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05 成長チート?


「し、死ぬかと思った……」


 痛む体に鞭を打ちながら、川岸から上がった俺は、力尽きて地面へ寝転んだ。

 あの犬娘に川へ投げ飛ばされ後、ひどい目にあった。

 濁流に飲み込まれて何度も溺れかけたり。

 激流で何度も岩にぶかったてたんこぶを作ったり。

 ピラニアに似た巨大魚の魔物などに食われかけたり。

 最後には千メートルもあるだろう巨大な滝からパラシュート無しで落ちたり。

 ……なんで俺、どこぞの香港人アクション俳優みたいな名場面(スタント)してるんだろうか。

 耐性スキルのおかげで痛みはないが、HPが結構削られたと思う。

 防御系スキルを使おうにも川の流れが速すぎて使う暇がなかった。

 おかげで何度か三途の川を渡りかけたことか。ってか、異世界でも三途の川がみれるんだな。驚き。


 幸い、自動(オート)で発動する救命系スキルのおかげでギリギリ助かったが、これがなければ水死体になってたかもしれない。



《生存本能》

【生命危機の際、能力値を一時的に上昇】

【生命力を強化し、HP減少を抑える】



 しかし、あの力――グリーンタイガーを倒そうとしたときに急激に力が湧いたあの現象は一体…?

 続に言う覚醒イベント?

 俺らしくなく、なぜか中二病のようなテンションになってしまった。

 思い返したら恥ずかしくなる。この記憶は俺の黒歴史に記しておこう。

 恥ずかしい過去は忘却するのに限る。


 そういえば、グリーンタイガーを倒したんだよなぁ俺。

 だとすれば、俺のレベル上がったのかもしれない。

 状況的に漁夫の利だが、念のためステータスを確認をしてみるか――って、なんじゃこりゃ?

 俺はステータスを見て、驚嘆した。



名前:――

種族:オーク

LV:10→26

HP:4462→728/12060

MP:360→6576

SP:4712(+428)→10045/12307(+2539)

筋力:357→814

耐久:425→1005

敏捷:146→1330

魔力:30→548

知力:110→243

器用:138→236

ユニークスキル:二元論の堕とし子(アップグレード)

スキル:《嗅覚分析》《鋭敏嗅覚》《鋭敏聴覚》《地理》《掘削》《剛力》《不屈》《剛体》《特攻》《生存本能》《体力自慢》《雑食》《飢餓》《痛覚耐性》《淫獣》《自己再生》《悪道》《正道》《自己管理》《人化》《性別固定》《斬撃耐性》《突刺耐性》《威圧》《感知透過》


 なに…このステータスの成長幅は。

 グリーンタイガーを倒してレベルアップしたのならともかく、いっきに十六も上がるのはおかしい。ゲームだと大抵は五レベルくらいなはず。

 魔力値と器用値と知力値に関しては…まだ許そう。数値的に人間の範囲内だ。

 ただし、敏捷値。おまえは別だ。なんで鈍足なオークの癖に無駄に高い。約五キロメートルを数分たらずで走り切るグリーンタイガーと同じ数値だ。高速で動くオーク…イメージできない。

 しかも、スキルが新規で四つ増えてるし。


《斬撃耐性》

【斬撃に対して耐性を得る】


《突刺耐性》

【突刺しに対して耐性を得る】


《威圧》

【対象の気力を削ぎ、硬直化・屈服させる】


《感知透過》

【対象の感知系スキルを一時的に無効化する】

【使用する度、効果が薄くなる】



 ステータスを眺めながら、オークとは思えない成長結果に疑問を抱く。

 …ん?

 ユニークスキル欄にある《二元論の堕とし子》に目がとまる。

 低レベルだったためか文字化けして効果を読むことができなかったが、一部だけ文字化けしておらず読める部分があった。

 レベルが十六も上がった影響だろうか。だとすれば、この異常な成長速度の原因?

 俺はステータスを操作して、ユニークスキルを確認する。

 最初に閲覧した時と違い、二行だけだが読めた。


二元論の堕とし子(アップグレード)

【戦闘時、対象のレベル・能力値が自分より高い場合、レベルと能力値を同値まで上昇させる】

【戦闘時、対象のスキルに有効なスキルを自動で習得。ただしユニークスは習得不可】



 要約すると俺よりレベルが高い奴と戦闘した場合、相手のステータスと互角にまで底上げし、相手のスキルに合わせてスキルが生えるという……チートぽいな。名前的にアニメのロボットやサイボーグなんかが常備化してそうな能力だ。

 しかし、その効果は実感して理解できた。

 あの時、グリーンタイガーと釣り合えるほどに強くなったのは、俺がグリーンタイガーと同レベルまで急激に成長し、固定値の差で勝ったため。スキルのバフもあったし、相当強化されたと考えられるな俺の能力値(ステータス)

