俺はあのオタク三人組を一生恨む事になるだろう。
俺の名前は木枯優斗、高校2年生だ。
最初に言っておくことがあるとすれば、俺は彼女どころか友達すらいない。
まぁいわゆるぼっちって奴だ。
友達がいらないって訳ではないしむしろ欲しい。
だけどどうやったら友達ができるかなんて分からないし、もし仮にできたとしてもそこからどう仲を深めていくのかも分からない。
深く考えすぎなだけかもしれないけど、そういうのをあまり考えず友達簡単に作っちゃうリア充軍団様のような芸当は俺にはできない。
今日も今日とてそのリア充軍団から逃れるため、俺は1人の環境で飯を食うべく屋上へと向かっている。
「やっぱ寂しいな⋯⋯友達欲しい⋯⋯」
そんな1人事を呟き、屋上のドアへと手をかける。
「⋯⋯ん?」
なにか女の子の声が聞こえる⋯⋯?
聞いた感じ誰かと会話したりしてるわけじゃなさそうだけど...
俺と同類なのか? いつの間にか独り言がでてしまうアレか?
「でも誰かいるんじゃなぁ⋯⋯しょうがない、便所飯するか...」
俺が屋上での昼食を諦め掴んでいたドアノブを離した瞬間『ガチャ』と音を立て、ドアが開いた。
「「あっ⋯⋯」」
かなりの至近距離で目が合う。
「えっ? 泣い⋯⋯てる⋯⋯?」
「っっ!!」
すると彼女はすぐに自分の顔を隠すように腕で覆いながら俺の横を走り去っていった。
「な、なんだったんだ?」
俺は彼女を知っている。
クラスの絶対的女王である林王沙希のグループ、いわゆる最高位カーストグループに属する伊花姫香さんだ。
決して俺と同類なんかじゃなく、何もかもが正反対で雲の上の存在。
そんな彼女が昼放課に1人屋上で泣きながら独り言...
珍しい事もあるもんだな。
それにしても⋯⋯前々から思ってたけど伊花さんめちゃくちゃ可愛いんだよなぁ⋯⋯
金髪とかゴッテゴテ化粧とか爪によく分からん塗り絵してる奴らばっかの林王グループの中では稀な清楚系女子で、肩ぐらいまで伸びた綺麗な黒髪で化粧も程々で派手さを感じない。
正直俺のどストライクだ。
まぁだからといって俺と彼女がどうにかなるなんて事はないんだけどね⋯⋯
「はぁ⋯⋯ご飯食べよ⋯⋯」
*
『まもなく2番線に急行電車が参ります、白い線の内側でお待ちください』
ぼっちにとって長い長い苦痛の学校がようやく終わり、帰りの電車を待っていた。
俺が通っている高校は部活動が盛んなので授業が終わった直後の時間の駅は基本、人がまばらで部活やってない俺の同類しかいないのでに気が楽だ。
従来ならこの時間は落ち着く時間のはずなんだ、
「⋯⋯」
だが俺は今、横の列に並んでいる伊花姫香の事が気になって全く落ち着くことができないでいる。
彼女みたいなイケイケリア充がこの時間帯にいる事もだが、そもそも1人でいる事自体も珍しい、珍しいのだが気になる理由は他にある。
今の彼女はちょっと、いや、かなり異常なのだ。
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」
呼吸がとても苦しそうで額には汗がつたい目が生きていない。
スマホを持つ手が小刻みに震えている。
声をかけるか?⋯⋯いや無理だな、今彼女に話しかけれるぐらいなら友達の1人や2人作るぐらいで困らないつぅの。
電車の音が聞こえてきた
その音が大きくなるにつれて彼女の震えもさらに酷くなっていく。
⋯⋯いやこれマジでやばくないか?
だ、誰か⋯⋯誰か『大丈夫?』と声をかけれる勇者はいないのか?
「⋯⋯」
近くでアニメの話で盛り上がっていたオタク3人組にアイコンタクトを送る。
が、しかし、困惑したような顔でお互いの顔を見つめあった後にそそくさとどこかへと消えていってしまった。
だめだ、ここには今俺の同類しかいないんだった...
俺は声をかけるか再び迷っていると、電車が見えてきた。すると彼女は、何かを決心したように1歩前へと進んだ。
電車から物凄い爆音の警笛が流れる。
いやこれ⋯⋯いわゆる自殺ってやつじゃ⋯⋯
「ちょっ、まっ!?」
気がつくと俺は、彼女の手を掴んでいた。
流石に目の前で自殺しようとしてる人がいれば俺も黙って見てられるはずがない。
電車が通り過ぎていく、彼女は横のいる俺に一切顔を向けず前を向いたまま再び震えはじめた。
「うっ⋯⋯ひぐつ⋯⋯ひっ⋯⋯」
⋯⋯え?
な、泣いてる!?
狼狽えた俺はそこで彼女の手を掴んでいた事を思い出し手を離す。
「あ、あのっ⋯⋯その⋯⋯なんというか、そういうのはちょっと良くないかと⋯⋯」
何とか声を絞り出しそう彼女に告げる。
そして少しの沈黙の後、彼女がこちらに向いた。目に涙を溜め、顔をうっすら紅潮させてこちらの目を真っ直ぐ見てくる。
その可愛さに不覚にもドキッとしてしまう自分が情けない。
「えとその⋯⋯まぁ、貴方みたいな人が死んだら悲しむ人が大勢いますし、こういう事はその⋯⋯やめてくださいね、それじゃあ俺はこれで」
この雰囲気に絶えられなくなった俺はこの場を一刻も早く逃れるため適当な事を言って立ち去ろうとした。
が、次の瞬間
彼女はにこっと笑い俺の両手を握ってこう言った。
「う、嬉しい!」
「へ?」