~海~
亀裂から北へ向かって5日目
探索や特訓をしつつも、ある程度のところまで来たので俺達は海のある東へ方向を変えて進んでいる
北を探索してはみたものの森が続いているだけで特に収穫はなく、西側へ行ったとしても懐かしきゴリリンのいた辺りに出るだろうと結論付け、ならばこのままもう海へ向かおうとなったわけだ
「北側もかなり時間をかけたけど、何も変わった物とかはなかったな」
少し残念そうに話すアレフ
何か手がかりがなければ何もないに越したことはないのだが、ここまで何もないと確かに拍子抜けな部分があるようには思う
だからと言って化け物みたいなのが出てきても困るのだが
「でもこっからは海を目指すんだぞ?海を渡ったら虎牙族の故郷的な所も近づくんじゃないか?」
そう、海を渡ればいよいよ王のエリアに近づくのだ
もしかしたら陸地に着いた時点でエリア内に入るかもしれないが、こればっかりは行ってみないと分からない
海を渡るか…———ん?待てよ?
「リーナ、海を渡るって言ってもどうやって渡るんだ?イカダか何か作るのか?」
「作らないわよ?歩いて渡るに決まってるじゃない」
何当たり前のように言ってんだコイツ
真顔で言うセリフじゃねえぞ
「ほう、歩いて渡るのか俺はてっきり泳いでいくと思ったんだがな」
「泳いでいくのもアリだけど、溺れたり敵が襲ってきたら厄介でしょ?だから歩いて渡るのが一番いいのよ」
アレフもマジで何言ってんだよ
2人の考えは俺の理解の範疇を超えている
大体海を泳いで渡るやつなんていねえよ
ましてや歩いて渡るやつなんてもっといねえよ
「それでマジメな話どうやって渡るんだ?」
「だから歩いてよ」
・・・・・・
マジだった
そういやリーナってこういう事に関しては冗談言わないタイプだったな…
つまり本当に歩いて海を渡ろうって気か
「もしかして魔力を使えば水の上を歩けるのか…?」
「あら?宗にしては察しがいいじゃないその通りよ」
とことん何でもアリになってきてるな
もうかなりの事は魔力でできるとは思っていたが、ここまで出来るとは…
「だから海が見えたら海岸でまた特訓よ2人ともしっかり水の上を歩けるようになったら海越えの時来たれりよ」
もう俺は常識を捨てた方がいいのかもしれない
普通の考えではある意味通用しないらしい
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それから約2日ほど経過した頃、俺達は気付いた
僅かだが潮の香りがする
「アレフ!リーナ!」
「初めて嗅ぐ匂いだこれが海の匂いなのか」
「もう近いみたいね一気に抜けるわよ」
俺達は海がすぐ近くにあると踏んで走るペースを上げた
段々と潮の香りが強くなっていき、足元の草の背丈も伸びてきて水分を多く含んでいる
やがて木々を抜けるとそこには砂浜が、そして広大な海が広がっていた
「海だ…」
人界と比べても何ら変わりない広く青い海
静かながらも潮の満ち引きを感じさせる波
今俺は本心で思う
魔界ってやっぱり綺麗なところだ
意外と魔界が好きになってきたのかもしれない
「この先に俺の本当の故郷がある…虎牙の先祖達はこんな広い海を渡って来たのか」
「じゃあ無事に海に着いた事だし、早速水の上を歩けるように特訓始めるわよ」
「ああ、早くやろうぜ。早くここを渡って新しい大陸に行きたいんだ」
高揚しているのかアレフは特訓にすごい前向きになっている
だが俺が問題だと思っているのは別の事で、大陸までどれくらいの距離があるのかもわからない事
もしかしたらリーナは知っているのだろうか
「次の大陸までどれくらいの距離があるのか分かるのか?」
「分からないけど、そう遠くない事は分かるわよ」
「何で遠くないって分かるんだよ」
「アレフのお父さんが言ってた事を思い出してみなさい。『このままでは虎牙族が滅びてしまうと悟った当時の長は、戦えない一部の者達を遥か遠くの地へ移住させる事を決めたそうだ』戦えない一部の者っていうのは、身体能力が著しく低い者、つまり高齢や赤ん坊もいたと考えるのが普通じゃないかしら?そんな状態で長い距離の海を渡れるわけがないから、多分だけど別の大陸は想像よりずっと近いわよ」
言われてみると筋が通っている
あの話の中でコイツはここまで考えれていたのか
「考え方も頭の回転もすげえな、あれだけの会話でここまで。これが年の功ってやつか」
「宗ちゃん?次言ったら天界に着いた時ぶん殴るからね?」
ニコニコしながらもリーナが怒っているのが分かる
いくら天使でも年齢の話はタブーみたいだ
気を付けよう




