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 二百年の昔、龍王・武伯(ぶはく)の弟で恒国侯であった安雨林(あんうりん)が兄を弑逆(しいぎゃく)し、龍王位を(おそ)った。果断の王であった雨林は、その二年後、突如として海を隔てた隣国・玄武に宣戦を布告。その一年後には玄武(げんぶ)国の王都・武郭(ぶかく)を陥落させ、支配下に置いた。その後、西征・南征した雨林は、虎王国、朱雀(すざく)国にも攻め入り覇王を名乗った。

  しかし、そこで遂に天帝の逆鱗に触れた。 (ことわり)では龍王も玄武王も、虎王も、朱雀王も等しく天帝の臣下なのだ。臣下同士の争いは断じて認められぬ、と時の天帝は(いきどお)った。武伯の遺児・(とん)に刀を下賜し、雨林を誅殺せよと命じた。刀の銘は聖龍刀。太古の聖戦で武神・玉師(ぎょくし)王子が使ったという宝剣である。時に遁は五歳という幼さであったが、天命は人心を揺さぶった。天命に背いた雨林は逆賊となり、そのことが、雨林の度重なる外征に疲弊していた官吏、民衆を助長し謀反を招いた。謀反軍は遁を奉戴(ほうたい)し、遂に雨林を誅殺した。聖龍刀を(たずさ)えた遁は聖龍童子と呼ばれ、朝敵を成敗した英雄となった。以来、龍王国では龍王の後嗣を聖龍童子と尊称するようになった。

  雨林の外征と支配は、各国に恐怖と軋轢(あつれき)を生んだ。外征により蹂躙(じゅうりん)された地域は戦乱と略奪により困窮し、民は龍王国を深く恨んだ。

  それまで臣下の領国統治に(ほとん)ど介入することのなかった天帝が、この戦乱の終結とともに一つの法を定めた。それが渡航禁止の令である。四つの大国間を隔てる海の航海を禁じたのである。


  それから二百年が過ぎた。この二百年、国同士の戦はなく、各国は天命に従っていた。ところが、今から十年ほど前、遂に玄武国が龍王国に宣戦を布告した。或いは二百年前の恨みが、噴出したのかもしれない。突如の襲来に、時の龍王・修は龍軍を派兵したが、将軍・関熙雷(かんきらい)はあえなく敗れた。関熙雷の後に第二陣として派兵された援軍と、不意の嵐の到来により、龍王国は辛くも敵を退けたが、そのさらに五年の後、玄武軍は一度目の戦争に倍する戦力で龍王国西端に浮かぶ島、九迦島(きゅうかとう)を占領したのである。さらに四年あまり、三度目の襲来は、遂に龍王国本土を目指したものであった。

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