◯◯しないと出られない部屋 ~異世界に創作キャラと転生しました【閑話休題】~
以前診断メーカーでやった時のネタを元に息抜きに書いてみました。
ちなみに今回はちょっとしたゲストキャラがおられます。
異世界に創作キャラと転生しました【閑話休題】~○○しないと出られない部屋〜
「いたたたた…………」
「あ、気づきましたか昶」
目を覚ますと眼の前に銀髪の美少女のどアップがあった。
「あれ……ここ何処?ってか紫電は?あたし達脱出してなかったよね?」
「はい、機体のバードストライクで不時着した所までは覚えているんですがそれから後は………気がついたらここに閉じ込められていました」
どうやら亜耶もまだ目が覚めたばかりらしい。
四方を真っ白な壁に囲まれた部屋にあたし、若桜 昶とあたしの大事な妹同然の銀髪の少女、涼月亜耶の二人はいた。
あたしは名前の通り日本人なのだが不慮の事故で死亡して異世界に転生し冒険者兼傭兵になった。
亜耶は同時期にあたしと同じ異世界に限界した子でこの娘は出自が少々特殊だ。
あたしはとあるうっかり女神のミスで事故にあって死んだのだがお詫びの一つとしてそのうっかり女神があたしの転生した異世界に亜耶を送り込んでくれたのである。
あたしは生前から生粋の二次元、ミリタリー、鉄道オタクでその一環として同人誌を作ってコミケに参加したりしていたのだが亜耶はその同人誌のヒロインだった娘だ。
いわばあたしは亜耶の産みの親という事になる。
その設定は魔法兵で魔法作戦群という特殊部隊の少女兵士という設定で身体能力、とりわけ魔法戦を含めた戦闘能力はかなり高い。
今は異世界のお約束?で冒険者になりひょんな事からその世界の傭兵部隊「アトロポス」の世話になっている。
そしてこの異世界には魔導機兵と呼称される身長18m程のリアルロボット系の機動兵器が存在し、現在あたし達が乗り組んでいる母艦、クロートー級空母型強襲揚陸艦「アトロポス」にも配備されていてそのパイロット兼陸戦隊員としてここ暫くの間過ごしていた。
そしてほんの数時間前の事である。
あたしと亜耶は戦闘で中破しその修理と整備が完了した魔導機兵「紫電」の試験飛行を整備班に頼まれて母艦である「アトロポス」から飛び立ったのだが運悪くバードストライクで飛行ユニットのエンジンを破損し操縦不能になって不時着したというわけだ。
「でも何なんだろうこの部屋、まさかあたし達二人揃って死んだとかじゃないよね」
「不時着そのものには成功しましたからそれはないと思いますが……でも変ですね」
「出入り口とか無いよねここ」
「はい、一通り調べてみましたが隠し扉すら見当たりません……ん?」
亜耶が一瞬怪訝そうな表情をした。
「どうしたの?」
「魔力を感じます……それも強めの」
「変な部屋だもんねえ………そりゃ魔法関係の施設の可能性もあるか」
あたしは壁をぽんぽんと叩いてみたが特に変わった所はない。
ただただ白い壁。
「魔法関連の施設なら魔法を使えば何か反応があるんじゃない?」
「それが全然、昶が目を覚ます前に試しましたがライティングすら一瞬で消えて不発に」
「困ったな………どーしてくれようかしらねこの状況」
「出入り口すら無いですし………あっ」
「どうしたの?」
亜耶が何かに気がついらしくハッとした表情を浮かべた。
「昶、ちょっと静かに」
「?」
「何か話し声みたいなのが聞こえませんか?」
「え?どこから?」
「この壁の向こう側っぽいんですが、ほら」
亜耶に促されて壁に耳をつけるとわずかに話し声らしきものが聞こえる。
どうやら若い男女が話をしているっぽい。
「本当だ、おーい!!」
どんどんと壁を叩いてみる、だがしかし気がついてもらえないらしくその話し声のトーンに変化はない。
「仕方がないか、ちょっと亜耶下がって伏せて。音で気づいて貰えるかちょっと撃ってみるから」
あたしは護身用に持ち歩いているオートマチック拳銃を抜き、壁を貫通して怪我しないように弱装弾を装填すると一発だけ壁に向けて撃った。
乾いた発砲音と共に弾丸は発射されたのだがそれは壁の手前で空中に一瞬だけ静止したと思ったらそのままぽとりと落っこちた。
「え?こんな障壁見たこと無いんだけど」
その時。
唐突にブーッ!とまるでクイズで不正解をした時のような大きな音がした。
『反則行為を確認しました。これよりペナルティーに入ります』
「へ?!?!………ひぎゃあああああああああああ!!!!!!」
「あっ昶?!?!」
まるで駅の自動放送のような感情のない声が流れるとあたしは凄まじい電撃に打たれた。
「ちょ!?昶?!なんかコゲてますけど大丈夫ですか?!」
「………なんとか生きてる」
うっすらと服からぷすぷす煙を上げながら起き上がる。
「………もう!どうなってるのよこの部屋」
『破壊行為によるペナルティーに合わせて退室の条件が変更されました』
「「え?」」
『ペナルティーにより退室条件がこれまでの「一時間何もせずにおとなしくしている」から変更されます』
「…………昶?」
ジト目でこっちを見る亜耶さん。
そう、撃たなければよかったのにと言いたげなジト目。
「ふざけんなああああああああああああああ!!!!」
思わずあたしは見えない部屋の主に向かって絶叫した。
ややあって。
「あれ?隣の部屋の様子がおかしくないですか?」
「何なに?」
