~お礼
「はあぁ、それが本当だとしても俺みたいな人間にはどうする事もできないな」
リーナから天界での出来事を聞いて、スケールの違いを思い知らされた
ハッキリ言って人間の出る幕じゃない
たとえリーナの加護で強化してもらったところで役に立たないだろう
「何弱気な事言ってんのよアンタには天界まで私を連れてってもらうわよ」
「はあ!?何勝手に決めてんだよ?助けてくれた事は感謝してるけど、どう考えても俺が行けるよう
なところじゃないだろ」
「でもアンタは行くわ天界に」
「なんでそんな事が言えるんだ?」
「天界に行かなきゃ私とアンタはこのままずっと一緒なのよ?」
「…はあ…」
「てなわけでよろしくね宗」
そんなこんなで俺は半ば強制的に天界を目指す事になってしまった
「わかったよただし天界に行くのは夏休みに入ってからな」
「何でよー!」
「まだ夏休みまでもう少し学校があるし、それにバイトもある」
「そんなのどうでもいいじゃないのー!」
「じゃあ聞くけど天界にはどうやって行けばいいんだ?」
「あ…そういえば天界に人間が来た事例が…」
「ないのか?」
「…昔に1回だけあるわ。でもその時は人間でも通れるように調整して天界側から門を開いたのよ」
「それじゃあ天界から開いてもらえばいいんじゃないか?」
「それは多分無理よ…さっきの話の中に門があったじゃない?私が通ってきたのが最後の1つでそれも崩れかけていたから、今はもう…」
「完全に手詰まりだなでも今頃天界の人たちが門を直してくれてたりするんじゃ?」
「それは…ないと思うわ。私が身体を捨てなくちゃいけなくなった原因の暗雲は、落ちてくる時もまだ天界にあった。それに私が受けた波動は、大天使長ですら破れなかった」
「そんな…あれ?でも天界には神様がいるんだろ?神様は強くないのか?」
「神様は間違いなく最強よ。天界の天使全員で戦っても足元にも及ばない強さよ。でも神様は動かなかった…いえ、もしかしたら動けなかった理由があったんじゃないかって思えるの」
沈黙が続いた
正直天界には興味があるし、行ってみたい気もする
しかしその天界がボロボロで尚且つ方法がないときた
悩んでいるとリーナがそっと喋りだした
「宗…」
「ん?」
「もしかしたらだけど可能性があるかもって所があるわ」
「本当か?どこだ?」
「あくまで可能性よそれもとんでもなく低い確率」
「それでも0よりマシだろう」
「アンタって意外と前向きなのね。部屋を見る限りただの漫画オタクかと思ってたわ」
コイツは人が真剣に話している時に何でこうなんだ!?しかもオタクじゃなくて漫画が好きなだけだ!
「それは今はどうでもいいだろ!それでどこなんだ?」
「魔界、私達が亀裂を通ったあそこにもしかしたら天界に続く門があるかもしれないわ」
魔界か
またあそこへ行くのか…
気分的にあそこはあんまり行きたくないんだけどな
「どうしてあそこに天界への門がある可能性が?」
「おかしいのよ」
「おかしい?」
「そうアンタ神隠しって知ってる?」
「ああ人が急に消えたり行方不明になったりする現象だろ?それがどうしたんだ?」
「神隠しのほとんどはあの亀裂みたいなのが原因なの」
「んんん?」
「つまり神隠しの正体はあんな感じの偶然できた亀裂を、たまたま人が通って魔界に行ったりすることなの。しかも亀裂は不安定だからすぐに閉じてしまう事がほとんどなのよ」
「亀裂が閉じたら帰ってこれないよな…ある日1歩踏み出したら突然魔界にか…怖っ!!」
ん?神隠しと亀裂の関係は何となくわかるが、それがどうして天界に繋がるんだ?俺は疑問を感じて悩むがリーナは続けて話しだす
「亀裂の存在は昔から天界でも確認されているわ。でもそれは何十年、何百年に1度あるかないか。そんな亀裂が今回人界にできて、魔族までいるというオマケつき。しかも亀裂は少なく見ても1日中開いていたのよ。さらに天界には謎の暗雲と異常な事がテンコ盛り」
「それがどうおかしいんだ?」
「漫画オタクのくせに鈍いわね~。人界の亀裂の現象と天界の暗雲の現象が、ほとんど同じ時期に起こっているって事よ」
仏の宗さんも怒った
天界に着いたらコイツ1発ぶん殴ってやる!
