~種族~
今俺達は亀裂を通って仮の南に真っすぐ進んでいる
北の方は草原が続きコビル族の集落を通ると段々と森になっていったが、南はとにかく草原が続いている
そっとスマホを取り出し時間を確認すると夕方5時を過ぎていた
「かなり歩いたけど景色が変わらないな」
「そうねー、結構進んだはずなのにあんまり進展なし」
「そうだな、ところで魔界の夜ってどれくらいから暗くなるんだ?今でもまだ全然明るいけど」
「大分遅いわよ。ほとんどのところは時間で言えば21時くらいにやっと暗くなってくる感じね」
「そうか、日が暮れるのが遅かったら大分探索が捗ると思ったけど、こうもただ草原続きじゃな」
「じゃあトレーニングがてらちょっと走ってみましょう」
「別にいいけど、ついてこれるのか?ゴリリンと戦った時めっちゃ速かったし、これでも陸上で今の学校に推薦もらったから自信はあるぞ?」
「それは私の加護のおかげじゃない。私は飛べるから全然楽勝よ。でもアンタはただ走るだけじゃ駄目よ。脚に魔力を流してそれを維持しながら走るのよ」
「そうするとどうなる?」
「魔力の操作が上手くなるし、一定量を維持するコントロールの特訓になるわ。それに脚力を強めるイメージで魔力を流していれば普段よりずっと速く走れるのよ」
なんだそれは魔力って使い方次第で何でもできてしまうのか
魔力操作を極めたらオリンピックに出れそうな予感がする
平和な事を考えながらも練習がてら走ってみるとかなり速いスピードで走れる
体感的にいつもの3倍、いや4倍以上速い気がするしかも全然息切れしないぞ
「なあこれって何で疲れないんだ?」
「魔力で脚力を強化しててさらに私の加護で身体そのものが強くなってるのよ。だから今みたいに軽く走ってるくらいなら負担は歩くのとさほど変わらないわよ」
「魔力と加護ってすっげえな」
「このペースだと結構探索できそうね」
「岩が増えてきたな」
走り出す事数十分くらいたった頃、草原に岩場が増えてきて段々地面も砂利が混じってきていた
これはいわゆるエリアチェンジが近いってことか
このまま走ればまた見たこともない景色が広がる気がする
「止まって宗!!」
突然のリーナの声に俺は急ブレーキをかける
気が付けば岩山がかなり多くなっている地帯に足を踏み入れていた
「いつの間にかこんなところに着いてたんだな」
「そうねそれよりアンタ気付いた?」
「何に?」
「ホントまだまだね。魔力を感じるのよ」
「本当か?俺は全然感じないけど」
「まあまだ距離があるからね。でもガーゴイルやゴリリンよりも強いわよ」
「やっぱり戦闘になるかな?」
「まあとりあえず魔力の主に会ってみないとわからないわね。ゴリリン達みたいに複数じゃなくて一つだけだから。もしかしたらある程度知能のあるやつかも」
「どうしてそんな事が分かるんだ?」
「こんなところに一つしか感じない魔力でそれなりに強いってなると、ここに生息してるわけじゃない可能性が高いのよ。ここまで走ってきても食料になりそうな魔物がいなかったじゃない?つまり魔力の主は何かしらの理由があって単体でここまで来たって事」
リーナって意外と頭いいのかもしれない
というより推理力が高いと言った方がいいのか
一つの魔力を感じ取っただけでそこまで考えられるってかなり場慣れしている感じがあるな
「ここからは歩いて行きましょう。なるべく魔力を抑えながら行くのよ」
「魔力を抑えなきゃいけないのか?」
「向こうもこっちの魔力を感じ取れる奴だった場合先制をとられたら厄介でしょ?それにアンタの反応が遅れたり色んな事が重なったら最悪のパターンもあり得るのよ」
「はあ、色々考えてるんだな」
「ていうか魔界では死にたくなかったら常識よ。私の加護があるからある程度の攻撃なら耐えれるからアンタは魔力でガードしなくても何とかなりゅわ…」
「最後に噛むなよ」
