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4−14.最弱ウサギさん、軍備を整える

尖鉄都市グリムソルガ。


奴隷長ニーフェ・ラムナムの手記より抜粋ーーー


我が魔王、アーデカルシャ・グリムレクス様について。


アーデカルシャ様は地底から戻られてから、別人のような心をお持ちになっているようでした。


ギフトだけでなく魔術もお使いになれるようになったともお聞きしましたので、おそらくは地底で重大なーそれこそ、精神性が大きく変化してしまうようなー出来事があったのでしょう。


私の忠誠心が揺らぐ事はございません。


臣下を想う心根はお変わりないという点について、疑いはないのです。


ただ、アーデカルシャ様はやはり魔物の王。


感性はやはり魔物のものでございます。


死者を用いた改造、とりわけ転生者という人間のカタチを異形に変えてしまう結果は、普通の人間には禁忌として映る事でしょう。


臣下の死を無為にしないというお心は理解できます。


人間としての忌避を理解するが故に、希望者のみを改造した事もわかっております。


しかし、私は一抹の不安を拭い去る事ができません。


相良リョウ様のお姿を目にした時、真っ先に感じたのは恐怖でございます。


理性ではリョウ様が何らお変わりないとわかっていても、本能的な魔物(ほしょくしゃ)への恐怖は拭えませんでした。


ウェアウルフだった方々に関しても同じでございます。


強く、猛々しい戦士でも、わずかに恐怖があります。


カルシャ様への信仰の厚さを自負する私でさえ、そのような状態なのです。


身近であるリョウ様の変化に、戸惑う子供たちもいます。


一神教の襲撃で死者が出て、生き残った者たちも様変わりしてしまい、不安定になっています。


我が魔王、アーデカルシャ様。


願わくば、私めらに心の平穏をお与え下さい。


願わくば、争いなき平和を、お与え下さい。





シルカルト霊峰、麓。


ジラムの滞在するロッジにて。


「中々いい出来じゃない、ジラム」


レイジを引き連れたカルシャは、ジラムの成果物を吟味していた。


見ているのは、ジラムが良い出来だと判断した数点。


「どうにかまともに扱えるモノになってきましたよ、ギフトも、成果物もね」


メイス、ロングボウ、スピア、ハルバードにタワーシールド。


魔王の御旗を参照して造られた武具は、全て鉱石と金属でできており、先日作った大鎌と遜色ないように見える。


見た目は合格だが、中身はどうか。


「私の武器を貸し与えただけの価値があるのか、確認してちょうだい」


カルシャの指示で、レイジがメイスを取り上げる。


長柄の両手持ちメイスは無骨かつ装飾の少ない造りだが、唯一先端にヴォーパルラビットの意匠が据えられている。


天を突く一角で敵を貫くことも出来そうだ。


「ギフトは宿っていないけど……」


レイジのギフト透かしではギフトは無いという判断だが、お鎧掛けの失敗作を叩くと四散した。


「ーーーー使い勝手は悪くないね」


同質の防具を粉砕するあたり、やはり出来はよさそうだ。


カルシャの眼には、武器に宿る魔力も視える。


その判断は間違いないだろう。


であれば、問題は数だ。


「それで?これは量産できるのかしら?」


今のジラムは、どれくらいこの品質の武具を造れるのか。


「1日あたりの限界を考えると、10日もあれば武器も防具も揃いますね」


10日程度で準備できるのなら上々。


「上出来よ」


改造した臣下たちは今までの武具を使えない。


武器防具を揃えなければならなかったが、図体のデカいモンスター用を作れるような鍛冶を見つける必要があった。


それもジラムが生産できるのなら問題解決だ。


「それじゃ改めてギフトの詳細を詳しく聞かせてもらおうかしら。レイジは今ある分を都市に運ばせておいて」


レイジに指示をだし、ジラムのギフトについて問いただす。


この数日間でジラムが理解したギフトの内容について整理し、カルシャは己の直感が正しかったことに満足した。


湖月複製(イマジナリコピー)》。


このギフトは、見たことのあるものに近しいが、異質なものを構築する生産系ギフトだ。


一日に構築限界があり、寝たらその分回復する。


ゼロからの創造ではないので、素材は用意する必要がある。


構築物の品質は、異質とはいえ複製のため、参照元に準拠し、サイズは原料の物量に比例する。


構造を理解しているものであれば、参照元のイメージと重ねる事で複製先を近づけることができるが、複雑なものや構造を理解していないものを作ることはできない。


なんというか、やはり一癖あるギフトではあったが、カルシャの見立てどおり有能なギフトに入るだろう。


これに関しては、カルシャがギフトを奪って生産するより、ジラムのように武器や防具の知識について多少なりとも蓄積のある者の方が向いている。


それに、全てをカルシャが行うのは不可能だ。


ジラムには鍛冶師として尽くしてもらう。


一神教に挑むには、それでもまだ足りないくらいだろう。


カルシャはジラムの処遇について考えながら、一神教攻略について思案を巡らせていた。


(私のモノを奪った報いは、必ず受けてもらうわよ……)



後書きウサギ小話

輝く魔王像、編



「ジラム、これは何?」


「え、もちろんカルシャ様ですよ?」


「いや、さも当たり前のようにたくさん並んでるんだけど?」


「いやぁ、ギフトの性能を確かめるのに色々作ったんですが、これらは出来が良くて再利用するのが勿体なくて」


「なぜか異様に再現度が高いわね…」


「え?!・・・えぇ、まぁ(畏怖の心が変質したものだなんて、言えないっ!)」


滝汗ジラム!


完!


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