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16.ようじょさん、臭くなる

転生者を語るにはまず、魔王と英雄について語らなければならないだろう。


以前、そんな事を考えた。


その通りだ。


かつて有った魔王は、英雄と対の存在だ。


ギフトが極まりし時に魔王は現れる。


英雄は人の淘汰によって現れる。


いずれもギフトが収束し、選ばれた者が上位種となるのだ。


ギフトの秘密はまだ深く。


私にはまだ、全てを見ることはできない。


だが、ここ最近ではある仮説を立てるに至った。


即ち、転生者とは英雄を作り出すためのシステムのパーツである。


無尽蔵に供給される、多様なギフトを持つ転生者。


選ばれし勇者はギフトを増やすギフトを持つ。


現代には魔王がいない。


これを単純に繋いだらどうなるか?


誰かが転生者を召喚し、勇者にギフトを収束させ、人工的な英雄とする。


結果、魔王やその可能性を持つモンスターは刈り取られ、人の世は魔王の驚異を知る事なく続く。


遺跡群はそのシステムの一環だろう。


壮大な話ではあるが、過去に魔王を滅ぼした英雄がそれをしたのだとしたら?

あり得ないとは言い切れない。


現にあのライナ・クロムウェルはギフトを共有するギフトを持っていた。


司祭を引き連れていた事から、黒幕は案外一神教の中にいるのかもしれない。

そして、魔王の誕生もまた、英雄と同じだった。


私はそれを知らなかった。


だが、ある時意図せずしてそれを知る事となり、それは私を魔王に仕立てたがる奴等の思惑に差し出す事となる。


火は静かに燃え始めていた。





ライナとの出会いから既に6月ほど経つ。


あの後すぐに遺跡の中の居住区に引き篭もった。


私はレイジの考えたギフト収集法によって、かなりの数のギフトを手に入れていた。


転生者の現れる場所、時間の特定と、その始末。


センテ遺跡で手に入れた魔導書には転生者の召喚ポイントが載っており、遺跡内には召喚に必要なエネルギーの貯蔵メーターがあった。


自然のエネルギーの蓄積らしく、定期的に転生者を排出しているのは確かなようだったので、カルシャにとっては良い獲物だった。


転生者が生まれるのをレイジが確認する。


カルシャが意識を刈り取り、ギフトを全て奪い取る。


証拠隠滅として殺害する。


実に効率的な作業だった。


エリスはしばらく別行動で、そろそろ修行を終えて帰ってくる頃だ。


私自身もレイジとともに鍛錬した。


生きるための強さが、また少し手に入った。


さて、エリスが戻ってきたらこれからの話をしよう。





「カルシャ姉ー!」


「エリスー!」


「カルシャ姉ーーー!」


「エリスぅ!」


遠くから駆け寄って来たエリスを、カルシャは。


「…くっさ」


抱きとめずに避けた。


「ギャフン!」


ようじょはかべにげきとつした!


ようじょに20のダメージ!


ようじょはめをまわした!


鼻を押さえてエリスが抗議の声を上げる。


「避けないで下さいよぅ。可愛い下僕との再会なんすよ?」


「いや、アンタ凄まじく臭うわよ?そりゃ避けるでしょ」


ボロはさらにボロくなり、裸体が透ける。


泥やら垢やらで小汚い。


そして、頭が臭う。


「そんなに臭うっすかね?」


自身の匂いを嗅ぐが、エリスは気付かないらしい。


どうなってるんだ、あの犬鼻。


すでに壊れているのか?


鼻をつまむ。


「近くにいると鼻がもげるわ」


「事実だとしてもしどい!」


久々のやり取りだった。


久々にやるとちょっと心地よい。


「アンタ今まで水浴びとかどうしてたのよ」


「してなかったっすね、そいえば」


「そりゃ臭い筈だわ」


それを聞いていたレイジが提案する。


「とりあえず水浴びしてきては?もうすぐ食事にしようと思っていたところだから、食事しながら情報共有しよう」


「了解っすー」


パタパタとかけていくエリス。


その背中を見送りながら、しみじみ思う。


「背、少し伸びてたわね」


「妹分の成長に感動した?」


成長?


「まさか」


違うね、あれは劣化だ。


「幼女趣味相手への駒として使えなくなる日も近いなって」


愛玩動物になれないメスのウェアウルフの価値など、戦場にしかない。


「素直じゃないなぁ」


「うっさいわね」


レイジもだいぶ馴れ馴れしくなった。


ニヤニヤすんな。


「戻ったっすよー」


「早っ!?」


「水浴び嫌いなんすよねー、僕」


「まぁいいわ。とりあえず座んなさいよ」


こうしてまた3人が揃い、とりあえず食卓を囲んだ。



後書きウサギ小話

さらなる進化?編



パタパタとかけていくエリス。


その背中を見送りながら、しみじみ思う。


「背、少し伸びてたわね」


「妹分の成長に感動した?」


成長?


違うね、あれは劣化だ。


「まさか」


「そもそもない胸がさらに抉れてたじゃない。劣化よ、劣化」


しどい!


完!

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