~帰宅~
俺はガーゴイルが落ちた場所まで走った
果たして倒せているのだろうか
「中々いい魔法だったわね。まあ私の1万分の1くらいしか威力がなかったけど、アイツくらいなら倒せてるから大丈夫よ」
「本当か?でもあんな炎で焼かれたんだからさすがにな」
自分で放っといてなんだが、あの炎はヤバいだろ
あんなのを俺が撃ったのか…
信じられないな
炎が燃えている場所までたどり着く
そこにあったのはガーゴイルであろう焼け跡が残っているだけだった
「ちゃんと無事に倒せたみたいね。アンタじゃちょっと不安だったけどさすが私の加護だわ!」
声しか聞こえないけど、これ絶対ドヤ顔してる言い方だよ
この天使は凄いんだか調子がいいだけなのか分からないな
「でも俺が倒しちゃったんだよな…俺がコイツを…」
「割り切らなきゃ駄目よアンタとガーゴイルは全く別の生物なの魔界の住人と人界の人間じゃ食物連鎖すら成立しない。本来なら魔力をちゃんと使える魔族の一方的な虐殺になるだけなの。それにあのままならアイツは亀裂からまた人界に行って被害を出していたわ。それを防げたんだからオールOKよ」
「そういうもんなのか…」
「とりあえず今日は帰りましょ。アンタも初めて魔力を解放したんだから相当疲れているはずよ」
「ああ…」
元来た道を引き返しながら歩いていく
身体が重く感じるぞ
これが魔法を使った反動なのだろうか
亀裂の場所に到着する頃には疲労感も感じていた
「さあ人界に戻りましょ」
天使の言う通り亀裂を通ると元の場所に戻ってきた
ほんの1時間も向こうには居なかったはずなのに、凄く安心する
帰って来たんだ
魔界ではあんな戦闘があったのにこっちでは何も起きていないようにただ静かに夜の時間が流れている
歩いていると倒れている自転車を見つけた
俺が襲撃されてから誰も通っていないのか…
マジで天使がいなかったら俺は死んでたんだな
今までの事は現実だと、ここに帰ってきてハッキリと認識した
「さーてアンタの家に帰るわよ!」
「家って言っても学校の寮なんだけどな」
「何でもいいわよ。まずはアンタにはちゃんと説明しなきゃいけないからね」
「それは頼む。全然状況が呑み込めないんだ」
一体全体何が起こってあんな事になったのかやっと分かる時が来た
俺の最初の戦いは終わった
寮に向かって自転車で走りだそうとした
「あ!ちょっと待って亀裂を封印しなきゃ」
「封印?」
「そうよ今は開いたままの状態だから、もし魔界のやつが来たら通れちゃうのよ。だからひとまず封印するの」
「そうか、どうすればいい?」
「また私が魔力を集めるから、亀裂に撃ってくれれば大丈夫よ」
天使はそう言って魔力を右手に集めた
「いいわよ」
早いなオイ!俺が魔力を溜めるのには結構時間がかかるのに、コイツはほんのわずかな時間でできるのか
俺は右手に集まった魔力を放出した
亀裂が光で覆われて段々見えなくなっていく
「これで大丈夫なのか?」
「大丈夫よ。とりあえずこれが誰かに見つかる事は無くなったから今度こそ家に帰るわよ」
話をしている内に亀裂は完全に見えなくなっていた
自転車に乗っていると天使が話しかけてくる
「そういえばアンタって名前は何ていうの?」
「俺は宗、田鹿 宗だよ」
「宗ね、いい名前じゃない!」
「お前は…リーナだっけ?」
「そうよ気軽にリーナ様って呼んでいいわよ」
気軽に呼ぶのに様付けしないといけないのかよ
やっぱりコイツの頭怪しいぞ
「それで宗の家まではあとどれくらいなの?」
「もうそろそろ着くよ」
側道に降りてすぐ近くに寮はある
電車では反対方向に駅があるから意外と遠回りになるんだよな
寮に到着し駐輪場に自転車を止め中に入る
「中々いいマンションじゃないの~高校生が住むには贅沢ね」
「だから寮だって外観は立派だけど中は全部1Rだよ」
「ふ~んそれじゃあ早く帰りましょ」
この寮は7階まであり、建物が横長のためかなりの部屋数がある
俺は3階だが運動のためエレベーターは使わず階段で上がる
303号室、俺の部屋に着き中に入った
「やっと帰ってきた…」
「帰ってきたらただいまでしょ?」
「一人で住んでるのに何でただいまなんて言わなきゃいけないんだよ」
「これからは一人じゃなくて私もいるのよ」
「は?」
ちょっと待て
この天使は何言ってるの?バカなの?ここ俺の部屋だよね?むしろあなた姿すら見えないよね?
それよりもいつまで俺の中にいるの?
「なあ…リーナはいつまで僕の中にいるんだい?」
「やだあ宗ちゃんたらあ、共有してるって言ったじゃないの~。だからこれからも一緒よ」
「ノオオーーー!!!」
「と、まあそれは冗談よ」
「いや冗談に聞こえなかったんだが」
「正確には天界に帰るまでは仕方なく一緒よ」
「天界?」
「そう天界よ。私のいた世界天使や神様がいるところ」
「その言い方は、もしかしてすぐに帰れないパターン?」
「鋭いわね!その通りよ!まあ玄関でってのもアレだから中でゆっくり話しましょ」
いやいや俺の部屋なのに、なに自分の部屋かのような言い方してんだよ
しかし俺も早くゆっくりしたかったのでひとまずベッドの上に座った
「それで今日俺に起こった事はなんなんだ?」
「それじゃあまずは天界の事から話すわ」
そう言ってリーナは語りだした