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魂の天使  作者: らんペル
2章~日常と非日常~
22/56

~全力~

 また俺達は二人で睨み合っている


 さっきの手合わせから仕切り直してもう一度手合わせをする事になったからだ


 ただし今回は条件付きで、その条件はアレフが本当の本気で闘う事


 虎牙族最強のアレフの真の力が今ここで見れるって事だ


 俺の条件は加護を発動させた状態でその感覚を体で覚える事


 リーナ曰くかなり動けるようにはなってきているがまだまだだという



「本当に本気でやっていいんだな?宗が死んじまっても責任は取れないぞ?」



「ま、待ってくれ、リーナさん!アレフが本気を出してはあの宗という子は…」



「心配しなくても大丈夫よ。いざとなったら私がいるし、それに私の加護はそんなに弱くないわよ」



「し、しかし…」



「ううう…おおおおお!!!」



 アレフは叫び声と共に身体を変化させていくあのサーベルパンサー形態か


 ん?あっサーベルタイガーか!それならしっくりくるってそんな事考えている場合じゃない



「フウゥ……」



 アレフの変身が終わった乗って来た時よりも、そして今まで出会ったどんな敵よりも強い力を感じる


 魔力も多少は感じるがそれ以上に強く感じるこれは闘気というものだろうか


 それにこの威圧感


 正直リーナの加護なしなら動けもしなかっただろう



「さあ行くぞ宗!!!」



「来い!」



 飛び掛かってくるアレフ


 その速度はさっきとは段違いだ


 加護がある時はガーゴイルなんてとんでもなく遅く見えたのにアレフは普通に速い


 だが見える速さだから落ち着いて対処……!?これはヤバい!



 俺はアレフの攻撃を躱した


 あれは喰らったらヤバいそれは獣化したアレフの足にある鋭い爪



「よく避けたな、この一撃で勝てると思ったんだけどな」



「アレフさすがにその爪は反則じゃないか?」



「何言ってるんだ勝負に反則もクソもないだろう。これは手合わせだが普通の戦闘と何ら変わりないと俺は思っているぞ」



「アレフの言う通りね。甘いのは宗、アンタよ。戦闘なら卑怯も何もない。勝たなきゃ自分が殺されるだけよ。相手を殺すかどうかは自分が勝った後で考えればいいの。まずは勝つこと。この世界ではこれが戦闘での最優先事項よ」



 確かにそうだった


 ガーゴイルやゴリリン達も最初から俺を殺す気でかかってきていた


 これが魔界…こう思うと人界がどんだけ平和だったのかよくわかるな


 そうか、甘かったのは俺の方か



「悪かったなアレフちょっと俺が腑抜けた考え方だった。今からは俺も全力で戦う」



「それは楽しみだ。俺自身全力を出したことがないから、宗相手なら俺も自分の力がどんなものか分かる」



 魔力を脚と腕に集め俺はアレフに突撃する


 脚に集めた魔力で瞬間的にアレフとの距離を縮め殴りかかる


 俺のパンチがアレフの体に当たる



「グフッ…!」



 効いている!


 俺のパンチは虎牙族にも通用する!


