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14.最弱ウサギさん、駆け引きする

「まずはお話に応じてくれてありがとう。こちらの自己紹介からさせて貰うわね」


ライナは宿屋の応接室を借りていた。


通された応接室にて、ライナの後ろに控える3人のうちの一人が口を開く。


「では私から」


長身の青白いローブの男だ。


「私はエスト。司祭エスト・フラメと申します」


一神教の手先か。


道理で胡散臭い奴だ。


続いてミスリルメイルの青年。


「ボクはリクス・オランジュ。護衛騎士だよ」


こちらは物腰こそ柔らかいが、身のこなし、気配は肉食獣の様。


荒削りだが、強い。


そんな雰囲気だ。


残るはエリスと同じくらいの根暗そうな女。


「…レメル・グレイズル。書記官」


分厚い革装丁の本を携えた、低いトーン。


印象深い仄暗い瞳をしている。


3人の従者の名乗りが終わると、改めてライナが喋る。


「そして私がライナ。恥ずかしながら、勇者と呼ばれているわ」


ライナはこちらにも名乗るように促す。


「改めて、ルシャーリア・ルークスよ。ただの傭兵。で、こっちは私の奴隷」


「エリスっす!」


奴隷も紹介すべきか少し悩んだが、視線が向いたので名乗らせた。


余計な事は喋るなよ、お花畑頭よ。


「ちょっと煩い奴だけど気にしないで」


続けてレイジも自己紹介。


「橘レイジ。同じく傭兵」


そこまで聞いて、ライナは切り出した。


「自己紹介も終わった所で、本題に入らせてもらうわね」


ソファで足を組む。


「私はモンスターを狩る合間にギフトの情報を集めているの」


ライナは従者の一人に指図する。


「…今までの記録」


書記官レメルが本を開くと、ライナが今まで集めたギフトの情報がまとめられている。


カルシャがいつも見ている粘土板と同じようにグループ分けもされており、ギフトの全体図を見ているのはカルシャだけで無い事が理解できた。


「まずは、貴女たちのギフトを教えてほしい」


「何故?」


「どんなギフトに遭っても狼狽えない様によ。情報は多い方が良いわ」


物怖じしない奴だ。


やりにくい。


「勇者なのに臆病なのね」


「人を助ける前に自分が死ぬ訳に行かないからね」


同じ死なないようにという行動でも、芯は大きく違った。


ここで出し惜しみしても、この勇者は既に情報を掴んでいそうな気がする。


言わなければ話も先に進まないだろう。


「《尖焔の射手(ブレイズアーチ)》と《竜殺しの偽魔剣(バルムンク・レプリカ)》よ」


商人たちに見られた2つのギフトを教える。


「2つだけ?」


「そうよ」


ライナは微笑む。


「位階4と位階5。随分運が良いみたいね」


やはりギフトの序列を理解しているらしい。


その並びと名前が瞬時に出てくる辺り、カルシャ以上にギフトの情報があるのだろう。


「何が言いたいのよ」


ライナは足を組み替えた。


「実は、私たちとあるモンスターの情報を得たの」


そして、鋭くなった視線がカルシャを射抜く。


「ギフトを奪うモンスター」


カルシャの瞳の奥を覗きこみ、真意を探る視線。



「悪夢の狩人、カルシャ・グリム」



動揺を、見せてはいけない。


「まどろっこしいのは嫌いだから、直球で聞くわ」


話術にも長けている。


プレッシャーが重い。


「貴女は一体何者なの?」


慎重に。


焦るな。


肉食獣から逃げるには、身を潜めて気配を消せ。


「私は私よ。ルシャーリア・ルークスだと言ったでしょう」


「互助会で調べたら、ルシャーリアは戦闘には向かない弱い傭兵だという評価だったわ。貴女は本当にルシャーリアなの?」


間髪入れずに反論するライナ。


勝ちを確信しているかのような態度に苛立ちが募る。


しかし、尻尾をだしてやる訳にはいかない。


「彼女と僕は昔からの知り合いですが、彼女がモンスターだとでも?」


レイジの助け舟も聞かず、ライナはカルシャに提案する。


「その疑いを晴らすのに、協力してくれない?」


「いいわよ。何をするの?」


平静を保て。


どうせ何も分かりやしない。


そんな予測は、次の言葉で打ち砕かれる。



「私とギフトの共有をしてもらう」



「へぇ。そんな事が可能なのね」


ギフトを増やすギフトだったか。


やはり無数のギフトは、カルシャと同じようなギフトを持つが故だった。


ライナは情報を開示する。


「私のギフト《聖女の響鳴(ユニゾンシフト)》は、ギフトを複写する」


その程度の事では優位は変わらないとばかりに。


「但し、一人に付き一つまでだけどね」


カルシャは要約する。


「そのギフトで私のギフトを複写して、違うギフトが出たらモンスター扱いって訳ね」


「よく判ってるじゃない」


まだるっこしい事が嫌いという割に、モノをはっきり言わない奴だ。


天敵である上に、性格も嫌いだ。


仕方ない。


覚悟を決める。


ダメなら逃げる。


逃げ切って、生き延びてやる。


「さっさと始めなさいよ」


挑発的に言うと、ライナは嗜虐的な笑みで返してくる。


「言われなくても」


ライナは掌をカルシャに向ける。



「行くわよ、《聖女の響鳴(ユニゾンシフト)》」



音もなく、感覚も変化なく。


その辺はきっとカルシャの呪いと同じなのだろう。


結果を問いかける。


「で、どうなのよ?」


「…《尖焔の射手(ブレイズアーチ)》よ。残念ながら、ね」


「それは良かった」


まるでモンスターである事を確信しているかのような物言いだ。


だが、問答無用で襲ってこない辺り、確証はやはり無いのだろう。


これでこの場は切り抜けられる。


「私たち、そろそろ行ってもいいかしら」


「ええ、どうぞ」


針のむしろだった場から、ようやく退避だ。


席を立つ。


「それじゃ、人助け頑張って」


「今度は戦場で会いましょう、ルシャーリア」


それは敵としてか?


二度と会いたくない相手だ。



後書きウサギ小話

え、なんて?編



「私のギフト《聖女の響鳴(ユニゾンシフト)》は、ギフトを複写する」


「え、今なんて?」


「ゆ、ユニゾンシフト、だけど・・・」


「すごく、懐かしい会社名だ」


完!



作者はブロッサムが好き。


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