~昔話~
「さて、ではまずは何が聞きたいのか教えてくれるかな?」
「そうね、まずはあなた達虎牙族がどうしてこんな所にいるのかという事からね。それと4匹の王について知っている事を教えて」
こんな所って…確かに裕福そうな村ではないけども
「それは話せば長くなるが」
「構わないわよ。急いでいる訳じゃないから」
「そうか、では少し昔話をしようか」
あっこれ長くなるやつかな?
俺はご飯でも食べながら聞いておこう
まあご飯とは言ってもアレフの用意してくれた木の実とかなんだけど、いただけるなら有難くいただいておこう
「今より数百年も昔の話になる。我ら虎牙族はある魔物と戦っていた。その戦いは長きに渡りどちらかが滅びるまで続くのではないかとまで言われた」
リーナが珍しく真剣な顔をして黙って聞いている
よっぽど大事な事なんだろう
俺も一応聞いておかなきゃな
「だが戦いが長引くにつれて徐々に虎牙族の方が分が悪くなっていった。このままでは虎牙族が滅びてしまうと悟った、当時の長は戦えない一部の者達を遥か遠くの地へ移住させる事を決めたそうだ」
俺から見たらだけどアレフって結構強そうだよな
そんなアレフのご先祖一族で戦闘をしても勝てそうになかったって、相手はそれ以上に強かったんだな
「そして長い戦いの末決着が着いた。勝ったのは相手の魔物。虎牙族は皆疲弊しきってしまい遂に降参したのだ。最早殺される運命しか待っていないと思い込んでいた長は、その魔物から衝撃の言葉を聞いたそうだ」
「いい暇つぶしができた…。感謝するぞ虎牙族よ。また遊び相手になってくれ」
その言葉を聞いて俺は反射的に質問を投げかけた
「暇つぶし……?当時虎牙族は何人くらいいたんですか?」
「皆が一度に戦った訳ではないが、その戦闘に参加した虎牙族は合わせて100を超えていた。だが相手の魔物はたったの1匹。そう、たった1匹の魔物に1つの種族は完敗したのだよ。しかし奇跡的に虎牙族に死者はいなかった…。今となって考えれば奴は遊びと言っていた、またとも。殺さずに遊び相手として生かしておいたと考えるのが妥当かもしれん」
「その昔虎牙族は種族の存亡をかけた大きな戦いに挑み敗れた。しかし種族が全滅する事はなく、大戦前後何組かに別れその地を去った。私は天界にいる時にそう聞いたわ。それで別れた内の1組が…」
「そう、私達だよ。正確には私の祖父達の代だ。この話は私が小さい頃から聞かされたものでね。だから私はその魔物を見た事がない。しかし名前や特徴は代々語り継がれてきた。白く輝く大きな身体、とてつもなく固く鋭い牙と爪、深きながらも神々しい青い眼、その名は…」
「シーヴァ、四王獣の1匹、白虎シーヴァね」
「知っておったか!その通りだ。リーナさんだったか、その名を知っておるという事は君は、いや、あなたは本当に天使様なのだな」
「あら、信じてなかったのね。でも今の状況じゃ無理もないかとりあえずこれを見て」
リーナはそう言って俺が食べている木の実をその手に取ろうとした
だが案の定その手は木の実をすり抜けた
「こ、これは一体…」
アレフやアレフの親父さんはビックリした顔をしている
無理もないか、幽霊みたいなもんだからな
「確かに私は天使よ。でも今はちょっと訳あって身体を、失い魂だけになって宗の身体にお邪魔しているの」
「た、魂だけに…」
「今の私の姿は魔力が高い者にしか見えない。でも元々それなりの魔力も力も持っている虎牙族のアナタ達には普通に私が見えていた。アレフと最初に会った時も、そして長のアナタもね。きっとそれが私が天使に見えなかった理由の1つね」
「何と天使様にはそんな力まであったとは、これは驚いた。もしかしたら天使様ならシーヴァにも勝てるのでは…」
「確かに私はあなた達虎牙族よりも強いわ。でも残念だけどシーヴァは私よりも更に強い。昔ちょこっと戦ったけどその時に力の差を実感したわ。本当に化け物みたいな強さで天界でも悩みのタネなのよ」
「むう、それ程だったとは…」
「なあリーナ、俺と宗が戦ったらどっちが勝つと思う?」
アレフが唐突に聞いてきた言葉に俺は吹き出しそうになった
何でそこで俺とアレフになるんだよ
「あらどうしたのアレフ?ちょっと戦ってみたくなったの?」
「ああ、この村で一番強いのは俺だ。そんな俺でも宗はかなり強そうに見える。でもリーナはそれ以上に強くてシーヴァってやつはもっと強いんだろ?なら今の俺はどれくらいの位置にいるのかって気になってな」
「虎牙族の性ってやつね。じゃあ一戦やってみればいいじゃない」
ちょっとリーナさん!?シーヴァってやつの話から何でこうなるんだよ
「よし決まりだ!じゃあ宗、ちょっと外で手合わせしようぜ」
「おいリーナ…」
「大丈夫よ。それにアンタもこういう時にしっかり経験値を稼いで実践慣れしておかなきゃ。強い敵が出てきた時に足が動かなくなるわよ」
何故かアレフと手合わせする事になってしまった
勝てる気はしないがやるしかないようだ
気は進まないが俺は立ち上がり村の外へ歩きだした




