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21 花の大賢者?


 コボルドの集落からかなり離れた場所。

 樹海の中というのに場違いの白装束をまとった数十人の人間がいた。


「……犬どもの様子はどうだ?」

「こちらが仕掛けた罠に苦戦していますが、あきらめず我々に追っています」


 リーダー格らしき男が水晶を持った部下らしき青年に聞く。

 水晶には武装したコボルドたちが魔法による罠に悪戦苦闘している姿が映っていた。


「上層部より頂いた魔法のトラップは発動しているよな?」

「はい。設置することでほぼ発見不可能にし、あらゆる魔法効果を及ばす罠系の魔道具はちゃんと発動しています。属性魔法による物理攻撃に、呪いや麻痺などの状態異常。一般人なら即座に死んでいるはずです」

「それで、犬どもの被害はどうだ?」

「……残念ながら一匹も死んではいません。多少の怪我などをしていますが、すぐさま回復薬で復帰してしまうので。この様子ですと、あと十分で我々と合流する恐れがあります」

「そうか……。おい、ジャーマイン様から連絡は?」

「いえ、通信用の魔道具からなんの反応もありません」

「おそらく、私たちが用意した冒険者(えさ)の処理でもしているのかと」

「それにしては遅するのでないだろうか?」

「たしかに。あの方なら、ものの数分であのガキどもと住処に残っている犬どもを処分しているはずです」

「もしや、ジャーマイン様の身に危険なことが!?」

「だとしたら、こんな追いかけっこなどしてないで犬どもを殺してあの方を救出しなくては!」

「落ち着け、おまえらッ」


 困惑する部下を、リーダー格の男は腕を組みながら一喝する。


「ジャーマイン様は我らアダナギ教の枢機卿であり、神より神器を賜れた十三人のうちの一人だ。たかが犬と冒険者気取りのガキどもに後れを取るものか」


 そうですね、と部下たちはリーダー格の怒気に狼狽するも納得し、怒鳴った男は鼻息を吹かす。

 御覧の通り、彼らはジャーマインの配下にしてアダナギ教で信者。

 そして、アダナギ教が保有する武装部隊でもあった。

 現在は、後ろから追ってくるコボルドの戦士たちから逃げる途中で、小休憩を取っていた。


「前にも説明したが今回の作戦はこのリーベルク大樹海の管理権を冒険者ギルドから奪うためだ。冒険者ギルド(やつら)の資金源を断つと同時に権威増強を防ぐ。その方法として、この樹海に暮らす犬どもを焚きつけた。ちょうどいい隠れ蓑もあったしな」


 彼らの目的はリーベルク大樹海の管理権であり、冒険者ギルドの信用を落とすことであった。

 現在、リーベルク大樹海は国家公認の元、冒険者ギルドだけが代表として管理していた。

 冒険者ギルドから配分される樹海の資源は価値が高く、比例して冒険者ギルドの権威は右肩上がりに上がっており、国家にも対等であったアダナギ教と互角の地位と発言力をもっていた。

 これを危惧したアダナギ教は冒険者ギルドと正面から敵対。数々の裏工作を決行した。

 そのひとつが、冒険者ギルドの主な資金源であったリーベルク大樹海の管理権の奪取である。

 冒険者ギルドは民間企業であるものの各国が認めた公式の組織だ。その後ろ盾があってこそ、不可侵領域であるリーベルク大樹海の管理を任されるようなった。国家さえ渡り合える権力を持つアダナギ教でさえ、簡単には手は出せない状況。

 ならば、冒険者ギルドの信用を落とし、リーベル大樹海の管理権をアダナギ教にわたるように仕向ければいい。

 そのための手段が“リーベルク大樹海の先住民たちによる戦争”というシナリオであった。

 冒険者ギルドはコボルドをはじめとした先住民たちとの小競り合いが起きないよう活動範囲を制限し、彼らとの不可侵状態を維持していた。

アダナギ教の上層部はそこに目につけた。

 もしも、冒険者ギルドと先住民たちが戦争をすれば、相当な被害が出る。であれば、冒険者ギルドの管理能力が疑われ、信用を堕ちるだろう。そこを狙ってアダナギ教が冒険者ギルドの代わりにリーベルク大樹海を管理――むしろ支配する。


