~変化~
品出し、品出し、とにかく品出し
今日は俺のバイトする『アカギスーパー』月に1度の超特売日
とにかく品出しをして、また別の商品の品出しを延々とする
「今から半額セールを始めまーす!!ご希望のお客様は総菜コーナーにてお並びくださーい!!」
次々と商品が売れていく中、さらに半額セールだと!?総菜の責任者はふざけているのか!?
「田鹿くん、総菜の半額コーナーに回ってくれるかな?」
おいおい、リーダー様よ、味噌や醤油の特売品を陳列してる最中に何を言い出すんだ…どう見ても今俺は手が離せる状況じゃ…
「半額シールを片っ端からつけていってね!よろしく!」
「了解でーす…」
もちろん反論できるはずもなく俺は地獄の半額セール会場へ導かれた
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「今日もお疲れ様でした…」
「みんなお疲れ様…明日はお店が休みだからゆっくり休んでくださいね…」
「お疲れ様でしたー…」
皆顔が死んでいる
バイトリーダーも各コーナー責任者も、もちろん俺を含む他のバイトも皆やつれている
ほんの数時間のアルバイトがここまで疲労をおもむろに出してくるとはアカギスーパー恐るべしだ
店長たちは長年やっているが、毎月超特売日だけはどうしてもこうなるらしい
いやいやこのスーパー客が来すぎでしょ
「田鹿君お疲れ様!今日も大変だったね!」
「あ、桜田さんお疲れ様です」
「本当にお客さん多かったねー。おかげで2キロくらい瘦せた感じがするよ」
「ははは」
俺を労ってくれる2つ年上で大学生のお姉さんの桜田 暦
長い黒髪のさらさらストレート
とても整った顔立ちの一言でいうならば天使みたいなお姉さん
いつも他人を気遣える優しい女性
スーパーの看板娘みたいな存在だ
「そういえば高校はもうすぐ夏休みだね。田鹿君はどこかに遊びに行ったりするのかな?」
「んー特にそんな予定はないですね。休みの分バイトや趣味の時間を満喫するくらいじゃないですか」
「そうなんだね。高校生ってもっと遊びたがる感じかと思ってたよ」
「桜田さんは高校時代はいっぱい遊んでたんですか?」
「私は結構遊んでたよ!友達と海に行ったり夏祭り巡りとか色々やったなー」
「へえ桜田さんって、意外とアウトドアな人だったんですね」
本当に意外だった
どうみてもお嬢様にしか見えないからてっきりインドア派かと思いきや、かなり遊んでたらしい
それでもそんな感じがしないのだから人を見た目で判断してはいけないといういい見本だ
「でもどれだけ遊んでても彼氏はできなかったよー」
「桜田さんモテそうですけどね」
「なんかこの人!っていう人がいなくてね。別により好みして選んでたわけではないんだけど、そんな事より遊んでいたかったのかな」
「つまり今も彼氏はいないって事ですか?」
「そうなるね。だから夏休みに暇な時は遊びにでも誘ってね」
桜田さんの現状を聞き、他にも色々話をしながら俺たちはスーパーを出た
時刻は21時30分、もう空も暗い
夏がすぐそこまで迫ってきている
都会にしては珍しく星がキラキラしているように見える
「じゃあまたバイトでね。田鹿君おやすみなさい」
「はいお疲れ様でした。おやすみなさい」
彼女と別れ寮に戻るために自転車に乗る
いつもの帰り道である人通りのない堤防沿いを呑気に自転車で走る
はあ…桜田さんって本当かわいいっていうか綺麗だよなあ
夏休みに遊びに誘ってねだなんて…
俺は期待しちゃうでしょうが!でも誰にでも優しいから俺に対しても別段特別ってわけではないんだろうなあ
思春期真っ盛りな幸せの妄想をしながら自転車をこぐ
ああ星が綺麗だな…こんな星を一緒に見てられたら…
こんなの妄想だけで身体が火照ってきてしまうぞ
そう、体の外側から熱く火照って…外側?ちょっと待て!学生服が燃えてる!?
「え?熱っつ!なにこれ…」
突然だった
本当に何の前触れもなく学生服が背中から燃え出している
すぐに自転車から降り制服を脱ぎながらふと後ろを振り返る
振り返った先には信じられない光景が見えた
火の玉…?いやそんな軽く言えるものじゃない
火そのものが俺に向かってきていた
それを見た時俺は動きが止まった
考える事もできずただ頭の中が真っ白になった
こんな状況で何かを考えられる人間なんていないのだろうが
火は当たったと同時に俺の身体中に燃え広がった
「うおわあぁぁ!!!あ!熱い…うああ…」
生涯で初めてのレベルで叫んだ
しかし叫んでも意味がない
ここは人通りが本当になく、誰かが水をかけて助けてくれるわけもない
「ぐああ…ぁぁぁ…」
呼吸ができなくなってきて胸が、喉が苦しい
とてつもない熱さと苦しさの中で倒れ、もがき苦しむ
火を見てから1分もたっただろうか
もう声を上げる事もできない
腕や足を動かす事もできず、熱さも感じなくなってきた…
意識が遠のいていく…目も見えなくなってきた時に星がキラリと光ったように見えた
ああこれで俺の人生も終わりか…たった16年…こんな終わりかたで…
そして眠りにつくように意識は完全に途絶えた
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ドカッ!!
「…っと!ちょっとアンタ!起きなさいって!」
何だ!?今蹴られたような衝撃が!?痛っ!くはないな
「早く起きなさいって!時間がないのよ!」
声と同時にまた蹴られた感じがする!?というよりここはどこだ!?俺は確かいきなり身体に火がついて…それで…思い出すとゾワっと身震いし、身体がガクガクと震える
「いい加減にしなさいよコラー!!!」
ドカッ!ベシッ!!
またもや衝撃が走るが、これは確実に蹴られている!しかも今度は2発!
ってここはどこだ?身体を起こすと何もない白い空間が広がっている
そして目の前には女の子?が1人
「俺は死んだのか…?」
「やっと起きたわね。率直に言うけどアンタはまだ死んでないわよ」
そう告げられ俺は訳の分からないまま立ち上がった
次回なるべく早めの更新を心掛けます。