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15 15年の月日がながれ……


 前略、両親様および兄弟へ。

 私、不肖の息子こと岡崎麟之助は世界に転生して十五年の歳月が経ちました。

 私は両親からもらった名を転生と同時に返上し、オーズという名でオークとして人生ならぬオーク生を歩んでおります。

オークと聞くと、最初にイメージするのは薄い本で女騎士を快楽堕ちさせる豚人間なんですが、こちらの世界のオークは超人系プロレスに参加してそうな怪人(ヴィラン)系ゴリマッチョメンな怪人で、ブスメンというより厳ついイケメンと感じです(笑)。

 実際、この世界で15歳(精神年齢は三十路)になった俺は、どこぞの十二の残機をもつ狂戦士(2Pキャラ)のような大男になりました。お気に入りのキャラに似ているので、内心嬉しい。

 むろん、見た目だけでなく、保有する能力もすぐれており、サバイバル生活に大いに役立ち、森と出会った人外(なかま)(?)たちともに自給自足の生活を続けています。

 そして、今、俺は――




「なぁ、シャルロット。ひとつ質問してもいいか?」

「ん? ……なに?」

「なんで俺、谷の絶壁の淵に立たされているんでしょうか?」


 下を見下すも、底が見えない暗い深淵。

 下から上に流れる突風が獅子の鬣ごとき赤い髪を揺らす。


「獅子は我が子のため千里の谷に落す……それにちなんで今回は制限時間内に谷底から這い上ってくることが今回の……修行。二時間オーバーならやり直し……もう一度落とすからそのつもりで」

「いやいや。初心者がいきなりロッククライミングできわけないし! つうか、修行ならいつもみたいに組み手か狩りで――」

「だめ。組み手だとオーズ、手を抜く。狩りだって同格相手だと力任せに勝っちゃうし……強い魔物と出会ってもユニークスキルですぐに強くなる。それだと肉体が強くなっても心まで強く……ならない」

「心が強くなる前に、心が折れるわ! こんな絶壁を二時間で登れるかって! ――ん、落とすって?」


 ドッン!!


 犬娘が地面を強く踏みつける。

 憲法でいうところの震脚だ。

 踏みつけた場所から亀裂が生じ、俺の足元まで伸びる。

 途端、足場が砕けた。


「へっ?」

「これも義弟を想ってのこと。そう、これは愛の……鞭。好きで好きでたまらない貴方のために……私は鬼にも悪魔にもなる」


 絶壁の端だったため数秒で足元が崩れ落ち、俺は谷底へ投げ出される。

 突然だったため思考が追い付けず、刹那の浮遊感を体験しながら俺は困惑したまま重力に従って落ちていく。



 前世の家族へ、俺は今、義姉に殺されかけています(笑)。



 ●●●



 やっとの思いで絶壁を登り切ると、懐中時計(花娘作)で時間を計る犬娘がいた。


「一時間十分……最速で一時間半くらいはかかると予想したけど……やっぱり、オーズはやればできる子」


 懐中時計のふたを閉じ、満足そうな笑みを向ける。

 その笑みが腹立たしい。


「ぜぇ、ぜぇ、このにゃろ……紐なしバンジージャンプさせやがって……! おかげで死にかけたぞ」

「……その割に、愚痴がいえるほど……元気。今のあなたら登り切れる高さだと確信してたんだけど、想像以上に大丈夫……みたい。しかも、ほぼ無傷だし、次は一時間以内に登れるように再チャレンジ……しよう」

「やめって! もう俺のライフはもうゼロだから! HPが三割くらい残ってるけどSPはもう一桁だから! これ以上動いたらマジで死ぬ!」


 無傷に見えるけど、谷底に落とされたときHPが七割削れたわ! 

 再生スキルがなければスプラッターな状態のまま谷底にいた魔物に食われるところだった。

 というか右腕食われたし。


「だいたい、谷底にいた赤い恐竜なんだよ。巨躯に反して俊敏で、攻撃する暇がないほどモーションが速いし……。ユニークスキルが発動する前に死んじゃうところだったぞ、アレ」


 ユニークスキルのおかげで谷を登って逃げ切ったが、代償として右腕を持ってかれてしまった。もう腕生えたけど。

 十五年修行の成果で、ユニークスキルの大体の効果範囲は把握したが未だに使いこなせてはいない。パッシブ系なので便利な時があるが、発動するまで時間がかかるのがネックだ。せめて任意で発動・停止できるようにしたい。