だけど落ち着いて考えるとリーナの言う通りだ
神隠しの原因である亀裂が俺の人生で1回発生するかしないかの確率、そして天界でこんな事が起こったのは初めてみたいだからこれらが重なるって事は…
「あっ!」
「そうよ誰かが意図的に天界と魔界を繋げて暗雲を発生させた。そして人界にできた亀裂は恐らくその影響でしょうね」
「そんな事が出来るものなのか?もしかしたらそういう魔法で…」
「不可能よ普通に考えたらたとえ天使でも」
「じゃあ一体どうやって…」
「普通じゃないやつの仕業って考えたら納得できるでしょ?」
すげえ単純な考え方するな
でもそんくらい単純に考えれば全部つじつまが合う
「それじゃあ善は急げよ!早速明日行ってみましょう!」
「おう明日はバイトもないし学校終わってからな」
明日また魔界に行く
そこで何か見つかるのだろうか
もしかしたらまた魔族と出くわしたりするんだろうか
「そうだリーナずっと気になってたんだけど、さっきの話で魂を自分の姿に再現したって言ってたよな。それって今はできないのか?」
「できるわよ。そういえばずっとアンタの中で話してたわね。ちょっと待ってなさい」
リーナがそう言うと俺の身体の中でわずかに魔力が動く
小さな光が目の前に集まり人の形になっていく
魂の精神世界だったか?そこで見たリーナの姿が目の前に現れる
少し光って見えるが、姿はあそこで見た時と微妙に違うな
白いノースリーブ、白のスカートで裸足になってる
しかし顔は変わらない
あの時に見たすげえ可愛い顔をしている
「あの時と服装が違うんだな」
「まあ一応部屋の中だからね。でもこの服装もかわいいし案外楽だから気に入ったわ」
今まで頭の中でしていた声が、ちゃんと目の前のリーナから聞こえる
最初からこうしてくれてれば独り言みたいにならなかったのに
「それはいいんだけど、今のリーナの状態ってどうなってるんだ?」
「今の私は俗に言う幽霊に近い存在ね。魂だけの状態だからしょうがないけど」
リーナはそう言ってテーブルの上のカップを取ろうとした
しかしリーナの手はカップを取ることなくすり抜けた
「本当に幽霊みたいだな」
「そうよ。ちなみに言っておくと、魔法を使っても媒体となる身体がないから、ほとんどの魔法は具現化できないのよ。そのまま魔力が風船の空気みたいに抜けるだけ」
「そうなのか…。俺以外の人たちにリーナは見えるのか?」
「大抵の人には見えないから安心して。相当魔力がコントロールできる人間じゃないとね。アンタは私の宿主で、魂の一部はちゃんとアンタの身体の中にあるから見えるし声も聞こえる」
「じゃあ普通に生活する分には問題ないんだな」
「そうね。でも私はアンタからそんなに離れられないから、結局は一緒にいる事になるわ」
ひとまずは普通に会話できるようになっただけマシか
気が付けば時計の針は12時を回っていた
ベッドに横たわり寝る姿勢になる
「今日はもう寝よう明日も学校だからな」
「ねえ宗」
「ん?」
振り向くと優しい笑顔でリーナは言った
「今日はありがとう」
めっちゃ可愛いじゃねえかよ天使か!?
あっ、コイツそういえば天使だった
「俺も助けてくれてありがとう」
俺はお礼を返してそのまま眠りについた