亜耶の言葉につられて壁に耳をつけて様子を伺ってみる。
「明らかに会話じゃないですね」
「なんだろう?男の子が笑ってる?」
「笑ってるにしては変じゃないですか?」
「楽しくて笑ってるっていうか尋常じゃない爆笑?いや泣き笑いかな?」
『設定変更完了。退室条件が変更されました』
「「え?」」
あたしと亜耶の目の前にひらひらと紙が落ちてきた。
「何でしょうこれ………ゑゑっ??」
「どうしたのよ、かな使いが変よ亜耶?」
「い、いえなんでもありません」
引きつった表情のまま慌てて紙をポケットにしまう亜耶。
怪しい。あからさまに怪しい。
この娘は完璧超人って言っていいくらい容姿も中身もスペックの高い娘だが嘘や誤魔化しだけはすごく苦手なのだ。ある意味わかりやすいとも言える。
「いいから見せなさい亜耶!」
「い、いえそれは…」
「貸しなさいってばー!」
「あーっ昶、それは!」
何故か全力で拒否する亜耶を強引に捕まえて紙をポケットから没収しそれを読む。
ほほう。
この条件なら問題ない。いやむしろ望むところだ。
「亜耶さん?」
「はっはい」
「なんで、隠したのかな~?」
「え、いやあのそれは」
「そんなに嫌なのかな~?「キスしないと出られない部屋」は~?あたしとキスするの嫌なのかな~?うふふふふふふふ」
「あ、あのちょっと昶」
「ん~?なあに亜耶ちゃん?」
「いやあの昶、眼が座ってますって!!眼が怖いですって!」
「こわがらなくてもいいのよぉ~」
思わず後ずさる亜耶。
手をわしわしにぎにぎさせながら亜耶ににじり寄るあたし。
何しろ亜耶はあたしが欲望全開で同人誌のために創作した、あたし好みの超の付く美少女なのだ。
これを逃す手は無い。
「うふふふふふふふふふふ、諦めなさい亜耶」
「い、いやちょっと待ってください昶、心の準備が」
「あたしはとっくに心の準備できてるわよ~?」
「いえ、昶じゃなくて私の心の準備がー!」
どん。
思わず振り返り真後ろの壁に気がつく亜耶。背中が壁についてほぼ張り付いている状態だ。
「これでもう逃さないからね~♪さあ覚悟しなさい亜耶、ん〜ふっふっふっふ♡」
「ちょ、ちょっと昶、落ち着いて?考え直し………ひゃあああああああ!」
~~~~~しばらくお待ち下さい~~~~~
「うう………当分立ち直れない………」
「はああああああ……やはり美少女とのキスはいいわあ」
「なんで舌まで入れてくるんですか昶ああ………」
「終わった事だし気にしない気にしない、何ならお詫びにまたキスしてあげるから」
「もう結構ですっ!」
ぷい、とそっぽむく亜耶。
うん、可愛い。
ん?隣から声が聞こえないな。
「あれ、隣が静かになってない?」
「………そういえば。向こうも条件をクリアしたんでしょうか」
壁の向こうから微かにチャイムのような短い音が聞こえた。
「どうやらそうらしいわね」
「こっちもそろそろ出られるはずなんですが」
亜耶のセリフを遮るように例の放送らしき声が入った。
『ドアーが開きます、ご注意ください』
「………電車かい」
あたしのツッコミ言葉が終わるのとほぼ同時にピンポン、ピンポン、ピンポンと3回チャイム音がすると壁の一部がプシューと音を立てて開いた。
てかこのドアの開き方完全にJRの209系電車と同じなんだが何故。
「出るよ、亜耶!」
「はいっ!」
また閉じ込められちゃかなわないとさっさと部屋から出るとそこは柔らかな光に包まれた空間だった。
ふと隣室の方をみるとそこにいたらしき二人の男女の後ろ姿が光の中へ歩き、消えて行くのが見えた。
男の子は僅かに焦げ茶がかった黒髪。女の子は亜麻色の髪の小柄な少女のようだった。
多分あの二人がいた元の世界へと戻って行くのだろう。
………尋常じゃない爆笑?をしていたあたり一体どんな退室条件だったのかが気になる所ではあるが。
不意にあたしと亜耶の身体の周囲の空間が淡く輝き始めた。
そして。
あたしと亜耶は不時着した魔導機兵「紫電」のコクピットでお互い同時に目を覚まし、そして細部まで完全に同じ夢を見ていたことに気づき二人揃って頭を抱えて悩んだのである。
拙作「異世界に創作キャラと転生しました」から主人公の昶さんと亜耶さんでちょっと短編を書いてみました。
短編を書いたのは高校生の頃の同人誌以来なので久しぶりに書いていて面白かったです。
ちなみに隣の部屋にいた二人ですがこちらは那周ノン様(某SNSにてよく絡んで頂いております)の作品である呪いの烙印シリーズの「片翼の鳥~出会いと別れの物語~」のヒロ君とビアンカちゃんだったりします。
彼ら二人の「◯◯しないと出られない部屋」ネタの短編がエブリスタさんにありましてそちらと同じ時間軸・世界線の「◯◯しないと出られない部屋」にて昶さんと亜耶さんはニアミスしてしまいました。
ヒロ君とビアンカちゃんの部屋の退室条件が気になる方は是非そちらも。
取り敢えず那周ノン様御本人にはウケてもらえたようで何よりでしたありがとうございますm(_ _)m
………でもこういう作品同士のちょっとしたクロスオーバー、面白いですなあ。
以前某動画サイトにて作ってみた動画の無断転載をされた事がありその自衛措置として下記を決めました。当然、問題視された「漫画村」のような方法も一切駄目です。
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