 まあ、そのために犬娘(アネ)と一緒に修行しているのだが、スパルタすぎて後悔している。


「あ、たぶんそれ……レッドレックス。グリーンタイガーと並ぶ、蜥蜴の魔物。通称、樹海の暴君。この谷はレッドレックスの縄張りの範囲内だし、いてもおかしく……ない」

「そういうことは最初に言えよ……!」


 このスパルタ義姉、加減知らずに加えてうっかりをやらかすから毎回心身ともにボロボロになる。

 例えば、彼女が仕掛けたスパイク仕込みの落とし穴を言い忘れたり(おかげで芸人みたく綺麗に落ちた)。

 例えば、渡されたHPポーションを飲んだら超激辛味だったり(黒幕は花娘で二人共どもお仕置きした)。

 例えば、自身の魔法の練習を兼ねて三千六百七十五発の魔法の矢を俺に向けたり(一時期先端恐怖症になった)

 おかげで、走馬灯が何回もよぎったことか。

 むしろ、オークじゃなかったら死んでいたと過言ではないだろう。

 あぁ、思い出しただけで、さらに疲労感が……。


「……オーズ、動け……る?」

「無理。疲れて指一つ動かせない」


 むしろ、動きたくない。

 このまま死んだように、眠りたい。

 そう思えるほど疲れたのだ。

 ただし、昼には起きるから。今日の昼飯は昨日仕込みした味噌漬けの魚を使った料理だし。

 賞味期限的に今日中に食べないと。


「うん……なら今日の修行はここまでに……しとく。今日も、オーズ、がんばっ…た。だから――」


 犬娘は自身の服に手をかけ、はだけるように服をズラす。

 人間と違って毛深い魔物(コボルド)の肌。しかし、その毛並みは美しく、胸部にある巨大な果実が二つプルンと零れ落ちそうになる。


「ご褒美の、もふもふ……タイム……しよう?」


 頬を赤く染めるも、妖艶な色気を放つ犬娘が、俺の腹の上に乗っかる。


「うんしょ、オークの好きなしっぽ……いつもみたいに好きにモフモフして……いいから……ね」


 そう言って、抱き枕ほどのあるモフモフなしっぽを俺の顔に押し当てる犬娘。

 しっぽを向けているため、小ぶりながら綺麗な尻が見えてしまうのだが……まずは目の前のモフモフが最優先だ。

 指一つ動かせないはずの腕を伸ばし、ふわふわモフモフなしっぽを抱きしめる。

 モフ利害のあるしっぽだ。石鹸の香りもして、癒される。


「うぅ……オーズはほんとに……モフモフが……好きだ……ね」


 しっぽを顔をうずめるたび、犬娘が色っぽい声を漏らす。

 俺はただしっぽをモフモフしてるだけに、敏感な義姉だ。

 十五年前は可愛らしい子犬の獣娘だったが、二十五歳になった今は完全に大人。長身でグラビアアイドル顔負けなメスケモノにまで立派に成長している。

 その美貌はケモナーじゃなくても、魅力的な異性だと感じるほどエロ。


「……オーズ、元気出てきたみたい……でも、ここはもとから元気、ぽい」

「ッ!? ちょっ、どこを触って!」

「ふふ、疲れていると、ココが元気になるって……ラウラ、言ってた。疲れて動けない癖に、節操のない……(おとうと)

「いや、それは生理現象というもので……って触るな動くなぁぁ!」


 身体を密着させ、においを付けるように擦り付ける犬娘。

 服越しとはいえ、メスケモノのモフモフと柔らかさと張りのある弾力ふたつに、理性が削られていく。


「……オーズのコレ……苦しそうだし、帰る前にヌイちゃう?」

「いやでも、ラウラたちが昼飯をまっているし……」

「走って帰れば、昼頃につく……はず。それに本番はしないのだから、問題は……ない」

「たしかにそうだけど。いつもそうだけど。道徳的な常識というか、義姉弟的な関係といいますか、そういうものがありましてですね――」

「――ねぇ、オーズ……」


 犬娘が上半身を起こし、俺のほうへ振り向き――。


「私の口で、気持ち良く……なろう?」


 長い舌を垂らし、レイプ目で強請る一匹のメスケモノ。

 そのいやらしい姿に、俺の理性が切れた。



 ●●●



「はぁ、まったやってしまった……」


 森を歩きながら、俺はため息を漏らす。

 結局、犬娘に十回ほど口でイカされてしまったのだ。

自身の自戒の緩さに、嫌気がさす。


「オーズ、それは違う。正確には口で八回、耳で二回、胸で四回、手で五回、足で一回……計二十回。倍はやってる」

「さらっと、俺の心を覗かないでくれませんか義姉さん」


 俺と犬娘がこんな関係になったのは、五年前……彼女が二十歳になった頃、犬娘に訪れた初めての発情期が原因だ。突然の性欲に犬娘は抗えず俺に逆レイプ。

 最初の頃は俺も抵抗したのだが、むっつり姉のメスケモノ(発情状態)というエロ同人誌並みの色気にかなわず、ついつい流されしまった。

 ……はっきりいって、(行ったことのない)高級風俗店並みのテクニックの前に、経験皆無な童貞(豚)が叶うわけない!