 戦争の火種になりそうな案件はあった。

 近年、リーベルク大樹海を横断する業者の馬車が教わる事件だ。

 アダナギ教はこの事件の犯人をコボルドたち仕業だとうわさを流し、冒険者たちの正義感を煽った。運よく、この事件の真相は冒険者ギルドの上層部が秘密裏に調査をしている最中だったため、一般の冒険者――おもに冒険者として日が浅い若者たちには知られてはいなかった。

 あとは、そんな未来ある次世代の冒険者たちを利用してコボルドの集落を冒険者ギルドを代表として襲撃。ついでに実行犯である冒険者たちを処分して証拠隠滅。

 馬車の襲撃事件と冒険者たちを隠れ蓑に行動しているためアダナギ教の存在がバレる可能性は低くかった。

 あとは、冒険者ギルドとコボルドたちの戦争が激化する中、機をうかがって人間側として援軍とし駆けつけて成果を横取りし、冒険者ギルドの信用を落とすと同時にリーベルク大樹海から撤退させるだけ。

 さすれば、いろいろと下地をしてきたアダナギ教がリーベルク大樹海の管理権を手に入る――という算段だ。

 冒険者ギルドの権威と戦力を削げるだけでなく莫大な利益と深いな下等生物を粛清することができる。

 まさに、一石三鳥の作戦であった。


「そういえば積み荷を襲った犯人って一体何者なんですかねぇ隊長?」

「直接見たことが無いが情報屋の話によれば大型の魔物らしい。馬車を踏みつぶされた跡があったとか」

「……それ、明らかにコボルドに仕業じゃないですね?」

「だろうな。コボルドのほかにも人間並みの知性をもった魔物の先住民がいるが、大きい種族はせいぜいトロールまでだ。人間程度のサイズしかいないコボルドには馬車を踏みつぶすことなど不可能だろう」

「なのに、あのガキどもはコボルドが犯人だと決めつけたんですね?」

「ジャーマイン様が誘導したとはいえ、アホな子達ですね」

「何も知らない挙句、我々に利用されるなんて哀れで言葉が出ませんわ」

「そういうな。彼らの犠牲は我らの信仰にも繋がる。アダナギ様の背徳者であれ、人の命を尊い物。死ぬ彼らのために祈りを捧げようではないか」


 リーダー格の男が手を合わせて祈ると、部下たちも一斉に祈りだす。

 それは、若者たちの命を利用した大人の自分勝手なエゴでしか他ならない。


「……時間だな。あの犬どもが来る前に次の休憩所に向かうぞ」

「では、すこし荷物を軽くしましょう」


 そう言って、木の根っこのところで放置されていたコボルドの子供たちのほうを振り向く。

 子供たちは縄で身体を縛られ、口枷をされていた。また、意識を奪う魔法によって昏睡状態に陥りぐったりとしていた。


「この場に打ち捨てられた子犬どもの死骸をみれば、犬どもはさぞかし怒り狂うだろう。その復讐心こそ、我らの邪魔者を傷つける凶器となる。まったく、鬼畜を狩る我らが鬼畜を利用するなど皮肉なものだ」


 リーダ格の音がナイフを取り出し、コボルドの子供たちの首筋に刃を当てようとする。

 昏睡状態になっている子供たちは抵抗できず、男はナイフで頸動脈を切ろうと――。


――おっと、そうは問屋が卸しませんですわ


「っ!? 誰だ!」


 森の奥から聞こえてきた声に、一同が振り向く。

 奥のほうから足音が聞こえてくる。こっちに近づいてくるようだ。

 彼らは警戒する。

 それなりに修羅場を潜り抜けてきはずなのだが、これほどまで接近する者を察知できなかったことに驚きを隠せなかった。

 彼らの前に声の主が現れる。


「その子たちは我が親友の親戚の子。家族思いの彼女が子供たちの死を知れば深く哀しむでしょうし、なにより若い命を奪われるの黙って見過ごすことはわたくしのポリシーに反しますわ」


