~魔界の歩き方~
新大陸到着から3日
俺達は特訓と戦闘を繰り返していた
魔界では比較的弱いヘラートとの戦闘、それが終わったら食事と特訓
その後また戦闘といった具合に
最初は2人がかりで何とかするのが精いっぱいだったヘラートだったが、今では1対1で戦い勝利できるようになっていた
アレフは瞬間的な魔力の発揮
俺は魔法そのものの威力のアップ
何度か戦う内に段々とコツというものが掴めてきて、それが着実に成果に繋がっている
「この短期間で大分動けるようになったわね。これならもう少し先に進んでもいいかな」
慎重なリーナが魔界のさらに先に進む提案をしてきた
ヘラートに勝てるのが最低条件だったのだろうか
確かにレベルアップは出来ているし、実感もしているが
「実際のところ俺達は魔界ではどこまで通用するんだ?」
「難しい質問ね。2人がかりで戦うのが前提ならある程度のやつならいい勝負できると思うわよ。」
2人がかりでそれでもいい勝負ってまだまだって事だよな
何事もすぐに結果を求めずにコツコツ精進あるのみか
「ご飯食べ終わったら進んでみましょう。見覚えのあるところに出れるのが一番いいんだけど」
「おう!」
今は何も情報がない以上先に進むしかない状況
俺とアレフは体力回復のためにヘラートの肉を食べる
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
最初にヘラートと戦った場所からさらに森を進む
人界では見た事ない植物が沢山生い茂っている
って言っても日本の特定の地域から滅多に出た事ないから、人界でも目にしていないものが沢山あるのだが
アレフとどんなものが食べられるか、どれが傷に効く植物でどれが毒なのかなど色々話しながら進んでいく
道中様々な魔力を感じ取るものの全てが襲ってくるわけではないようだ
これは安心してもいいのだろうか
「結構な数の魔物がいるみたいだけど、襲ってくる気配がないな。」
「ちゃんと気付いてたのね。えらいじゃない。理由はいくつかあるけど、簡単な理由はアンタ達が周辺の奴らより強いからよ」
「そうなのか?でもヘラートって魔物は他の魔物の食料的存在だったんだろ?それに苦戦してたんだから…」
「苦戦していたのは3日前までの話でしょ?今はもう1人で勝てるじゃない。ヘラートが食料とは言っても他の魔物も同じ種族で複数で狩りをするのよ。1対1で勝てる保証はどこにもないからね。だから単体で勝てるアンタ達にわざわざ喧嘩売ってくるほど、魔界の魔物もバカじゃないのよ」
なるほどな
ヘラートが食料扱いされているからといっても、別に弱いわけではない
複数で戦ってリスクを少なく狩りができるならそれに越したことはない
知恵があるかどうかは分からないけど人界の生物となんら変わらないな
とにかく危険が少なく先へ進めるならこっちとしても有難い事だ
「それでリーナ、何か変わったものは見えたのか?」
アレフがリーナに問いかける
普通に歩くよりは全然早いペースだからそれなりに進んだ気はする
だけど森から出れそうな気配は全然ない
むしろ森の奥へ奥へと進んでいっている感覚だ
「特段変わった事はないわね。今って何時くらい?」
今回から新たに俺は腕時計をするようにした
スマホだけだと何かあった時に時間すら分からなくなってしまうからだ
「今は夕方の5時をすぎたところだな」
「5時か…今日はこの辺りで休みましょう。暗くなる前にご飯を探して、探索はまた明日にしましょう。」
ちょっと早いような気がするが、リーナなりの考えあっての提案なのだろう
俺とアレフは承諾し、各々準備を始める
サバイバルも大分手馴れてきた
最初はてんてこ舞いだった簡易キャンプも今では大して時間をかけずに準備完了
パチパチと焚火が燃え、取ってきた木の実などで早めの晩飯
そういえば魔界に来てからこんな早い時間に休むのは初めてだな
すこし疲れていたんだろうか、少し眠たくなってきた
そんなところにアレフが唐突にリーナに問いかける
「どうして今日は早めに切り上げたんだ?」
俺も疑問に思っていた事をズバッと聞く
「大分森の奥まで来たからよ。魔界の夜は只でさえ危ないのに、歩き回るとさらに危険度は増すだけだからよ。」
「どうして夜が危ないんだ?」
「いい?魔界には多種多様な生物がいる。当然夜にしか行動しない奴らもいるわけよ。そういう奴らは夜にならないと魔力を感じ取れない。昼間は動かないから小さな魔力しか発していないのよ。」
「なるほどな~。でも今の俺達なら何とかなるんじゃないのか?」
「何とかなる相手ならね。その判断が昼間にはつかないから夜は動かない方が無難って事よ。戦闘もない方が探索は進むでしょう?明日は朝早めに出発しましょう。」
アレフとリーナの会話にはいくつか確信を持てる部分がある
まずいくら強くなったとは言ってもやはり俺達は魔界では大したことない強さだという事
次に今現在感じ取れる魔力だけではその存在の強さの全てを把握する事はできない
リーナが言いたいのはこれを忘れるなって事だろう
肝に銘じておかなきゃいずれ足元をすくわれるかもしれない
俺達が今いる場所はそういう所だという事を再認識した夜だった




