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4−13.最弱ウサギさん、再編成する

尖鉄都市グリムソルガにおける、魔王軍の再構築は滞りなく進んだ。


魔王の臣下たちは仲間の死を悼み、主の所業を見守った。


結果として、総数59の魔王軍は、その数に見合わないほどの強力な集団となった。


魔王アーデカルシャ・グリムレクス。


幹部に橘レイジ、エリス・レッサカルシャ、ツワブキ・ヤサカ、グレイン・ソルガ、剣崎エイリ、ヴィヴィアンとモルガナ。


食客として、元・聖女ライナ・クロムウェルに、勇者アーロ・イヴ・レガリス。


その他、先の戦闘で非戦闘員たちを守り抜いた相良リョウとジラム・プライド、生き残った転生者5人、ケイオスビースト3体、ウェアウルフ13人。


非戦闘員は、ニーフェ・ラムナムだけが大人で、残りは22人の人間の子供と6人のウェアウルフの子供。


この内、半分が魔王の改造を受け入れた。


橘レイジ。


特別司祭ジノス配下の処刑配達人(ドラゴンギフター)を取り込んで、ただの転生者からテラードラグーンへ。


取り込んだドラゴンの特性を得て、外見の変化のほかに多少の不死性、翼膜による飛翔能力、毒腺、火炎ブレスを手に入れた。


グレイン・ソルガ。


悪魔の外皮を纏った竜骨の騎士ナイトハウンドとして十分に強かったが、今回さらに聖者像と地虫の因子をとりこんだ。


破砕する機動砦ジャガーノート。そのように名付けられた新しい兵長は、今や黒外皮の上に堅固な棘鎧を重ね、身体も大きくなった。


ジラムを除く転生者6人。


聖者像と地虫の因子を受け入れた彼らは、それぞれの個性と因子の偏りによって、ケイオスアーマー、タイラントアーマーに分化した。


ケイオスアーマーは主としてギフトを連発する魔術師タイプ、タイラントアーマーは主として白兵戦を得意とする戦士タイプで、いずれも耐久性と防御力に長ける変身型である。


ケイオスビースト3体。


死したケイオスビーストを取り込んで、さらにその特徴を色濃くし、ケイオスブリンガーに変化した。身体はウェアウルフの2.5倍。頭の二本角は長く伸び、背中の毒棘は毛皮全体に拡がる。体表の青黒い竜鱗と硬化した毛皮は硬度を増し、手足の爪にも毒腺が増えた。竜鱗の一部が歪んだ鎧となり、堅固さが増し、尻尾の竜剣尾はさらに鋭くなった。


ウェアウルフ13人。


死した同胞を取り込んで、テラーキマイラに変化した。

わずかに不死属性を帯び、本来致死性の傷を受けても、魔力が尽きない範囲において再生する。背中側に取り込んだ死者の頭があり、肩口からは死者の腕が生えるなど、異形化したが、精神性は変わらす、カルシャへの忠誠心は高いまま。


エリスやエイリは改造済み、ツワブキと妖精姉妹、ジラムは改造を辞退し、ニーフェら非戦闘員たちは対象外だ。


改造を受けた者たちは、それぞれ新しい身体に慣れるために鍛錬を行い、その能力を使いこなしつつある。


ここまで10日間ほど。


カルシャは捕食した僧兵たちのエネルギーをほとんど使い切り、壮大な改造を無事に完了したのだった。





シルカルト霊峰、麓。


霊峰の鉱石を採掘できる最低限の標高に設けられたロッジにて。


「ーーーーーー」


転生者ジラムは唸っていた。


数日間のギフト研究で、いくつか判明したことがある。


湖月複製(イマジナリコピー)


このギフトは、やはり参照したものとは違うモノを複製するギフトだった。


コピー元とは違う、しかし、ある一部の意味においては同じモノの複製。


例えば、このミスリルの鎌。


これは魔王の御旗、つまり槍を対象として複製した結果だ。


これまでの結果から推測するに、これは棒状である武器である点が共通しており、槍と鎌という種別の違いが変質点だと思われる。


仮説を考え、複製を試し、条件を確認する。


それには時間が必要だった。


今更ながら、ジラムは己に与えられたギフトについて、あまりに無知であったことを痛感していた。


使えないギフトだと決めつけていたために、回数制限があることすら知らず、変質の条件もギフトの上限もよくわからないままなのだ。


わかっているのは、最大で1日5回しか複製することが出来なかったということ。


複雑なものを複製した時ほど回数が減ったことから、回数制限というよりキャパシティがなくなるような感じだと思われるが、真偽はいまだ不明。


変質の条件に関しては、複製だということを意識するとある程度コントロールできるようになってきていた。


コピー元の条件を意識し、それがなんなのかを自身の中で決めておく。剣なら切るのか突くのか、防具ならどこを守るものなのかなど、はっきりさせた時の方が、結果は良好だった。


コピー結果についても、元の条件に対してどこを変質させるのか意識し、どういうものが出来上がるのかを意識すると、ある程度複製したいものができるようになった。


この数日間、ジラムは霊峰の結晶と鉱石を使って、ギフト実験を繰り返しており、ロッジの中には数々の武器と防具が転がっている。


ギフトそのものも憂鬱の種だが、ジラムの唸り声の原因はどちらかというとそれらの武器防具だ。


「これが実用的なのかなんて、わかったものじゃない……」

これらは人間が使うには大きすぎる。


材料は毎日タイラントアーマーと化した転生者が採掘してくるため、日に日に数が増えている。


ジラムが材料を使い回さずギフト研究をしているのは、ジラムに与えられたカルシャの命令のせいである。


「俺にケイオスビーストたちの改造後の装備を作れとか、あの魔王やっぱりめちゃくちゃだな……」


作った本人としてはそれなりの出来だとは思うが、はたして魔王のお眼鏡にかなうものなのか。


それを考えると胃がきりきりする。


それを解消するには、ギフトを把握し、質の良いものを作るしかないのだが、それも遅々として進まない。


結果として、ジラムはジリジリと焦りながら唸るしかないのである。


「あー、クソ……もう一回だ」


今日も霊峰では採掘と複製が進んでいく。



後書きウサギ小話

ナチュラルストレッサー、編



ジラム「あーでもねー、こーでもねー(¯―¯٥)ブツブツ」


カルシャ「どうしたのよ、そんな辛気臭い顔して(・∀・)」


ジ「主に貴方の無茶振りのせいなんですが?!Σ(゜Д゜)」


カ「はぁ?私は魔王、アンタは配下、当然でしょ?(・言・)」


ジ「(なんも言えねぇ!?)Σ(゜Д゜;)」


不幸体質ジラム君!


完!

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