8話 メンヘラ診断はとても正確でした。
「じゃあ姫香さん、林王さん、今から俺が出す質問に答えてください」
「うん」「分かった」
昼放課の屋上。
俺は彼女ら2人と一緒に昼食に興じていた。
相変わらず姫香さんはほぼ毎日一緒に俺とご飯を食べているのは良いとして、なぜか林王さんまでもがこうして、流石に毎日とまではいかないがここに来るようになってしまった。
俺としては、姫香さんと屋上で2人きりになるのはトラの檻に丸裸で放り込まれたような気分になるので多少救われるところはあるのだが、相変わらずコミュニケーションの類は苦手で、色々苦労している最中である。
「まず第1問、貴方は妄想にふける事があるか?」
そして俺は今、ネットの『メンヘラ診断』というサイトを使って姫香さんのメンヘラ度を図ろうとしていた。
あぁあと一応林王さんも。
「妄想かぁ⋯⋯私そういうのは全然しないかも」
「え? 俺と結婚とか散々色々よくわかんない妄想してる気が⋯⋯」
「え? もう嫌だなゆうくん。私のそれは妄想なんかじゃなくて、未来予知なんだよ?」
「⋯⋯もういいです。はいの方押しときますね」
「え!? なんで!?」
「そ、それじゃあ林王さんは?」
「私? わ、私はまぁ⋯⋯それなりにする⋯⋯かもな」
そう言うと林王さんは顔を赤くして此方をチラチラと伺うように見て来た。
「へーなんかちょっと意外ですね」
「意外⋯⋯? それってどういう⋯⋯」
「なんかその、そういう乙女⋯⋯みたいな所もあるのだな⋯⋯と⋯⋯あっ! 別に林王さんが女っぽくないとかそういう意味で言ったんじゃないですよ!」
「乙女⋯⋯私、乙女っぽいんだ⋯⋯ふふっ」
なにやら顔を俯かせ、笑い始める。
⋯⋯顔を赤くする件といい、なんかたまに意味わかんない行動に走るんだよなぁ⋯⋯林王さん。
勿論姫香さんには到底かなわない優しいレベルで、だけど。
「そっかな? 私は全然意外じゃないけどなぁ。こう見えて沙希ちゃんまだ純潔な女の子なんだから。ね?」
「ちょっ! 何言ってんの!? 姫香もだろ!」
「もうゆうくんに捧げるって決めてるからいいんだもーん」
「なっ!? わ、私だって――って危ない危ない⋯⋯」
「⋯⋯? どうかしたんですか?」
俺がそう聞くと、林王さんはずいっ、と顔を俺に近づけ。
「べ、別に何でもない! 知らなくていいから!」
「そ、そうですか」
そんなに顔を近づけられるとこちらまで顔が赤くなってしまう。
しょうがないね、男子高生なんて9割型こんなもんですよ、多分。友達いないからソースは特に無いんだけど。
「ごほん⋯⋯それじゃあ気を取り直して第2問――」
「林王さんのメンヘラ度は⋯⋯5段階中後ろから二番目のCですね」
「まぁ妥当な結果かな、私姫香と違って支離滅裂な妄想とかしないし」
「支離滅裂な妄想って何!? ひどいよ沙希ちゃん!」
「そして! 姫香さん!」
林王さんの制服を掴み抗議の意を唱えている姫香さんを遮るように大きな声でそう言った。
「貴女のメンヘラ度は⋯⋯」
「なになに!?」「ごくっ」
「文句なしのトリプルSです」
「と、トリプルS!? 」
「そ、そんなのあり得ないよ! 誤審ですー!」
すると今度は俺のスマホを奪い取ろうとこちらに詰め寄ってくる姫香さん。
だが身長差で言えば俺の圧倒的勝利であり、天高く掲げられたスマホに彼女の手が届くことは無かった。
「いやこれは神様も納得の判決ですよ、林王さんもそう思いますよね?」
「ま、まぁ⋯⋯姫香の唯一の欠点だからなぁ⋯⋯それ」
「みんな酷い! もう私教室戻る!」
「あっおい! 姫香!」
泣きながらどこかへと行ってしまった⋯⋯
「「⋯⋯」」
そして後に残されたのは林王さんと2人きりの状況。
お互い、無言の時間が続いた。
「ひ、姫香さんって⋯⋯昔からあんな感じなんですか⋯⋯?」
それに耐えられなくなった俺は特に何も考えず、そんな質問を林王さんに投げかけた。
「へ!? う、うーん⋯⋯どうだろ、幼稚園の頃はあんな感じじゃなかったし、小学校低学年ぐらい、から?」
「へーそんなちっちゃい時から⋯⋯」
「私の前だとそんな出ないんだけどね、あれ」
「あ⋯⋯確かにそうですね! 普通だったらこの屋上に他の女性がいるだけで暴れ出しそうなのに⋯⋯」
何気ない質問のつもりだったが彼女の更生の手がかりになりそうな情報が手に入った。
「それじゃ私も先帰るから、姫香が心配だし」
「あ、うん。お疲れ様でした」
「⋯⋯ぷっ! じゃ、じゃあね!」
「えっ? あ、じゃ、じゃあね⋯⋯?」
笑われた!?
俺今笑われた!? なんで!?
「うーん⋯⋯はっ!? ⋯⋯『お疲れ様でした』ってなんだよ⋯⋯俺」