不可能なくらい衝撃的な話だった。
しかも、その入手経路がまた支離滅裂だった。
「修行の途中で出逢った妖精さんがくれたっす」
は?
何言ってんの?
妖精さんですって?
苦しい修行の末に力を手に入れて、正気を置いてきちゃった?
妖精などという種族は、歴史の染みでしかない。
人間たちに狩り尽くされ、絶滅した筈だ。
そんなカルシャの知識を嘲笑うかのように、エリスは回想を語り始めた。
ほわん、ほわん、ほわん、ほわん、えりえりー。
エリスがとある泉で魚を狙っていた時の事だ。
「ヒソヒソ…なんだか貧相な狼さんがいるわ、ヴィヴィアン」
「ヒソヒソ…そうね、あれでは男と間違えてしまうわ、モルガナ」
草葉の陰から何やら聞こえてくる。
というか悪口だった。
ついにお腹が空きすぎて幻聴が聞こえ始めたようだ。
「魚を採ろうとしているわ、ヴィヴィアン」
「ものすごく鈍臭いわ、モルガナ」
行動を逐一実況されている。
自分の妄想とはいえ、ちょっと心地悪い。
「あーあ、あれで何回目かしら、ヴィヴィアン」
「そろそろ餓死する頃じゃなくて、モルガナ?」
…好き勝手言うのも大概にするっすよ。
限界を超えた心の声がだだ漏れる。
「うるさーい!放っておくっす!」
振り返ると、そこには。
「まぁ!私達が視えるみたいよ!久々だわ、ヴィヴィアン!」
「そうね!これはアレをするしかないわね、モルガナ!」
ようじょの頭の程の人型が2つ。
黒と白の妖精は素早くエリスに飛びよると、蜘蛛の糸のようなものでエリスを拘束した。
「なんすか!何するつもりっすか!うわぁぁぁーーー!」
意識を失う直前、2つの瓜二つな顔がエリスを覗き込んで笑っていた。
ほわん、ほわん、ほわん、ほわん、えりえりー。
「ってな訳で、よく解らない妖精姉妹が消えると、ギフトが増えてたっす」
どうでも良いけどなんなの、あの効果音なんなの。
話があまりにも突飛すぎて、エリスの正気を疑うあまり現実逃避気味だった。
だが、ギフトが増えている以上、何かしらが起こったのは確かだ。
「でも、これでカルシャ姉を守れるっす」
このエリスの様子を見ている限り、正気は保っている。
カルシャはため息をついた。
それから手に入れたギフトについて問う。
「…で、なんてギフトなのよ?」
「《影狼笛》と《厄災種》っすね」
両方とも聞き覚えが無い。
今のカルシャが判らないとなると、かなり高位階のギフトになるだろう。
「聞いたことないやつだわ。ちょっと待って、確認する」
効果や名称から推測できる筈だ。
「《厄災種》か。何か特殊っぽい響きだね」
レイジの言葉を聞き流し、カルシャはギフト一覧を呼び出す。
「《時計修理の妖精》」
その瞬間、カルシャは言葉に出来ない衝撃を受けた。
こんな。
こんな事って。
「どうっすか?どんなギフトっすか?」
能天気もいい加減にしなさいよ。
こちとらこの発見に処理が追っつかないんだから。
「…アンタ、その妖精って何処に居た?」
「え?」
「妖精たちの居場所教えなさいよ!」
困惑するエリスに、軽く殺意すら覚えている。
それ程の衝撃だ。
「それはいいっすけど、急に怖い顔して…どうしたんすか?」
カルシャは黙り込む。
ギフト一覧には、今まで認識出来ていなかった領域があった。
ギフトを集めていけば、明らかになると思っていた。
だが、それは誤っていた。
《厄災種》
このギフトの存在を識った事がトリガーとなり、カルシャのギフト一覧は閲覧のみがアンロックされた。
単独で輝くギフトがいくつか。
そこから更に上に重なるギフト群。
5位階よりも上の、ギフト。
上位ギフトを手に入れる資格たるギフト。
「…そのギフト、多分魔王になる条件よ」
後書きウサギ小話
よう…せい、さん?編
「うるさーい!放っておくっす!」
振り返ると、そこには。
「まぁ!私達が視えるみたいよ!久々だわ、ヴィヴィアン!」
「そうね!これはアレをするしかないわね、モルガナ!」
ようじょの頭の程の人型が2つ。
黒と白の妖精は素早くエリスに飛びよると、蜘蛛の糸のようなものでエリスを拘束した。
「なんすか!何するつもりっすか!うわぁぁぁーーー!」
意識を失う直前、2つの瓜二つな顔がエリスを覗き込んで笑っていた。
その顔は、まさにおっさんそのものであった。
悪夢!
完!