 おかげで、俺の性癖にメスケモノが追加されてしまった。

 ちなみに、最後の一線は超えてはいない。魅惑的なエロスボディーを責められても、即座に落ちる高テクニックで絶頂されようとも、貞操だけは守り通した。

 エロは好きだが、異性との関係を複雑にしたくない。そんな面倒ごとを嫌う不倒の意地の賜物だ。

 自分を自分を褒めたい。


「でも、毎回、性欲に負けるくせに、本番だけ絶対に…やらない。その不屈の精神は褒めるべきか、呆れるべきか」

「あっははは、残念ながらこっちとら一度決めた覚悟だけは堅牢なんでね。どんな卑怯な手を使われても、父親にはならないからな」


 しかし、義姉は引き下がらず言い詰める。


「そのために、避妊の準備は万全にしてある。ラウラだってオーズのために避妊用の薬と魔道具作ってる。いいかげん、私たちで童貞捨てるべき。私たちを大人にさせるべき」

「いったん落ち着け、義姉よ。婚期に焦る女みたいだぞ」


 人間の年齢なら結婚とか考える歳だろう。

 毛深いのとうっかり属性を除けば、魅力的な女性だ。

 男なら今すぐにも交際したいほど美女である。

 それでも俺は――。


「いまさらだけど、今のおまえらは魅力的だ。思春期の男子からみれば今すぐに犯したいくらい(人間じゃないけど)女だ。だけど、欲望のまま交わって、できた子は絶対に幸せになれない。なぜなら、望んだ子じゃないからだ。だったら避妊すればいいのもあるが、それはそれで問題がある。子供ができないからヤリ放題という考えは異端だ。快楽はあくまで子孫を作る過程であって目的じゃない。もちろん、俺も気持ちいいことは好きだ。否定しない。けど、それは生物として、親としての責任を薄れさせていると思うんだ。異性を愛しても互いの子を愛そうとしない。そいう生き物がほんとうは存在してはダメなんだ」

