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3−20.魔王御一行さま、タルタロスの洗礼を受ける

石柱の森を抜ける。


一気に開けた空間に出ると、眼下には樹海。


見た事もない植物が繁茂し、飛び立つ鳥も知らない。


樹海のあちこちから石柱がそびえ立ち、逆さまに流れる滝がある。


「ここが、タルタロスーーーー」


完全なる未知の世界。


世界の理こそ似通っているかもしれないが、ここは地続きの異世界だ。


ここでは魔王であろうとも、勇者であろうとも、等しく力のみで計られる。


席の限られた楽園。


カルシャたちは、ようやくその端にたどり着いたのだ。


「情報通りだわ。あとは地図と同じ場所を見つけて、アデルカの墓所を探せばいい」


岩場から見下ろすタルタロスは広い。


今の場所からなら見渡せる一望も、下に降りれば樹海の迷宮だろう。


「そう簡単に言いますけど、目印とかはあるんです?」


エイリちゃんの疑問ももっともだった。


「石柱の位置関係を見るしかないわね」


ライナは悪びれない。


「他にはなんか無いんすか?」


「無いわ」


基本的に慎重派であるカルシャからしてみれば、あり得ない突撃っぷりだった。


「アンタ、なかなか無策じゃない…」


コイツの提案に乗ったの、間違いだったかしら。


だが、不安と呆れを抱くカルシャに対して、ライナは不敵に笑う。


「タルタロスに潜るのだって、ダメで元々なんだもの。これくらい気合で探すわよ」


「…アンタって案外脳筋なのね」


思っていたよりガンガンいくタイプだった。


いや、そもそも即時炎上系聖女なのはよく知っていたが。


「気合、根性、反骨精神。私はそういう人間よ?ま、今はもう人間とは言えないかも知れないけど」


コイツも一神教の手先だったわけで、今カルシャが見ている方が地ということなのだろう。


しかし手詰まり感はある。


そんな折、ようやく普段煩い奴が口を開いた。


「呼ばれて飛び出てゲッコウさーーー」


いや、口はないか。


「それはもう良いわ。何?」


途中で遮ると、ちょっとむくれた風にゲッコウは答える。


「…魔術師アデルカの墓所を探すんやろ?なら、魔力を辿ってみたらええんちゃうかな」


魔力、ね。


まずはその理由から聞きましょうか。


「魔術師アデルカともあろう者が、身体一つで墓には入らんやろ?」


まぁ、世界の創造主なくらいだから、自身の墓に何も置かないと言う事はないだろう。


…いや、ないか?


んー、異文化なのでなんとも言えない気もするが、つまりゲッコウが言いたいのはこういう事だろう。


「つまり副葬品があるって言いたい訳?」


「せや。で、遺体や副葬品には濃いィ魔力が纏わりつく」


魔力がなんなのかは知らないけど、そういうものらしい。


「だから魔力を追えって訳ね」


確かに魔力が濃いのなら、探知さえできれば探せるかも知れないけど。


「肝心な魔力探知役は誰がやんのよ」


そもそも探知できるの、エリスがなんとなく感じるのが限界なんじゃないの?


「儂が逐一見てもええし、エリスちゃんは多分やけどわかるんちゃう?」


アンタ自身はわかるのね…。


それなら、エリスは道中はっしり感じるようになってくれれば御の字かな?


