3−21.鋼の勇者さん、妖精姉妹に言い寄る
尖鉄都市グリムソルガ。
魔王不在の御所には今、御前会議と同じ面子が揃っていた。
ツワブキ、レイジ、グレイン、ニーフェ、それから妖精姉妹。
そして、もう一人。
「ーーーーーー」
緊迫する空気。
誰も言葉を発してはいけない雰囲気。
特にグレインはひしひしと感じていたであろう威圧感。
鋼の勇者アーロ・イヴ・レガリスが、以前ライナが訪れた時と同じ席について腕を組んでいるのだから、誰も不用意に言葉を発したりはしないだろう。
この状況を招いた本人、ツワブキ以外は。
「さて、こうして御所にご足労頂いてはもらったものの、今は我らの主、魔王アーデカルシャ殿は不在でござる」
「構わん。闇雲に走るより情報を得る方が有意義だからな」
この世界で目当てのモンスターを探すよりは、グリムソルガの面々に情報を聞くほうが有意義だと判断したらしい。
「そう言って貰えるのは有り難いが、小生らにはこの間話した程度しか情報はないでござるよ?」
前置きとしてツワブキはこう言ったが、アーロは既に質問する相手を決めていた。
「いや、あるだろう。そいつ等は知っている筈だ」
アゴで示すのは、妖精姉妹だった。
「無礼な人間だわ、ね、ヴィヴィアン?」
「しかもコレ、ただの人間じゃないわね、モルガナ」
言い合う双子はアーロの態度に非協力的な雰囲気だった。
だが、アーロはそれを気に留める様子もない。
「フン、やはり知っているじゃないか」
それどころか、妖精たちから力づくでも聞き出すつもりなのか、鋭い眼力が害意をはらむ。
それを見て、妖精姉妹は心底軽蔑するように言い捨てた。
「異端の魔王、その系譜が偉そうに」
「異貌の魔王殺し、その血は争えないようね」
異端、異貌。
魔王の系譜、その血。
それはおおよそ勇者と呼ばれる者にはそぐわない言葉である。
「何とでも言え」
それを否定しないアーロにはそれがあると言う事であり、ヴィヴィアンとモルガナはアーロの正体について殆ど確信がある。
「ヴィヴィアン殿、モルガナ殿、ここは抑えて下され」
ツワブキに諌められてなお消えぬ嫌悪。
滲み出る気配は間違えようも無い。
だが、姉妹は妖精であり女王でもある。
「…ツワブキに免じて話を聞いてあげるわ、ね、ヴィヴィアン?」
「不本意だけど仕方なし、ね、モルガナ」
個人的な感情は押し留め、姉妹は聞く姿勢を正す。
「「我らコルナ・ラケシスに、何を問う?」」
仰々しく、隔てて突き放す物言い。
その言葉に、アーロは鼻白んだ。
「…貴様らはイヴレイン・レガリアについて、何処まで何を知っている?」
異貌の魔王。
開闢の星。
かつてこの地を蹂躙した異端の魔王。
「役目を与えられて幾星霜」
「星が落ち、蔓延り、消えるまで全て」
妖精たちは、その暴虐たる在り方を、現れてから封じられるまで、全て見てきた。
妖精は人より遥かに長命で、不死種と変わらぬ時を生きる。
異貌の魔王を、ヴィヴィアンとモルガナは直接見たことがあった。
「ならば奴が何処にいるか知っているか」
そして、ソレが封印される過程も結果も、今何処に封じられているかも知っていた。
「異貌の魔王は静謐なる聖櫃の中」
「十の魔王、十の勇者の魂無くしては開かない」
一神教教典では語られない事実も。
秘すべき場所に納められた聖櫃。
解き放ってはならない存在として封じられ、イヴレインは十人の勇者によって縛られ、十人の魔王によって力を奪われた。
魔王も勇者も弱体化したのは、魔王イヴレインのせいだ。
枠外から現れた異端によって、円環は乱された。
力は失われ、アデルカの楽園は堕ちたのだ。
「聖櫃は何処だ」
聖櫃の場所は、妖精から教える事はできない。
「聖櫃は不可侵」
「聖櫃は不可逆」
そういう盟約だからだ。
妖精は協力しない代わりに、伝達を定められた。
資格を持たぬ者には、秘匿された情報は開示できない。
「はぐらかすな」
それに、仮に資格があったとて、この男には教えたくない。
それが妖精姉妹の本音だが、それを表にすることはない。
「その血では辿り着けない」
「聖櫃は触れるものを選別する」
どの道触れることすら叶わない。
「…フン。よほどこの身体に流れる血が嫌いらしい」
アーロは妖精たちがこれ以上口を割らないと判断した。
「好き嫌いで言えば嫌いよね、ヴィヴィアン?」
「今すぐ切り刻んで焼却したいところよね、モルガナ?」
問答も終わったと感じてか、妖精たちも普段の口調に戻る。
アーロの方も必要な事は聞き終えたと判断したようだ。
「良いだろう。では、お前たちの主を待つとしよう」
後書きウサギ小話
し か く ?編
ツワブキ、レイジ、グレイン、ニーフェ、それから妖精姉妹。
そして、もう一人。
「ーーーーーー」
緊迫する空気。
誰も言葉を発してはいけない雰囲気。
特にグレインはひしひしと感じていたであろう威圧感。
そんな中で、勇者アーロは。
「(●´ϖ`●)」
変顔を決めた。
ブッ!