 出てきたのはひとりの“少女”だった。

 年齢は十五歳ぐらいだろう。

 樹海の森を散策するには不向きな赤と黒のフリルが多いドレスを着た妖艶な色気を醸し出す美少女だった。


「……貴様、何者だ?」

「ぎっししし。初めまして、人間至高主義の腐れ信者様方。わたくしは……そうですねぇ、可憐で気品あふれる花の大賢者とでも名乗っておきましょうか」


 リーダー格の男の質問に、少女は愉快に笑って答える。

 彼は警戒を強める。

 自分たちがいる場所は凶暴な魔物が生息しているリーベルク大樹海の真ん中だ。

 女性の冒険者ならともかく、令嬢のような恰好をした美少女がこの場にいるのはおかしすぎる。

 また、彼女から醸し出す不自然な気配、まるで無害な花を偽装した食虫植物のような雰囲気に、男は警戒を強める。

 もしかすれば、自分たちより強いかもしれない。男はそう考えた。


「このふざけやがって、ビッチが!」

「我々を侮辱するか!」

「おい、まって!」


 少女の強さを察知できなかった部下たちが弓矢で攻撃する。

 放たれた矢はまっすぐに少女を飛んでくるが、「――展開」と少女が呟くと同時に魔法陣の壁が出現し、矢を防いだ。


「ぎっししし。初対面で乙女の顔に傷を付けようとするなんて失礼ですわよ?」

「アレはもしや魔法障壁!? 無詠唱で発動したとすればこやつ星魔術のスキル持ちか!?」


 リーダー格の男が驚愕する。

 魔法障壁は星魔術の一種だ。

 そして、星魔術は例外を除き、全魔術系統においてレア中のレアのスキルでもある。

 このスキルは習得が難しく、生まれながらこのスキルを持つものは百年に一人いるかいないかほど希少であった。また、スキルがあっても魔法操作が難しく、莫大なMPを消耗するため、完全に使いこなすものはさらに少ない。

 逆に、この星魔術を完全に扱えるものは賢者としての素質を持ち、英雄としての未来が約束されていた。

 そんな魔法を扱う少女が賢者候補ではないのかと、アダナギ教の武装部隊は考える。

 少女は自分を注目している彼らから昏睡状態のコボルドの子供のほうへ視線を移す。


「可哀想に。無理やり縛られた挙句、こんなところまで連れてこられて。すぐに親元に返してあげますわ。――物体転送(アポート)


 少女が魔法を唱えた瞬間、横にいたはずのコボルドの子供が縄と口枷を残して消え、少女の横へと出現した。


「なっ!? バカな、星魔術で我々から一瞬で犬どもを奪ったのか!?」

「星魔術は空間操作をする魔法。これくらいできて当然でしょ?」


 と、当たり前ばかりという少女にリーダー格の男は頭を抱える。

 少女が使った魔法はアダナギ教による教授で知っていた。

 が、彼の知識と目の前の現実と明らかに違う。

 物質転送アポートはその名の通り、物質を使用者のところまで転送させる魔法である。

 しかし、転送できるのはあくまで一つだけ。それも生物は転送できず、質量制限があって手のひらサイズのものでしかできないのだ。過去の魔法による研究によって証明された事実である。