「なんとなく濃い薄いは感じる気がするっすけど、そんなにはっきりはわかんないっすよ…?」


ちょっと不安そう。


おだてりゃやる気は出そうだけど、それじゃ解決しないわよね、きっと。


んー。


まぁ、でも。


「どちらにせよ地図の場所を見つけるべきね」


まずは確実なものから試すべきだろう。


そう思って、岩場から一歩を踏み出す。


その瞬間。


「ケエエエェェェェェ!」


ほとんど垂直に立つ岩場を駆ける襲撃者が現れる。


岩肌を鋭い爪で掴み、身体を落下させる事なく走るソレは、重力に逆らうように弧を描きながら迫ってくる。


「アレってコカトリス?!」


エリスが驚くその正体。


鋭い嘴、短い羽、隆々とした筋肉に蛇の尾、そして石化の魔眼。


魔鳥コカトリス。


竜ではないが、群れなせば小型の都市程度は軽く滅ぼすと言われる脅威だ。


それが4羽、フォーメーションを組んで接近。


だが、魔鳥の相手はただの転生者などではなく、魔王である。


「焼き鳥にしてくれる!《業火の射手(ブラスト・アーチ)》」


カルシャの先手、魔王の炎が放たれる。


轟音を伴って空を裂く炎の一閃。


先頭を走る1羽をローストして撃墜すると、コカトリスたちは即座に散開、別々にカルシャを狙う。


「アンタたち、手伝いなさい!」


眼下には岩の台地。


魔眼がある以上、洞窟じゃ分が悪い。


立体軌道も厄介だし、足場の広い方に移らなきゃダメだ。


決断するやいなや、カルシャは勢いつけて岩を蹴った。


「ついて来い!バカ鳥どもめ!」


罵倒ついでの跳躍。


ウサギらしく長距離ジャンプだ。


タイミングさえ違えば、風が気持ちいいとさえ感じる絶景。


華麗に着地を決めると。


「さぁ来い!」


槍を構えて待ち受ける。


派手な陽動でターゲットは引き受けた。


走る鳥の背後で岩場を蹴る三人を見つつ、カルシャはギフトを開帳。


「ーーー《煌氷牙(プリズム・ライナー)》!」


思い切り横に降る。


槍の穂先が描く軌跡に沿って精製された氷の牙たちが踊りだし、岩肌を駆けるコカトリスを狙う。


広範囲に散らばる欠片がきらきらと乱反射。


当たればラッキー、これは牽制。


回避に時間を取られている間に体制を整える。


「ーーー《悪魔の仕立鎧(ブラックサーコート)》」


悪魔の外皮を纏う。


さぁて、狩りの時間だぞ。


コカトリス相手なら、上位者じゃないから選択肢は無数だ。


「痺れろ!《雷樹の先触れ(サンダーブランチ)》!」


掲げた手のひらから紫電が迸る。


ギフトによって顕れた電撃は枝葉のごとく分かたれ、氷の礫めがけて駆けていく。


ダメージはそれほどだろうが、動きを留めることに意味がある。


なぜなら、カルシャは今、一人で戦っている訳ではない。


「行くっすよぉ!《影縫いの魔眼(シャドウゲイザー)》!」


紫電が作り出すコカトリスたちの影。


それを岩肌に縫い止める魔眼の効果が、影とともにコカトリス本体までもを拘束する。


「《人類敵を屠る聖剣(イーブルブレイカー)》ーーー」


続いてライナが聖女の加護をエイリに与える。


モンスターに対する特効効果。


カルシャもかつて経験したギフトは、エイリの構えるゲッコウに収束する。


「じゃ、やっちゃうよ!《砕骨斬(フレームブレイク)》からのぉー」


「おう!やったれ、やったれ!」


抜刀の構えをとり、ギフトの力が籠もったゲッコウが吠える。


「《神威の辻(ディバインスラッシュ)》ぅ!」


上位者(アークス)系列、第6位。


人を凌駕する斬撃が、空間を隔てて到達する。


すばやく3回。


3つの斬撃は動きの止まったコカトリスの頸部を正確に切り飛ばし、魔物特効と極度の震動が首と頭を粉砕した。


一瞬の硬直。


ギフトによる拘束が消えて、コカトリスだったものは血やら臓物やらを撒き散らしながら、岩肌を転げ落ちていく。


それを眺めるカルシャの元に、3人が集まってきた。


「タルタロスの洗礼かしらね?」


いわゆる手荒い歓迎というやつだな。


「だとしたら、軽い洗礼だったわね」


まぁ、戦闘自体は結果的には楽勝だった。


「わざわざ棲みにくい岩場にいたって事は、コカトリスはきっと此処では最弱の部類になるんですかねぇ?」


エイリちゃんの言うとおり、このコカトリスレベルが最低限の強さのラインなのだとしたらー例えば、石柱の森のドラゴンのようなー凄まじい強者がゴロゴロいてもおかしくはない。


「でしょうね」


そして、その仮定はおおよそ間違っていないだろう。


あのコカトリスたちには、飢えに駆られた様子があった。


地上で見られるような、まるまる太って魔眼を乱射するコカトリスでは無かった。


あれが本来の姿なのだ。


ここが彼らの原点なのだ。


「だから強いって言ったでしょう?」


ライナが笑って言うとおり、このタルタロスには強い者が数多くいるのだろう。


「ホント、魔境ね…」


そして、魔術師アデルカの墓所、その遺産もまた、この広大なタルタロスの何処かにあるのかもしれない。



後書きウサギ小話

不滅の食欲、編



「カルシャ姉、コカトリス拾っておけば良かったっすね」


「なんでよ?」


「え?だって新鮮なお肉ですよ?」


「いや超絶毒入りですけど?!」


「いや、刺激的な味かもしれないじゃないっすかぁ(*Φ﹃ Φ*)ジュルリ」


死んでも死なない食欲魔人!


完!

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