サヨナラの代わりに
森の中の青い屋根のお家には、猫の小説家ジャスミンことミーシャが住んでいます。
その日、ミーシャはパソコンをつけても創作意欲がわかず、なんとなく動画サイトを見ていました。
何本か見ていくうち、一本の動画に目が止まりました。それは、オウムが、童話を読んでいる動画でした。
ミーシャはすぐに、出版社の担当の青森にメールを送りました。
[青森さん、ミーシャの冒険をオウムに読んでもらいたいんだけど、できないかな?
ジャスミン]
ミーシャは、わくわくしながら返事を待っていました。
[ジャスミン先生、オウムは世話も大変ですよ。お飼いになるのですか?茉莉花さんがお困りになるんじゃないですか?
青森]
ミーシャは、思いがけない返事に、何かと青森に頼ってばかりいた事に気づき、自分で、動画の製作者に尋ねることにしました。
[松本カネア様、はじめまして。私は、ミーシャの冒険という小説を書いているジャスミンという者です。そちらのオウムのヨーゼフさんに、ぜひ、ミーシャの冒険を読み上げていただきたく、メールをいたしました。いいお返事お待ちしています。
ジャスミン]
数週間後、一本のメールが届きました。
[ジャスミン様、さっそく、動画を取らせていただきました。ヨーゼフもいつもの童話より楽しそうに読み上げておりまして、きっと、ミーシャの冒険が気に入ったのだと思います。最後まで、ミーシャの冒険の一説を読み上げておりました。最後まで…といいますのは、ヨーゼフは昨日亡くなりまして、これが遺作となります。サヨナラの代わりに、ミーシャの冒険を読み上げながら逝きました。どうか、ヨーゼフの最後の勇姿を見てやってください。
❨URL❩
松本カネア]
メールを読み終わったあと、ミーシャは、どうしていいかわからず戸惑いました。しかし、カネアさんの言うとおり、ヨーゼフの勇姿を目に焼き付けようと、URLを開きました。
そこには、楽しげにミーシャの冒険を読み上げるオウムのヨーゼフが映っていました。元気な姿で読み上げるヨーゼフをみながら、ミーシャは胸が苦しくなり、涙を流しました。
その日、ミーシャは、飼い主の茉莉花にベッタリと甘えました。
数日後、ミーシャが書き上げた原稿には、勇者の伝説を話すオウムが登場していました。
名前はヨーゼフ。勇敢なオウムの勇者でした。
青森はその原稿を受け取ると、ミーシャの頭を撫で、優しく微笑みました。
おしまい