~四季~
結論から言うと木はちゃんと斬れていた
見た目では全く分からないのだが、斬ったであろう部分より上の方を押してみると木が倒れたのだ
その切り口はとても綺麗で微妙に潰されてる部分すらもなく、倒れた木をピッタリと乗せればくっつきそうなほどに鮮やかに切れている
こんなすげえ切れ味の刀は人界には存在しないだろう
「宗!刀って凄いんだな!俺の爪でもこんな風には斬れないぞ!」
「いやこれはちょっと想像以上に斬れる刀だな。使い方を間違えたらとんでもなく危ない凶器になりかねない」
「ちゃんと分かってるじゃないの。それが分かってるアンタが使うなら問題ないわよ」
リーナは俺の事を理解した上でこの刀を授けてくれたみたいだ
しっかりと扱えるようにならないと、自分自身がこの刀に負けるかもしれない
「ところで名前はどうするの?」
「名前?」
「人界の日本では刀に名前を付ける風習があるんでしょ?アンタの相棒になるだろうし、せっかくだから付けてみたらいいんじゃない?」
名前か…。つまりこれは俺にとってのビッグイベントの1つ!
いきなり俺のセンスが問われるイベントが発生してしまったが、ここは自信満々で名前を付けてやらないとだな
「宗はどんな名前にするんだ?」
「なるべくなら呼びやすくて、かっこいいのがいいかな。ちゃんと考えて付けてやったほうが俺自身も愛着がわくし」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「アンタいつまで考えてるのよ。もう1時間くらい経ってるわよ」
「宗~、まだかよぉ」
「悪い、やっぱりこれかな」
「決まったのか!?」
「ああ、決めた。この刀の名前は”リシア”だ!」
「リシア?なんだそれ?」
「俺達3人の頭文字を取って付けた名前だよ」
「あっははは!アンタそんなに適当に決めていいの?(笑)」
「適当じゃないぞ。これでも真剣に悩んで決めたんだからな。リーナとアレフと出会わなかったら俺はこのリシアを手に入れる事はなかったかも知れないんだ。」
「まあ、アンタがそれでいいならいいんじゃないの?」
「そうだ!かっこいい名前だぞ宗!俺の名前も入れてくれてありがとうな!」
ちょっと安直だったかな…でもカッコよく感じるし何より、俺自身で気に入っているから問題はないだろう
「これからアンタはリシアを敵に奪われないように注意しなさいよ」
「奪われる?刀を使える魔物がいるのか?」
「魔界には私達と同じ人型の魔物なんていっぱいいるわよ。それにアレフみたいに人化の魔法を使えるのもそれなりにいるわ。人型ってバランスがいいからね」
「そうか、気を付けるようにするよ」
リシアを敵に奪われて使われたらこの切れ味はヤバい
ただでさえ俺の火力アップのための武器なのに、奪われたら攻撃手段が魔法と申し訳程度の体術のみになってしまう。いや下手をすれば敵の攻撃力を遥かに上げてしまう結果になる可能性だってある。これからはコイツを守る事も戦闘において大事な事になる
「それじゃあ名前も決まった事だし、明日は早起きしてガンガン先に進むわよ!」
「おー!」
刀の名前も無事に決まった俺達はまた先へと進むためゆっくりと寝ることにした
8月16日
8月も折り返しを迎えたが未だに天界への手がかりは特になし
いくら魔界が広いにしたって、これは夏休みの間だけで終わる問題ではない気がする
そんな事を考えながらも顔を洗いながら身支度を整える
しかし昨日の夜は寝苦しかったな
湖を越えて対岸側にきた時から暑かったからしょうがないし、今は夏なんだから文句は言ってられない
ん?そういえば…
「リーナさんや、魔界に季節ってものは存在するのかね?」
ふと気になったのでリーナに聞いてみる事にした
「一応あるわよ。でもあってないようなものでもあるんだけどね」
「意味がわかりません」
「元々は人界と同じようにあったのよ。でも永い時間の間に季節っていう概念は消え去ったというのが正しいかしらね」
「お?何の話だ?」
リーナと話しているとアレフが朝食を食べながら会話に参加してきた
「つまり元々四季みたいなのはあったけど、今はないっていう事か?」
「簡単に言えばそうね。今はもう場所によって寒暖差が激しくなって暑い場所、寒い場所、丁度いい場所って感じで分かれてるだけ」
魔界にも気候変動とかってあるんだな
その時俺はこの話を気にも止めていなかったが、そんなささいな事ですら楽観的に考える事を改める出来事がこの先起こるのだった