「オーズ?」

「……はっきりいって、俺は責任感とかそういう面倒ごとはごめんな人種だ。そんな奴が父親になればその子が、相手の女性も不幸になっちまう」


 風俗店の客と風俗嬢の肉体関係ならまだいい。あくまで、性欲解消のための行為でしかない。

 だが、犬娘が欲しているの肉体の先にある二人の幸福だ。俺はそれは許容できない。

 ――できないというより、資格がないが正解だ。

 異性と十数年近く暮らせば愛欲も沸くだろうが、それは性的本能による生理現象でしかない。

 そこに【愛する】妄執と【恋する】欲望が無い以上、彼女を受け入れることは無いだろう。

 そうするしか、俺に選択がないのだ。過去の(トラウマ)のためにも。

 ふと、俺の肩を犬娘が手を置いた。


「オーズ、その考え、正しい考えだと、私も思う。本能の行くままではなく、相手を気遣い、互いの幸せを考える。そういう相手を大事に思いやるオーズ、私は、好き」


 俺の気持ちに理解し、納得する犬娘が微笑みながら言う。

 その裏表のない自然的な好意は苦手だ。心が揺れてしまう。

 もしも、俺が恋愛に素直だったら、彼女の好意を受け止められていただろう。

 ――と、罪悪感が心に刺さる寸前に、犬娘が俺の両肩を強く握る。


「でも、ぶっちゃ、お預けのしすぎで、今すぐそこの茂みに押し倒して既成事実作りたいから、その考えはあえて却下する」

「もうちょっと、本能を逆らえよ犬娘!」


 ぐいぐいと大男一人、女性一人が隠れそうな茂みに誘い込もうとする。

 強化魔法でも使ってるのか、巨体である俺の体を僅かだがズルズルと引っ張っていく。

 こいつの切り替えの早さと、俺に対す情熱には白旗を挙げそうになる。

 もはや、さっきまでのいい雰囲気は霧散していた。


「おやおや、わたくしをのけ者にしてすっぽりねっちゃりしうと考えるなんて、いやらしい雌犬ですこと」


 その声を聴いたとたん犬娘はギクッと驚いて硬直する。

 俺は声のするほうへ視線を移すと、そこには拠点で留守番をしていたはずの花娘ことラウラが加虐的な笑みを浮かべていた。

 犬娘同様に、十五年の歳月で体つきもすっかり変わった。

 俺と同年代で身長は中学生女子の平均並み(ただし巨乳)で、幼げな印象があるものの蟲惑魔的な色気がにじみ出ている。

 犬娘がグラビアモデルなら、花娘はファッションモデルだろう。

 たとえ、下半身が通常の男性器よりも太い触手だったとしても、思春期の男性陣は彼女を美少女だと断言するほど可愛い。


「なんで、おまえがここにいるんだ?」

「もうすぐ昼食なのにまだ来ないので向かいに来ました。今日の昼食当番はあなた様でしょ? ミナヅキさんがお腹をすかしていますので、早く帰ってくださいまし」


 もうそんな時間か。

 修行(と義姉のプレイ)に集中して時間を忘れていた。

 家で留守番をしている使い魔がお腹を空かしている姿が脳裏に浮かぶ。


「それは悪かったな。それじゃ、一緒に帰るか」

「えぇ、でもその前に――」


 花娘の触手が一本動いた瞬間、こっそりと逃げ出そうとする犬娘を捕らえる。


「ちょっと、この駄犬にしつけをしておきますから、お先に。わたくしたちは後から追いますので」

「ぐっ!? ラウラ……もしかして怒って……る?」

「いえいえ、怒ってはいませんわよ。みんなさんで決めたオーズ様独占シフトで今日がわたくしの番だというのに勝手につまみ食いされたことを気にしていません。むしろ、わたくしの取り分まで残っているのか心配で心配で」

「ラウラ、ストップ…! しょ、触手がきつく……なって……」


 胴体に巻かれた触手が食い込む。

 強化系の魔法で抵抗しているようだが、相手は触手だ。メスケモノといえど女であるので、触手には勝てない。これ、一般常識。 

 ちなみに、俺はこいつも肉体関係で築いている。

 最初の頃は生命の危機という理由で俺の精を欲していたが、アルラウネの本能か、犬娘と共謀して俺を逆強姦。おかげで、植物の女体を堪能してしまった。

 なんか、受けばっかだな俺。快楽に流される自分が悪いけど、最後はオークの底力(という名の絶倫)で返り討ちしたから問題ないだろう。だから、俺は反省はしない。

 もちろん花娘とも最後の一線は超えてはいない。一線を越えたら、それをネタになにかを要求されるのか怖いし。プレイ中、触手が俺の尻をねっちょりと狙っている感じがするので。

 また、オーズ様独占シフトというのは犬娘と花娘が俺の許可なく決めた俺を性的に独り占めにするシフトのことで、一週間の内、二日目四日目は犬娘、三日五日目は花娘、一日目六日目は二人という、思春期の男子にとって夢のようなハーレムである(選択枠がコボルドとアルラウネだけだが)。おかげで、毎日が煩悩との戦いだ。うっかり本番に突入しそうになるが、ギリギリ耐え切った。

 なお、七日目は俺が自由に彼女たちを(性的に)食べていいということなので、その日だけはほのぼのと一人趣味に没頭している

 だって、既成事実のための伏線しか思えないし。その日だけ俺の視線に避妊具が置かれているし。動機が見え見えだ。

 ……正直、色ボケすぎないか、この魔物娘ども。 

 


「ラウラ……暴力はダメ。平和的に話し合おう?」

「えぇ、もちろんです。わたくしも暴力は嫌いなので平和的に、肉体言語で話し合いましょう。ちょうど、良さそうな茂みがあることですし。絞り切れるまで絞りましょう」

「しぼるってなにを……!?」

「ナニから出た液体ですわ」


 と、ニヤリと不気味な口元を挙げる花娘。

 あぁ、これは薄い同人誌展開確定だな。ジャンルはレズで、デフォルトで触手がありの。


「お、オーズ、助けて! お義姉ちゃんがピンチ!?」

「それじゃ、俺とミナヅキで先に食べておくから。おまえらの分は念のため冷蔵庫に入れとくな」

「お手数をおかけしますわね」

「オーズぅぅぅ!!」


 本音を言えば興味はあるが、俺まで巻き込まれるのは確実なので遠慮する。

 しかも、ドS状態の花娘が相手だと身の危険が大きい。おもに尻が。


 義姉よ、裏切って悪いがこれも義姉のためだ。これを機会に節度を覚えてくれ。


 心を鬼にして俺は拠点に向かって速足で森の中を進む。

 背後から、私の分だとか、そこは絞っても出ないとか、尻から出さないでとか嬌声と嘲笑が聞こえてくるが無視した。

 賢者タイムじゃなかったら、俺の息子が元気になってしまうところだ。



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