3−23.魔王御一行さま、神の獣と戦う
雷光刈牛。
純白の毛皮を持つ雄牛のモンスターであり、その特徴は純白の毛皮を纏う事と、背中に備わる神の武器である。
神の武器。
かつて地上にもごく少数だけ存在したとされる秘宝。
雄牛に備わるのは、アダマスと呼ばれる凄まじく硬い金属でできた複層式の鎌である。
これはこの雄牛に与えられた最高の武器であり、壊されることもなく、刃零れもなく、敵対するものを尽く切り刻むとされる。
それだけでもこの雄牛は十二分に強いが、他にも武器を備えている。
それは名前にも冠する雷である。
角から放つ雷は、自然のものの数十倍の威力を持つ。
グレインの宝剣、もしくは魔眼のおよそ100倍。
並の存在など、塵すら残らないだろう。
また、雄牛には武器だけではなく、防具も備わっていた。
獣としての皮革の強靭さはさることながら、骨格に刻まれたギフトの力により、精神汚染の力場を纏う。
それは恐怖を増幅し、敵対者の行動を阻害する。
足を止めれば刻まれ、腕が鈍れば貫かれるそのギフト。
結果として恐怖の鎧は、この神威の獣を不敗の存在へと押し上げる。
この獣が産まれてから今まで、この獣は敗北を知らない。
挑戦する者が少ない上に、大概の者は恐怖に囚われて動きが鈍った瞬間に切り刻まれ、塵に消えてきたからだ。
故に、獣は考えた。
“今回もまた、同じ結果が待っている”
何度目の目覚めかも忘れ、何度目の侵入者かも数えるのを止めたが、今回も処理を終わらせるだけだ。
脚を折って腹ばいになっていたのを止め、立ち上がる。
今回は4体。
いずれも矮小なる人間。
創造主アデルカに遠く及ばない、無垢なる楽園の仔。
システムによって導かれた人形もいるようだ。
しかし、結果は同じだろう。
今までもこれからも。
獣はアダマスの鎌を展開すると、それを無造作に振り下ろす。
今までのおおよそ半分は、この刃を躱す事が出来ずに死んだ。
鋭さもそうだが、鎌の動きはかなりの速度であり、初見殺しの類でもあるためだ。
さて、今回はどうか。
勢い余って床を貫いた鎌。
土埃が舞う中で、侵入者はまだ健在だった。
ふむ…。
上手く避けたらしい。
散開して武器を構え、迫ってくる。
ではもう一度。
振り下ろす。
今度は複数の刃を放つ。
またもや回避。
一人も欠けていない。
では更にもう一度。
今度は連続で振り下ろす。
侵入者から見れば、槍襖のように見えたかもしれない。
が、これもまた避けた。
今回の侵入者たちはよくやるようだ。
では雷を試そうか。
かぶりを振れば、角が鳴る。
バチバチという音を伴って、光と電荷が迸る。
枝分かれする白い暴力の群れは、すぐに目標を射抜くだろう。
これを掻い潜った者は、今まででも数少ない。
魔王や勇者と名乗った者たちくらいである。
だが、獣はその者たちも無傷で消し去った。
今回もそうなる。
雷を凌いだようだが、いずれそれも終わる。
獣にとって全ては児戯のようなもの。
アダマスの鎌、そして雷。
最強の武器の両方を同時に、連続で。
尽きることのない暴威の嵐を振る舞う。
雷光に鎌が散らす火花、轟音と舞い上がる土埃。
神殿は一部を除いて鎌と同じ素材で造られているので破壊の心配はなく、獣は無慈悲で少々機械的かつ、数少ない娯楽にも似た迎撃を思うままに続ける。
ここまで保つのは久々だ。
かつて魔王や勇者なる存在が来た以来だろう。
いつまで保つか数えてみようか。
それとも限界まで速度や手数を上げてみようか。
これは戦闘ではなく、ただの作業。
この身に傷跡はなく、侵入者の攻撃は意味もない。
ただ創造主の命を守るという結果だけがそこにある。
…その筈だった。
「ーーーーーーー《砕けぬ神剣》」
その瞬間、侵入者の一人に放ったアダマスの鎌に皴が走る。
?!
アダマスの鎌に皴、だと?
獣がそう考えたその瞬間にも皴は広がり、終いには鎌のうちの一つが砕け散る。
そして砕け散ったその時、獣の身体にも異変が起きた。
「ゴゴオオオオォォォォオ!?」
獣の脇腹部分。
滑らかでしなやかで、いかなる刃すら通さぬ皮が、ぱっくりと裂けたのだ。
それだけではなく、裂けた部分から血と肉が噴出する。
それには内臓も一部含まれており、獣は初めて痛みを知った。
そして、その時初めて侵入者を明確に認識する。
ソレは不敵に嘲っていた。
獣は直感した。
コイツにはアダマスの鎌は使ってはいけない。
鎌の破壊は明確に行われ、コイツはそれを何度でも行う。
であれば主体は雷へ。
他の3体には鎌を使うが、アイツには雷を集中的に放つ。
初めての痛みに、初めての自動回復。
今まで獣に傷を付けたものはおらず、回復ギフトの使用も初めてだった。
だが、生命の危機を感じる事はない。
獣は負けることなど微塵も考えていない。
最大限の雷撃で敵を滅ぼす。
苛烈に振る舞われる神鳴と衝撃。
これは獣にとって最善策だった。
そしてそれは実際には、獣にとって悪手だった。
「ーーーーー《暴虐の嵐》」
閃光に乗じて、獣の頭部を撃ち抜く隙を与えてしまったから。
雷光を超える神速。
それは全ての電荷を追い抜いて、振り切って、獣に到達した。
獣自身の視界までもを奪う雷を避け、侵入者は獣の眉間を貫いたのだ。
獣の意識は、迫り来る風杭の尖端、そして禍々しい笑みを網膜に焼き付けて唐突に終幕したのだった。
後書きウサギ小話
バランス皆無・・・?編
「さて、アイツの攻略法考えるわよ!」
「そんなもの、死ぬまで斬れば死ぬでしょ」
↑殴りメイジ的
「ギフトで切り刻めばいいんですよね、お姉さま?」
↑バーサーク侍
「牛だし齧り付けば美味しくて一石二鳥っすね!」
↑INT皆無系バーサーカー
「コイツら役に立たねぇ!?」
↑AGI特化系青魔
前に進んで自滅するパーティ構成!
完!




