~遭遇~
「それでは明日から夏休みです帰省する人、寮に残る人、みんなそれぞれだと思いますが、また2学期に、みんな揃ってこの教室で会えるように楽しく過ごしてくださいね」
担任の先生の有難いお言葉をいただき、俺たちは夏休みに入る。
ついにリーナとの約束である魔界探索を本格的に始めていく時が来た
「じゃあな宗、また連絡するから遊ぼうぜ。バイトも頑張れよー」
「僕はまた2学期でだね。じゃあね」
「おう、2人ともまたなー」
俺と悠斗は市が違うところから進学したが、比較的実家から近いので寮に残る
智は他県からきたので夏休み中は実家に帰るみたいだ
俺もお盆辺りには一度実家に帰ろうかと考えている
帰り道の堤防沿いを自転車で駆け抜ける
ついこの間この道でいきなり襲われたんだよな
それで色々あって、今でも生きている
ああ生きてるって素晴らしい
「ところでリーナさ、魔界の探索って言ってもどこをどう探すんだ?」
「そうね~、まずはあそこの草原がどこなのか知らなきゃいけないわね」
「草原がどこなのか?」
「そうよ。天界では魔界を4つのエリアに分けてるの。まずは私達がどのエリアにいるのか把握しなくちゃいけないわ。それさえ知れれば天界への門に行けるのよ」
エリア分けか
魔界のそれぞれの国みたいな感じなのかな
それでも天界への手がかりがあるなら探索するしかないな
「分かったそれで自分がいるエリアってのはどうすれば判断がつくんだ?」
「エリアにはそれぞれ最強と呼ばれている王がいるわ。そいつの魔力を探知して判断するわ」
「王…エリアの王って最強って言われるほど強いのか?」
「アイツらの強さはキモイわよ。大天使が3~4人がかりでやっといい勝負ってところね。まあ相性もあるけど、とにかく単体でみたら間違いなく最強レベルよ。今のアンタなんて殺気だけで昇天確定」
「そんなにヤバいのかよ!もしかして天界を襲ったのってそいつらじゃないのか?」
「私もそれは考えたけど、違うと思うわ」
エリアの王達が天界を襲ったんじゃないのか?
そんな神様の結界を破れるくらいだから、他にそんな事できるやついそうもないのだけど
「どうして王達じゃないって思うんだ?」
「性格よ。アイツらの性格上、協力して天界を襲うなんてありえないのよ」
「どういう事だ?」
「みんな魔界でそれぞれの目的があるのよ。天界が4つに分けたエリアは、いわばアイツらそれぞれのナワバリなの。そして強さが拮抗しているからお互いに戦闘を仕掛けられない」
「そうか、もしどいつかが戦闘をしようもんなら…」
「間違いなく他のやつらは、勝った方の弱った状態を狙ってくるでしょうね。だからずっと睨み合いが続いてるのよ」
人間の戦争でもそんな事はあったりしたみたいだけど、魔界でも同じような感じなんだなしかし、
4つのエリアって事は、4匹の最強の魔族がいるって事か
「まあ大体わかったよ。それで俺たちはどっちに向かう?」
「あっちの方向に小さいけどいくつか魔力を感じるから行ってみましょう」
リーナの言う方向は亀裂の後ろ側
その方向に魔力を感じると言うが、俺には感じ取れない
今日まで欠かさず魔力を動かしたりする練習をしてきたけど、まだまだなんだな
何がでてくるか分からないが、俺たちは歩き出した
「ところで夏休みに入ってからの探索に納得してくれたけど、のんびり探してて天界は大丈夫なのか?」
「今の所問題ないと思うわよ。私が落ちてきてから何週間かたってるでしょ?天界が無事じゃなかったら人界でも何かしら異変が起こっているはずよ。大天使達が集まって何とかしたんじゃないかしら?」
「おいおい、そんな呑気な事言ってていいのか?」
「大丈夫でしょ?それに丁度謹慎処分的なの受けて天界に縛られて…あっ」
「謹慎処分?」
「アハハ、何でもないわよ~」
天使でも謹慎とかあるのか
ってかコイツは何をやらかして謹慎になったんだよ…俺の中じゃコイツは結構バカの地位を築き上げてるぞ
色々疑問は残るが俺たちは進んでいった
「魔力が近くなってきたわ。数は5,6匹ってとこかしら」
「もしかしてヤバいやつか?あのガーゴイルよりも」
「そんなの見てみなきゃわかんないわよ。でも魔力だけで見るならガーゴイルより全然大したことないわ」
不安と期待が入り混じる
期待?俺は一体何に期待しているんだ?自分の強さを確認でもしたいのか?それとも人間界にいては見られない何かに期待しているのだろうか?好奇心は旺盛な方ではないと思っていたけど案外そうでもないのかもな
「ここよ!」
「ここって特に何もないぞ?」
リーナが声を発した場所で俺は立ち止まった
確かにいくつか魔力を感じ取れる
しかしとても微弱だし、何よりも魔族らしき者の姿も見えない
「あなたは誰?」
声?今声がしたのか?
「今の聞こえたか?」
「聞こえたけど、どこにいるの?魔力は感じるけど何もいないわ」
リーナでも見えない敵なのか?しかしこちらに問いかけてきたなら、ひょっとして話ができる魔族か?
「ちゃんと身構えときなさいよ。会話ができるだけの魔族なら星の数ほどいるんだから」
ちょっと気を抜いていた俺に対し、リーナは最大限警戒しているようだった
やはり魔界はそれだけ危険なところだという事なのだろう
そう思い、いつでも魔法が撃てるように魔力を溜めておく
「待って!私達は戦えないから!」
「私達?」
「ちょっと待ってね。今みんな出てくるから」
そう言って出てきたのは…あれ?何もいない…
「下だよ、下」
「えっ?」
驚いた俺の足元にはとても小さな小人がいた
普通の人間の十分の一くらいだろうか、いやそれよりももっと小さい
うっかりしてたら踏みつぶしてしまいそうだ
「宗、この子達なんなの?」
「俺が知ってるわけないだろ。ていうか何でリーナが知らないんだよ」
「だってこんなかわいい子達見たの初めてなのよ!」
魔界に詳しいリーナが知らない種族って事か
それにしても本当にかわいい見た目をしている
「ちょっと宗、何見惚れてんのよ」
「いや、小さくてかわいいなあと思って」
「あなた誰と話してるの?」
誰と話してる?そうか、この子達はリーナの姿が見えないのか
だから俺が1人で喋ってるものだと
「リーナ、この子達に姿を見せる事はできるか?」
「できるわよ」
リーナの魔力が高まったと同時に小人達が驚いた顔をした
どうやら姿が見えるようになったみたいだ
それじゃあ情報収集の時間だな