 敏捷値が急激に上がったのもグリーンタイガーの敏捷値に合わせたためだろう。同じ四桁で、若干数値が似ている。

 生えたスキルも、グリーンタイガーのスキルと比例して四つ、対抗策として十分な効果がある。自動でスキルが手に入るのはお得感がある。


 しかし、機能的に見れば十分にチートと思えるが、発動条件が戦闘時、しかも自分より格上の相手にしか効果ないはネックだ。

 ラノベとかで相手の能力を無条件で奪う主人公のチートと比べると、下位互換でチートとは呼べにくい。

 ってか、このユニークスキル……たぶんだが発動すると非常に痛くなるものだと考えられる。

 強制的に能力値を底上げするということは、強制的に肉体改造をされていることと同意ではないだろうか。

 実際、ユニークスキルが発動した際、ひどい激痛が襲われ、心や精神がまるで洗脳されているような感覚して気持ち悪くなった。

 例えるなら、悪の秘密結社に麻酔無しで無理やり怪人に改造される一般人の心境…。

 ……うん、ダメだなこのユニークスキル。肉体的にも精神的にも危険すぎる。

 レベルが簡単に上げられるのは魅力的だが、危険を冒してまでレベリングしたくない。下手に乱用したら廃人化――もとい廃豚化ルート決定だ。

 俺の目的はあくまで悠々自適なスローライフだ。生きるためにレベルはある程度上げるつもりだが、王道冒険物やバトル物のような波乱万丈な人生――もといオーク生を歩むつもりはない。

 強さとは地道な修練と健全な生活によって得られるものだ、と俺の親友の一人である脳筋マンが言っていたな。

 前世で、すこしばかり自堕落で自由気ままに生きてきた俺には耳が痛い言葉だ。


 レベルを上げで思い出したのだが、レベルを促進させスキル既にあったわ俺。

 オークには不釣り合いな聖職者専用の《正道》と、デフォルトであった《悪道》の二つだ。


《悪道》

【悪行に比例して、成長率が上昇する】


 《正道》と《悪道》――この二つは俺の行い…善悪による行動で、レベルが上がりやすくするスキルのようで、一言で例えるなら条件付きの経験値倍加効果だ。

 ただしく運用すれば成長チートになれるかもしれない。

 だが、ここは異世界だから俺の世界の善悪の基準が違う場合があるかもしれないため、このスキルが発揮する時は皆無に等しい。というか、サバイバル確定の今の俺に良い行いも悪い行いをする機会があるのだろうか。ボッチ生活する予定だし。


 あと、これは俺の勝手な想像だが、もしもこのスキルの効果が発揮されてレベルが二十二から二十六まで上がったのなら、機転となったのはあの犬娘ことコボルドの娘を助けたことによるものかもしれない。

 もっとも、俺は確信はしていない。あれはあくまで結果論であって正義とか善行とかそんな感情で動いたわけでもない。俺の気分でやったことだ。それに視点を変えれば、あのコボルドの娘の得物を横取りしたことにもなるから、悪行かもしれない。善悪の基準なんて個人の価値観で変わるものだ。

 こんなとき、ゲームみたいにログを観ればスキルが発動したかどうか一発でわかるに。


「……まっ、考えても無駄に疲れるだけだし。脳筋マンの言葉通り、コツコツ地道にレベリングすればいいか」


 使い勝手の悪い成長チートを忘れ、俺は立ち上がる。

 まだ体が怠いが、動けないほどではない。

 体力(HP・ST)は完全に回復していないが、その辺の食え物を《雑食》で食っとけばある程度回復できるだろう。

 

 オリジナルのマップを起動させ周囲を確認する。レベルアップの恩恵で半径五キロメートル程だったが、レベルアップでは半径約十キロメートルまで拡大していた。

 その範囲に何かしらの建造物らしきものを発見。

 形状から察するに遺跡のようだが、周辺には家らしき建築もいくつかあった。

 人は…住んでいない。嗅覚を強化された《嗅覚分析》で索敵するが、人らしき匂いは感知されい。居るのは虫や鳥に鼠、そして、スライムといった小型の魔物や小動物たちだけだ。

 もしかすれば廃墟なのだろう。

 俺は一旦、空を見上げた。

 日が落ち、夕焼け空になりつつあった。

 夜になるのも時間の問題だな。

 遺跡までの距離はそう遠くはない。人が住んでいないし、危険な魔物もいない。

 野宿するのには丁度いいな。

 俺は薄暗くなった森へと足を踏み入れる。


 あと、服とか布とか調達できれば助かる。

 腰布…川に流されて、またフルチン状態になってるから俺。



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