閑話 失光会
速川 猛24歳
今日も複数のお祈りが届く
俺は社会に必要とされてないのか、きっと今までまじめに生きてこなかったつけが来たのだろう。
家に入り玄関脇の姿見に目をやると、虚ろな顔で見るからに慣れてない髪型のスーツ姿な男がいる
「あんたも俺が嫌いなのか」
靴を脱ぎネクタイを緩め、ベッドにテーブルだけの部屋に座り込むと書きかけの履歴書をぐしゃがぐしゃにして投げ捨て頭を掻く。
ケータイから音楽が流れだし「たつや」と表示されている
きっといつもの子供自慢と会社の愚痴だ。もしかしたらクリスマスパーティーの誘いかもしれないが、今はそういう気分じゃない
少しの小銭を財布から取りだし、他になにも持たず家を出て、近所の公園へと向かう
途中自販機に小銭を突っ込み、代わりに缶コーヒーを取り出す
公園に着くともう晩御飯の時間だろうか、遊んでる子供はいない
「何やってんだ…俺…」
俯き嘆く
10代の頃はよくこの公園で友達と遊んだものだ
初めて友達ができたのも、初めて喧嘩したのも、初めてタバコを吸ったのも、警察に見つかって退学になったのもこの公園だ
その時のメンツはそれぞれ会社員だったり店を持ったり、成功している
俺だけが何もない。俺だけがなんでがんばりを認められないんだ
ただあるのは劣等感、それと少しばかりの怒り。
少し歩を進めベンチへと腰かけようとする
突然のことだった
夜なのに空かとても眩しい
花火か?という疑問はすぐ消え去った
「なんだよこれ…」
空に、発光してる大きなボールの様な物が浮かんでいた
ただ呆然と立ち尽くし、光が消え去ったあともベンチに座り込んでいた
その日の帰りに、飲み干した缶をたまたま爆発させてしまった
それをきっかけに『爆破』の能力を俺は手に入れた
俺にだけ宿る力、それは劣等感を掻き消し、残る小さな怒りを爆発させた
「死ね死ね死ね死ね!」
落ちた会社を手当たり次第破壊していく
「た、助けてくれ…妻と子供がいるんだ…」
「俺には…分からない」
頭を容赦なく爆散させる
こんなことしても誰が救われるわけでもない
そんなこと自分でも分かってる、分かってはいるが今さら止められない
「クフ…フハッハハハハハ!これが【破壊】か…何年も積み上げてきたものが一瞬で崩れていく!なんてざまだ!」
「破壊が好きか?」
「…誰だ」
「その力を思う存分振るわせてやる」
「誰だつってんだろぉ!」
フードの男を爆破した…つもりだったが
「失礼、失光会という者だ。君は神を信じるか?」
「生憎、腹が痛い時しか信じない質でね」
たしかに爆破させた。だが目標をずらされたのだ
「別名は反乱軍といってね、君もこの国が嫌いなんだろ?ならうちに入会するといい、入会費はタダだ」
「断ったら?」
「なにもしやしないさ。ただ近々国も能力者を集めた軍隊作るみたいでね、君も捕らえられたあげく洗脳され戦わされるだけだ。もし、自分の意思で戦いたいって言うんなら手を結ぼうじゃないか」
本当かどうかなんて問題じゃない
俺は元々この国が嫌いだ
この男に着いていくと、そこには安定した生活が待っていた
他にも人が沢山いて、みんな国に恨みがあるそうだ
俺だけじゃないという安心感がここにはある
それからしばらくして任務を任されるようになり、俺は前より一段と破壊に勤しむようなった
みんなの怒りを背負ってる。理由はそれだけだ
任務を終え、失光会に戻るとみんなが出迎えてくれ感謝を浴びせらる
いつしか「破壊心」と呼ばれるようになり戦闘では俺がメインとなっていた
対抗軍との戦争ではかなり成果をあげた
もちろん犠牲は出たが俺はかわらず感謝された
それだけが生きる意味になっていた
「"神"から九州の方で収集がかかったらしい、お前はどうする?」
相変わらずフードの下をみせない男が部屋に入ってくる
「いったろ、俺は神を信じない。やることもまだあるしここに残るよ」
「…わかった」
フードの男はいなくなり静かになる
察してくれたのた、諦めてくれたのか。
俺は花束を作る作業に戻る
それから数日、失光会は神に会いに。俺はいくつもの花束を携え仲間が死んだ場所をまわる
きっと、戦いに破れた者達の意思を受け継ぐ事を誓いながら
「これで最後か…」
アスファルトの上に花束を置く
ここ数日まともに寝てないから限界だ
とりあえずこの辺で仮眠でもとるか、どうせ池袋なんて誰も来ないだろ
良く考えたら冬に就活ってするのかな...わからん