 なのに、少女は中型犬並みのコボルドの子供たちを同時に転送させた。しかも、身に着けていた拘束具だけを除いてだ。

 人が築いた魔法の常識を破る少女の出鱈目さに男は恐れを抱く。


「(落ち着け、私。私はアダナギ教の信者であり神に選ばれた人間。いわば正義の味方だ。この程度で混乱してはいけない)」


 自分に言いつかせ、冷静さを取り戻そうとするリーダー格の男。


「(とにかく、アレの正体を見破らなくては。鑑定眼!)」


 鑑定系のスキルを発動させ、少女の正体を見抜く。

 だが――、


名前:■■■

種族:■■■■■

LV:95

HP:4560

MP:38400

SP:2520

筋力:410

耐久:850

敏捷:5300

魔力:9100

知力:9800

器用:8400

■■■■■■■:■■■■

スキル

《■■■■》《完全情報規制》《叡智閲覧》《■■■■》《精吸》《地脈循環》《魔力循環《■■■■》《自動治癒》《火魔術》《水魔術》《土魔術》《風魔術》《雷魔術》《光魔術》《闇魔術》《星魔術》《錬金術》《状態異常耐性》《高速思考》《分割思考》《高速演算》《■■■■》《念波》《増殖分身》《生命感知》《魔力感知》《調薬》《業焔息吹》《火炎耐性》《飛行》《業火鱗》《鋼鉄殻》《硬化》《鋼鉄噴射》《神経侵入》《脱皮》《自切》《魔力噴射》《魔力収束》《魔力吸収》etcetc




「なん……だと…!?」


 リーダー格の男は腰抜かし、尻餅をついた。


「た、隊長?」

「あ、ありえない。ありえないぞ、あんなステータスは……!? 種族とか一部分からない上にレベルがジャーマイン様以上で、スキルの数が異常に多すぎてすべて確認できないなんて……!?」


 信仰するアダナギ教のため数々の任務をこなし、そのつど、強者たちと戦い殲滅してきたが、圧倒的なステータスに心が折れかけた。


「ぎっしししし、わたくしを鑑定したようですが無駄な行為ですわ。あなた方とわたくしとの差は歴然。このまましっぽを巻いて保護者(かみ)さまのところで泣きつきますか? わたくしは追いかけませんわよ。この子達を無事に親元に返さなくてはいけないので」

「……信者たちよ」


 リーダー格の男がゆっくりと立ち上がり、部下たちに命令する。


「アレを殺すぞ。アレは少女の皮を被った化け物だ。このまま放置したらいずれ我が神の信仰の障害となる!」

「は、はい!」

「おや、殺る気ですか? 命を粗末にするなんてなんてバチあたりな方々ですわね」

「黙れ、自称大賢者。すべては神のため、信仰のため。我が命で貴様を殺せば安いものだ」


 彼らは覚悟した。それと同時に勝利を信じた。

 ステータスは少女のほうが高く、スキルをすべて確認したわけではない。

 しかし、長年の経験と直感から彼女が魔法を主流とする魔法使いタイプだと見抜いた。

 ならば、勝機は十分にある。

 彼らが装備している聖具は対魔法用であり、また、魔法使いに通用するスキルを習得していた。

 さらに数はこちらが多く、犠牲を払えば必ず勝てると、アダナギ教の武装部隊は確信する。


「ぎっし! いいでしょう。ならば、あなた方の信仰心、この手でぐちゃぐちゃに潰してあげますわぁ」


 少女が嗤う。

 彼らの無謀な行動に嗤う。彼らの結末を想像して嗤う。

 その笑みは悪鬼のような笑みであった。

 アダナギ教の武装部隊はその笑顔に臆すが、勇気を奮い立たせ、少女に怒鳴る。


「黙れ、愚かな魔女よ! 貴様がどんな魔法を使おうが、我らには神より受けたわりし神聖魔法と先祖から受け継ぎし聖具がある! 魔を滅する我らの力と信仰があればどんな怪物であろうと敵では――」

「――重力圧殺陣(グラビティ・ブレス)