 一瞬で見極めたところからすかさず連続でボディブローを叩き込んでいく


 アレフの体は後ずさりしながら少しずつズレていく


 しかし…



「グウオオオォ!!」



 強い咆哮と共に距離を取る


 アレフの闘気が最初よりもずっと高まっている



「楽しいぞ宗!こんなにも効く攻撃を喰らったのは初めてだ。次は俺の番だ」



 嬉しそうに話すアレフだが俺は攻撃の手を緩める気はない


 またアレフに飛び掛かり渾身のパンチを繰り出す


 しかしそれはアレフに弾かれ、逆にアレフの体全体を使った突進攻撃が俺に当たってしまう


 すごく強い衝撃


 車に轢かれるってこんな感じなのかと思うほど俺の身体は吹き飛ばされる



「痛ってえ、これが虎牙族の攻撃力かよ。加護がなかったら一発で身体がバラバラになってたぞ。やっぱり強いな」



「フフ…宗もさっきより断然強いぞ。しかし俺の獣化もそろそろ限界だ。思ったより体力の消費が激しいからな。こんな事は初めてだよ」



「じゃあ次で終わりにさせてもらうぞ!」



 右手に魔力を集中させ全力の右ストレートを叩き込んでやる


 俺の意図をアレフは察知したのか、こちらを睨み突進体制をとっている


 両者共に最後の一撃を撃つために相手を見据える


 先に動いたのはアレフだった


 初動からフルスピードで俺に突っ込んでくる


 ちょっとでも加減したら俺は確実に吹っ飛んでしまう以上どっちの力が上か正面衝突するしかない



「うおらああぁぁ!!」



 ズドオォォン!!



 本気の右ストレートをアレフの額目掛けてぶち込んだ衝撃が俺の全身を駆け巡り吹き飛ばされそうになる


 ここで退いたら駄目だ


 絶対に踏ん張って勝つ


 しかしあまりの衝撃の強さに俺の身体は宙に舞った


 宙に舞いながらも視線を移すとアレフはそのまま走り抜けたところで倒れた


 地面に叩きつけられた俺は次第に意識が薄れていく



「これは勝負アリね」



 リーナの一言を聞き完全に意識が飛んでしまった


 俺が目覚めたのは僅か数分後


 起き上がると隣にはリーナがいた



「中々やるじゃない!ここまでアンタが出来るとは正直思ってなかったわよ」



「痛てて…勝負は!?アレフはどうなった!?」



 まだ身体中が痛むが、周りを見てみると俺達が戦っていた草原の一部は地面がむき出しになっていた


 その先には獣化が解けたアレフが横たわっており、長の親父さんが座っている



「あれ?アレフは?」



「安心しなさい、気絶してるだけよ。大したダメージは受けていないわ。起きたなら先にアンタの治療を始めましょうか」



 治療って…あれ?右腕が動かせない


 動かそうとすると激痛が走る


 そっと右腕に目をやると明らかに変な方向に曲がっている


 これは完全に折れてるよな


 それ以外にも傷がついていたりと結構酷い感じがする



「じっとしてなさい」



 そういうとリーナは俺の身体の中に戻っていく


 体中から暖かく優しい魔力を感じる


 魔力に包まれた俺の身体はみるみる内に傷がふさがり、右腕も動かせるようになった


 しかしまだ若干の痛みはのこっているが、治療が終わってリーナがまた外に出てきた



「これで終わり。骨は元通りになったと思うけど、あと何時間かはあんまり動かしちゃ駄目よ。いくら魔法でも一気に治すと身体に負担がかかるから。後はアンタの治癒力と魔力が自然に回復してくれて痛みも引いてくると思う」



「ありがとう。アレフの治療はいいのか?」



「アイツは本当に気を失っているだけだからいいのよ。それよりそろそろ起こしにいきましょう」



 俺はアレフに駆け寄り声をかける


 何度か呼びかけると目を覚ました



「うーん、宗?俺は?」



「気を失ってたんだよ。起きれるか?」



「ああ…そうか俺は負けたのか。虎牙族最強とは言ってもまだまだだな」



「まあ手合わせはお互いに気を失ったから引き分けね。でも二人ともちゃんと自分の力を出せたじゃない」



 リーナの言葉を聞きアレフは優しく微笑んだ



「俺も自分にあんな力があるとは思わなかった。それでも宗には通用しなかったが」



「そんな事ないわよ宗はあくまでも私の加護があってあの強さだから、普通にやればアレフの方が何倍も強いわよ」



「ハハハ、そう言われると気が楽になるぞ」



 こうして手合わせ試合は終わった


 アレフはとても強くしっかりと自分を持った者だった

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