「うるっさいわね!!」
先へ歩きながら進む
「おっ、俺にも魔力が感じ取れるぞ」
「これだけ近づいても魔力を隠そうとしないって事はあんまり頭が回るやつじゃないのかもね」
「それじゃあ」
「ええ、こっちも魔力を張りながら走ってみましょう」
リーナに言われ俺は身体を魔力で覆う
これで防御はひとまず大丈夫だ
後はこの魔力の持ち主が話ができるやつかどうかって事だが
岩場を駆け抜け魔力の反応がある場所にたどり着いた見渡すと人?らしき者がこちらに背を向け1人立っている
「誰だ!?」
気付かれた
こっちを振り向いたその存在は明らかに人間のような見た目だ
短髪で黒髪
顔はハッキリ見えないが声からして男だろう
「気付かれた以上話してみましょう。魔力の防御は解かないようにしなさいよ」
「分かった」
俺は人間らしき者に近寄り声をかける
「とりあえず話ができないか?こっちに敵意はない」
無駄な戦闘はご免だから、まずはこちらに戦闘の意思はないことを伝える
「お前は何者だ!?」
「俺は宗、田鹿宗って名前だアンタは?」
「俺の名前はアレフだ。お前は俺の敵か?」
「いや、敵じゃない。俺はこの辺りを探索していただけで争う気はない」
「そうか、こちらも争う気はないから敵でないなら問題ない」
アレフ…人間なのか?見た目は普通に人間だけど、でも尻尾あるな…獣人ってやつか
「宗は何族なんだ?」
「何族って言われてもな…俺は人間だ」
「人間?聞いたことない種族だな。そっちの女は?」
「え?アンタ私が見えるわけ?」
「何を言っているんだ?そこにいるんだから見えるに決まっているだろう」
「あらま、私はリーナよ。天使のリーナ。アンタこんなところで何をしているのよ」
「天使だと!?知らんな。俺はこの辺りの生態を調査しているんだ」
何だコイツは
でも普通に話が出来るし悪いやつじゃなさそうだな
それに生態調査してるって事は何かしらの情報を持っているといいんだけど
「なあアレフ、俺達はこの辺は初めて来るんだけどアレフはこの辺りに住んでいるのか?」
「そうだ。ここから少し走ったところに俺の村がある。宗は何でこんなところにいるんだ?」
「実は俺たちは…」
これまでの経緯を俺はアレフに話した
普通ならいくつか嘘を混ぜたほうがいいのだろうが、ここで嘘を混ぜても得はないと思ったから正直に話した
「ふむ、よく分からんがリーナが帰るために王を探しているか…。一つ心当たりがあるな」
「ホント!?アレフちゃんってば流石じゃない!!」
アレフちゃんっておいおい
リーナはアレフの心当たりがあるという発言を聞いた途端に一気に上機嫌になった
「それなら俺の村へ来るか?心当たりの話なら俺より詳しい親父に聞いてみよう。夜になる前に戻ろうと思っていたから宗達も来るといい。歓迎するぞ」
「本当か!?それは助かる」
「よし。では俺に乗れ」
「乗れ?」
そう言うとアレフは魔力を強め、全身を覆った魔力が高まりアレフの身体が変化していった
変身した
アレフは大きな2本の牙が特徴的な虎みたいな獣になった瞬時に俺は身構える
これはサーベルパンサーか!?でもパンサーって豹だよな?虎に大きな牙??
「安心しろ、別に宗達を襲ったりするわけじゃない。この姿になった方が走ったら速いんだ」
「これがアンタの本当の姿ってわけね。そしてアンタの種族は虎牙族」
「そうだ、よく知っているな」
「アンタの種族は天界では中々評判いいからね」
「俺も天界や天使の事が気になっているから、村でもっと話を聞かせてもらいたい」
「オッケーよ。それじゃ宗、アレフに乗って村に行きましょう」
「分かったよ。じゃあアレフ、申し訳ないけど頼む」
魔界にはやはり見たこともない生き物がたくさんいる
自分の常識なんて一切通用しない事を改めて思い知らされ、アレフと虎牙族の村へ行くことになった




