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10.最弱ウサギさん、魔導書なるものを手に入れる

転生とは何か。


転生者に聞く所によると、転生とは一度死んだ者が別の生命として復活する事だという。


だが、異世界でもこの世界でも、死んだらそれで終わりだ。


蘇生するギフトや、転生するギフトも存在しない。


そもそも転生者は、厳密には転生している訳ではなかった。


転生者を語るにはまず、魔王と英雄について語らなければならないだろう。


そう。


例えば、目の前にいる女。


現代に名を轟かせる英雄ライナ・クロムウェルなどは丁度良いかもしれない。


「貴女は一体何者なの?」


但し、問い詰められるような状況で無ければ、だが。





ドラゴンが鎮座していた先、奥の小部屋にて。


「モンスターから自分たちを守るために、転生者を異世界からコピーしてくるなんて、壮大な話よね」


「異世界を観測できる人間がいて、転生者を創り出す技術を確立させたなんて、誰も信じないだろうね」


「僕にはよく解らないっす」


「おバカは黙ってなさい」


大仰な箱の中に、果たして目当てのものは存在した。


遺跡でドラゴンが守っていたのは、確かに書物だった。


しかし、それは決してギフトを授かる書では無い。


「英雄創成魔術、ねぇ…」


オルトグランの魔導書。


ミスリル銀の装丁をされた分厚い本は、そのように銘打たれていた。また、複写された複典の一つである、とも。


魔術という聞き慣れない言葉に、荒唐無稽にも思える内容。


この本によれば、転生者と呼ばれる者たちは人間を模した人工物なのだそうだ。


「この身体が作り物だなんて、信じられないけど」


転生者レイジはそう言うが、転生者が現れる原理としては筋が通る内容である。信じがたい内容ではあるが。


「私だって信じられないけど、現に転生者は現れ続けてる」


転生者は唐突に現れる。


この本によれば、転生者は定期的に造られている。


世界各地に点在する遺跡は、そのための自律起動装置らしい。


神殿は常に異世界を観測し、ギフトに適した異世界人を見つけ、死んだ際にその情報をコピーし、複製する。


転生者の身体は魔術なる未知の技術で形づくられた人形で、コピーした情報とギフトを埋め込んで世界に放出されている。


それが転生者の正体の秘密。


故に転生者がギフトを使えるのは当たり前で、場合によっては複数扱えるのも、そのように造られたからだ。


「人工物とはいえ、機能も中身も人間そのものなら、気付きようがない」


レイジは肩を竦める。


これが人工物だというのか。


やはり、にわかには信じられない。


カルシャがそんな事を考えていると、レイジはニヤリとした。


「これで気兼ねなく転生者を狩れるよ」


まるで、転生者を狩るのに気後れしていたかの様な言い方だ。


「へぇ?本当に人間なら良心が傷んだわけ?」


「まぁ、心は人間だからね。全く思う所が無い訳ではないよ」


本当かどうかは甚だ謎だ。


レイジはすぐに思案顔に戻った。


「しかし、この本のお陰で色々と推測できる」


「色々?」


カルシャには興味が無い事かも知れないけれど、とレイジは前置きした。


「僕には今まで疑問に思う事が多くあった」


「例えば?」


「碁盤の目に整った街道、開発の進まない自然、整い過ぎた街」


この世界では当たり前だし、疑問など無い。


「当たり前じゃないの?」


当然だ。


私はこの世界で生まれた者なのだから。


だが、この異世界人にとっては、そうではないようだ。


「少なくとも、僕は違和感を感じる」


レイジ曰く。


何故まっすぐ碁盤の目に街道を引く?


地理的におかしな町は多く、そこに街がある必然性が見えない。


モンスターに襲われるのに、街道が小ぎれいすぎる。


人工が少ない場所はさておき、大きな街の近くですら森が深い。


言われてみれば、少々作り物めいている。


街は水源の近くや防衛に適した場所にあるべきだし、街道はいつでも綺麗なまま。人材豊富な街でさえ、人間の驚異となるモンスターの生息する森を伐採しない。


「ギフトがあるにしても、疑問は尽きなかった。けれど、この世界自体が作り物なら」


そこから導かれる結論は。


「この本を書いた奴が、この世界を作った?」


言われてみれば、神の恩恵であるギフトが体系化されているのも変だ。


「あくまで推測に過ぎないけどね」


だが、それが何だと言うのか。


「ま、どうでも良い事ね」


カルシャ・グリムは、今まで此処に存在している。


「今ここに生きていて、その事実で何か変わる?」


知る事は、とても面白い。


だが、それは何にも影響しない。


最後に知る事実が少し変わった所で、世界が変わる訳ではないし、変えるつもりもない。


知識欲が原動力であるカルシャにとって、知った事実の価値は二の次だ。


「魔王や英雄じゃあるまいし、知ったところで何かしたりしない。それだけよ」


私は果てを知りたがる小さなウサギ。


それだけよ。


世界になんて、興味はないの。


それが、魔王に関わる等とは、この時カルシャは考えもしなかった。



後書きウサギ小話

世界の真理 編



「少なくとも、僕は違和感を感じる」


「ギフトがあるにしても、疑問は尽きなかった。けれど、この世界自体が作り物なら」


「待つっす!僕にも違和感があったっす!」


「・・・何よ?」


「何故、僕の胸がこんなに平らなのか?絶対に意図して造られたに違いないっす!」


「エリス。それは私が教えてあげるわ」


「それは世界の真理なのよ」


ようじょのしゅくめい!


完!



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