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魂の天使  作者: らんペル
2章~日常と非日常~
15/56

~圧勝~

「はあ、はあ、キツイなこの森」


「まだ入ったばっかで何へばってんのよ、だらしないわね~」


「いや、さすがにこの道はキツイ」



 道がキツイ


 いや最早これは道とは呼べないだろ


 ただの獣道じゃねえか


 とにかく微妙な天然の段差や緩やかな坂、それに固い土と柔らかい土が混じって足がとにかく疲れる



「まだ森に入って10分くらいじゃないのヘタレにもほどがあるわよ」


「お前はいいよな、幽霊みたいなもんで疲れないし浮いてられるから」


「じゃあアンタも魂だけになってみる?」


「いや、遠慮しておきます」



 グダグダ言いつつもとにかく進む


 次第に俺でも感じ取れるくらいに魔力が近くなっているのが分かる


 コビル族が言うには話が通じないらしいけど、一体どんな化け物がいるのやら



「宗!後ろに飛んで!」


「え?」



 リーナの声で咄嗟に後ろにジャンプした瞬間、目の前に石が飛んできた


 いや1つだけじゃない、上を見上げるといくつもの石が飛んできていた



「リーナ!これは一体なんだよ!?」


「きっと魔族ね。私達の存在に気付いて話し合う気もなく、いきなり攻撃してきたのよ!」



 なんじゃそりゃ!魔界ってのは何でこんなに物騒なんだよ!!グチグチ言っている間にいくつもの石は俺達目掛けて飛んでくる


 しかし…



「あーもう石が多くてめんどくせーな!リーナ、何とか一気に進めないか?」


「できるわよ。魔力で全身を覆うようにしてみなさい。魔力が身体を守ってくれるイメージでやるのがコツよ」


「つまりバリアーのイメージだな」



 よく漫画とかアニメで見るあれと同じだ


 イメージは今までで一番たやすい


 体内の魔力が外に出て、それを逃がさないように身体の周りで留める



「こんな感じか?」


「そうね。まあ石程度ならそれで大丈夫。ただそれを解除しちゃ駄目だからね。魔力で防御力を上げている状態だから解除したらただの人間の防御力になるわよ」


「よし分かった。それじゃあ一気に突き進んでやる!」



 飛んでくる大量の石に対して一切の躊躇を見せずに一気に走る


 石の雨の中を駆け抜けると開けた崖の下に出た



「結構な数がいるわね」



 森を抜けた目の前には見た事のない生物が10匹ほどいた


 コイツらは何だろう


 黒がかった緑色の身体にガーゴイルに似たような顔をしてはいるが、翼はなく小さめの体格



「リーナ」


「コイツら知らない。やっぱり今まで見た事もない魔物ね」


「とりあえず話は通じるの…」


「ギシャー―――!!!」



 話している途中に集団の中の1匹が大声で叫んだ


 その叫びを皮切りに魔物の群れが俺に襲い掛かってきた



「あーーーもう!!何で話が通じねえんだよぉ!」


「アンタってば魔物にモテモテじゃない」


「俺は健全な高校生男子だー!魔物にモテても嬉しくない!」



 それにしてもあのガーゴイルの時と同じでコイツらの動きが遅く感じるな


 これもリーナの加護のおかげなんだろう


 え?リーナってめっちゃ強くね?



「コイツらの名前が分かんないわね。ん~…名前はゴリリンにしましょう」


「何でゴリリンなんだよ!そこは普通ゴブリンだろ!」


「ゴブリンはちゃんとそういう種類がいるから駄目よ。それに顔がゴリラに似てるじゃない」


「あーそんなのはどうでもいいから!コイツらどうすればいいんだよ」



 ゴリリン?が数匹殴りかかって来るのを避けていく


 次は右、そんで左から、ゴリリンの動きがよく見えるし動きが遅く見えるから避けるのは容易い


 だけど…



「しょうがないから倒すわよ」


「いいのか?」


「あっちはアンタを殺すつもりよ。やらなきゃやられる。魔界ではそれが常識だから問題ないのよ。それでもやっぱり話し合いで済むならそれのほうがいいんだけどね」



 一瞬リーナが悲し気な顔を見せたように見えた


 だけど今はゴリリンの群れだ



「うおおお!!」


「ぐぎゃ!」



 俺はゴリリンに向かって拳を振った


 拳が当たった1匹は崖の壁まで飛んでいき激突した


 今のは手応えアリだ


 死んではいないだろうが失神くらいはしたはず



「ギギャー!!グガー!!」


「ギギギ!!」



 何だ?1匹が叫んだら他の奴らがまるで陣形のように集まった


 奴らなりの戦法か?一体何をする気だ



「ギー、ギャース!!!」



 司令塔のような奴が叫ぶと同時に全員で石を投げつけてきた


 しかし森を抜けてきた時と同様に石は効かない


 どうやらゴリリン達は知能があまり良くないようだ



「多分ゴリリン達がコビル族の言ってた魔物で間違いないわね。迷惑かけるなって言っても聞かないだろうけど、全滅させるのはちょっとね」


「何かいい方法はないのか?」


「うーん、アンタが一回でいいから圧倒的な強さを見せつければ、あんまり遠出しなくなるんじゃない?」


「圧倒的な強さか、どうやればいい?」


「簡単よ、司令塔のゴリリンに勝てばいいのよ」


「また無茶な事言って、あの数をどう突破すればいいんだよ」


「普通に走って、腕やら首やらを掴んでやればいいのよ。アンタには私の加護が備わってるから結構速く走れるわ。簡単でしょ?」



 やっぱりバカな事言ってるよ


 でも不思議とバカな事とは思えなくもなってきている俺がいる


 それはきっとできる事なんだろう



「ギャー!!!」



 相変わらず石を投げてきている


 ゴリリン達に向かって俺は走り出す


 石が止まって見えるように感じる


 これは俺が速いのだろう


 リーナの加護って一体どこまで凄いんだよ


 そんな事を考えている間に司令塔の1匹との距離が一瞬で詰まった


 すかさず俺はゴリリンの首を腕で挟み、右手を掴んで拘束した



「ギ…?」


「ギゲ…?」



 ゴリリン達は何が起こったのか分からないような表情で司令塔の方を向く


 司令塔のゴリリンも何が起こったのか分かっていないようだ


 全員がこっちを見たのを確認して、殺すつもりで睨み付けた



「…ギギ…」



 ゴリリン達は観念したのか皆うなだれているように見える


 腕を離し解放すると司令塔のゴリリンもその場にへたり込む


 これは間違いなく条件達成だろう


 誰一人殺す事無くこの戦いを終わる事ができたのだ

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