「ごばぁああああああああああ!?」


 が、一瞬でへし折られる。

 少女が発動させた魔法による重力操作。

 彼らは重力という名の圧力に屈して地面に押し潰されてしまった。


「ひ、卑怯だぞ、我々がしゃっべいる最中で攻撃をするなど……」

「いえいえ、普通に相手の出方をまつほど酔狂ではありませんので、わたくし」


 くっそ、と彼らは舌打ちをしてすぐさま聖具とスキルの効果を発動させる。

 この程度の魔法ならすぐに無効化できる――そう信じていたが。


「どうしてだ!? どうして魔法が消えない!? 我々には魔法耐性というスキルと魔力吸収の効果を持つ聖具をもっているというのに!?」


 魔法は無効されず、地面に地面にめり込まれたままだった。

 そんな彼らに少女が肩をすくめる。


「やれやれ、不勉強ですわね、あなた方」

「なんだと?」

「魔法耐性のスキルは文字通り、魔法攻撃に対して耐性を得るスキル。中級程度の魔法なら半減するでしょうが、あくまで弱体化程度。完全な無効化ではありません。しかも、効果対象は直接的な魔法限定。わたくしが発動させたこの重力魔法は一定空間の重力に作用し、間接的に与える魔法なので、そのスキルは通じませんわよ?」

「なっ!?」

「あと、あなた方か身に着ける魔道具。その魔力吸収の効果が発動すれば魔法に込められた魔力を抜き取って魔法を消滅させることもできるでしょうが、その程度の魔道具では吸収速度と吸収量なんてたかかしれてますわ。膨大な魔力量を供給し続ければ、吸収されても発動状態を維持することは可能。なんの問題にもございませんわ」

「あ、ああ…!?」


 アダナギ教の武装部隊は恐怖に震えた。

 生まれながらの強力なスキルに恵まれたことで神に選ばれ、アダナギ教の戦士として教会に尽くしてきた。

 自分たちには神がいる。

 神がいる自分たちこそが絶対の正義。

 神に背く者たちを殺す絶対者。

 特別な能力と特別な聖具を持つ自分たちに敵はいない。無敵だ。

 そう信じてきた常識が、神に対する信仰が、一人の少女により現実によって音を立てて崩れていく。

 だが、少女(ばけもの)による気まぐれが、さらに彼らを追い詰める。


「ん~?、このままあなたちをピザみたいに地面に押しつぶすのは芸がありませんわね。ここはやはりド派手に決めたほうが華があっていいかもしれません。では、さっそく……」

「や、やめ――」

「地に伏せる炎の精よ、天に向けて唾を吐け、炎陣天柱奉(フレイム・バーナー)!」


 瞬間、彼らの視界が赤く染まる。

 地面か現れた強大な魔法陣。

 そこから魔法陣と同様の火炎の柱が出現し、天まで伸びる。

 まるで天を貫く炎の柱であった。

 収束された熱量はもはや地獄そのもの。

 炉という地獄に放り込まれたアダナギ教の武装部隊は断末魔を挙げるが、火柱の轟音がそれを消す。

 一分後、少女の魔法が自然消滅し、地面には黒焦げの焼死体が数体横たわっていた。


「ア……ァ……」


 訂正、焼死体ではなく、黒焦げの人間であった。

 性別など確認できないほど炭化寸前まで焼かれたアダナギ教の武装部隊たちは、わずかながら呼吸をしていた。


「安心しなさい。殺しはしません。あなた方にはあとでいろいろと聞きたいことがありますので」


 もっとも、と少女は呟き嗤う。


「最後はわたくしの実験動物(モルモット)として飼われる人生でしょうが。久々に外出したおかげで初めての人間が手に入るなんて幸運ですわ。これならあの薬やあんな改造の実験も……うふふふふ、――ぎぁっははははははぁ!!」


 少女が嗤う。愉快に笑う。

 幸いにも、隣に助けたコボルドの子供がまだ寝ていたので彼らは気づいていない。

 隣に、化け物がいること。

 狂った正義の味方を貪り尽くす花の大賢者という化け物を。


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